警察庁の報告書を基に警護員と男の動きを検証

 一体なぜ演説中に銃撃されるという事態は起きたのか。事件から1か月後、警察庁は当時の警護体制についての検証結果をまとめた。
 【警察庁の報告書より】
 『本件遊説場所の南側に警護上の危険があることは明らかであった』
 『警護計画には明らかな不備があった』

 警察庁の報告書には、現場にいた警護員らがどのように警戒にあたっていたのかが、秒単位で記されていた。

取材班は、警察庁の報告書を基に、当時、安倍元総理の周囲にいた警護員6人の動きと、山上被告の動きをリスト化した。

午前11時28分42秒、安倍元総理が演台に登壇。午前11時31分5秒、山上容疑者が銃口を演台上の安倍元総理に向けた。わずか数分の間に何が起きていたのか。

警察官4人と山上被告の動きをCGで再現

 取材班は安倍元総理の最も近くで警護していた警察官4人と山上容疑者の当時の動きをCGで再現した。


 午前11時23分25秒、安倍元総理が登壇する前、候補者の演説が始まった。

 周囲には警護員らが警戒に当たり、演台の周辺には選挙関係者の姿があった。

 そして午前11時26分、ガードレールの外で南側を警戒していた警護員Cが、警護員Aからの指示を受けてガードレールの内側に移動している。

 この時、山上被告は南側のバス停付近で拍手などして様子を伺っていた。

 こうした人員の配置について警察庁の報告書には次のように書かれていた。

 【警察庁の報告書より】
 『警護員Cが県道上を通行する車両と接触する危険を防止するため、ガードレールの内側に移動するよう指示した』
 『遊説場所の南方向への警戒は不十分となった』

 南方向、後方への警戒が手薄のまま、安倍元総理の演説が始まっていたのだ。