異例の集団避難…人の気配がなくなった集落
奥田さんが起業した南志見地区は、13町725人が暮らす地域です。能登半島地震では、断水や停電に加え、集落の道路で発生した土砂崩れによって一時孤立したことで、住民らは自力で避難したほか、340人が自衛隊のヘリコプターで100キロ以上離れた金沢市に集団避難しました。

住民が少なくなった南志見地区で、奥田さんは事務所に寝泊まりを続けながら「住民らは戻ってこないかも知れない」と考えていました。
あれから2カ月あまり。もともと過疎化で行き交う人が少なかった南志見地区は、地震でより人の気配が消える一方、工事関係者の姿を時折見かけるようになりました。仮設住宅の整備がすすむ集落に、奥田さんが営業を再開したカフェ「ココハサトマチ」があります。
「絶対に、こんな時って、飲食店があるとホッとするげん」

ここでは、家財整理などで一時帰宅した住民や、復旧作業に当たる工事関係者に向けて午前10時から午後3時までカレーやパスタなどを提供しました。 さらに、店の裏では井戸が新たに掘られ、汲み上げられた地下水を洗い物やトイレなどに使用し、避難先から自宅の様子を見に来た住民らにも開放しました。
雪が舞う3月、集団避難先から自宅に戻ったという女性が店を訪れていました。週に一回は必ず来ていると話します。

住民の女性「再オープン、早い時期にしてくださって、すごくうれしかった。だって、周りがみんな避難して、誰も知っている人がおらん。ここに来たら声をかけてもらえるから、本当にその一言が嬉しい」