二宮和也主演で6年ぶりに日曜劇場に帰還する『ブラックペアン シーズン2』。シーズン1に引き続き、医学監修を務めるのは山岸俊介氏だ。前作で好評を博したのが、ドラマにまつわる様々な疑問に答える人気コーナー「片っ端から、教えてやるよ。」。シーズン2の放送を記念し、山岸氏の解説を改めてお伝えしていきたい。今回はシーズン1で放送された8話の医学的解説についてお届けする。

※登場人物の表記やストーリーの概略、医療背景についてはシーズン1当時のものです。

佐伯教授のミス

いつものように佐伯教授の手術が行われ、モニターで世良先生はじめ外科医たちがその様子を見ています。佐伯教授は藤原師長からメスをもらい、左房を切開しようとしたところ、体の変調を訴え、メスを術野に落としてしまいました。

よく昔から「メスさばき」のような言葉を使用し、手術のシーンでは「メス」という言葉で手術が始まり、手術ではメスが多用されるような印象をお持ちの方も多いかもしれません。

しかし、自分も学生の時の手術見学で一番印象に残ったのは、メスって手術では全然使わないんだ、ということでした。最初に皮膚を切るときだけ使用して、他は今回の左房にメスを入れるとか、大動脈にメスを入れるとか、切開のきっかけを作る時だけ使用されます。というのも、メスは非常に切れ味が鋭く、もし今回のように術野にメスを落としてしまうような事があると、最悪の場合メスがどんどんどんどん組織を切っていってしまい、切ってはいけないものまで切り割いていって大惨事になりますので、なるべく組織を切るときはメッツェンなどの医療用のハサミを使用します。

メスを使用するときは、助手も手術看護師も皆少し身構え、無意識に防御体制に入ります。メスが執刀医の手に渡り、組織を切開し、オペ看護師に返す時は、このドラマでも見ていただけるように、ノウボン(膿盆)という金属製のお皿に置くのです。

もし誰かの手などがその間にあり、メスが刺さってしまうと大変ですので、術者を含め、皆メスを使用する時は最大限の注意を払います。そのような中、佐伯教授はメスを落としてしまった。モニターではわかりませんでしたが、肺動脈に刺さってしまい、そこを修復しました。すぐに修復できたので事なきを得ましたが、非常にヒヤヒヤした瞬間でした。