中国でも増えるオールドメディア離れ
中国でも、若者ほど、オールドメディアといわれる新聞やテレビ、ラジオ、すなわち従来からの媒体から離れていく風潮だと聞く。インターネットを日常的に、情報入手の手段にする者が増えている。
この緊急事態対応法改正は、習近平政権によるメディア管理強化の一環と言えるだろう。政府の言うことが民衆から全く信用されなくなってしまう「タキトゥスの罠」とは、緊急事態が起きた時だけではなく、中国共産党を信じなくなる、という事態まで想定しているはずだ。
新型コロナの教訓といえるこの法律改正によって、4つを対象にした緊急事態とは、「天災」「事故」「公衆衛生に関する事態」とともに、「社会の安全を脅かす出来事」もあると説明した。新型コロナ自体は、「公衆衛生に関する出来事」だが、同時に「社会の安全を脅かす出来事(=社会騒乱)」でもあったといえる。
そして、「社会の安全を脅かす出来事」とは、少数民族問題や宗教問題も含まれるはずだ。共産党政権が数々の不安要因を抱えながら、インターネット、その向こう側にいる多くの市民との静かな戦いが、今回の法律改定から見えてくる。
◎飯田和郎(いいだ・かずお)

1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。