いよいよ出漁 受刑者の訓練船

北海丸がイカ釣り漁に出る日がやって来た。当局が神経質になるのは、受刑者の“逃走”だ。何度もボディーチェックを受けて、ようやく塀の外に出る。
刑務所から函館港の外れに繋留されている“少年北海丸”まで護送車に乗せられる。わずか20分だが、久しぶりに見る塀の外の風景だ。
訓練生
「(逮捕後)警察署の頃からずっと手錠されて、腰縄されて移動だったので、それが何もなくて普通に社会生活の環境っていうので、最初は逆に戸惑いましたね」
「(Q.外見るときょろきょろしちゃいますか)ちょっとやっぱり懐かしい感じはしますね」
「刑期がまだあるのに外に出てこられたので、違和感です」

船内で1泊するための水や食事が北海丸に積み込まれた。食事は刑務所で作られた一般の受刑者と同じ物だ。

北海丸が埠頭を離れ漁場に向かう。舵を取るのは受刑者だ。他の船に注意しながら慎重に進む。
甲板では漁の準備も始まった。

刑務官
「先にメシにするか」
“漁”の前に腹ごしらえだ。

訓練生
「船はどうしても一人で動かせるものではない。仲間でのコミュニケーション取りながら 船を動かさなければいけない。大きな船を船長含め4人で動かすので、団結感とか仲間意識はすごく芽生えましたね」
日暮れと共に“集魚灯”が点いた。いよいよ漁が始まる。

訓練生
「特に今年は海水温が高いみたいで、水温の低い深いところに今いますね」

船酔いの訓練生もいる。

訓練生
「やっぱり今日はなかなか揺れますね。ご飯食べた後とかだと、つい来ちゃうんですね」
この日初めての手応えがあったようだ。

訓練生
「スルメイカですね。(Q.どうですか気持ちは)めちゃくちゃ嬉しいです。本当にこの訓練に来られて良かった。(Q.普段の刑務作業で笑顔は?)(塀の中では)笑うと怒られますからね」

刑務官
「23センチ、だいぶでかいですね。今のペースだったら出荷まで行けそうですね」
訓練生
「不思議な気持ちじゃないですけど、(受刑者の)身分からして外に出て、ましてや海のど真ん中に出られるとは思っていなかった」
「被害者の方たち何人もいますが、なんでお前が外に出てこういう訓練を受けられるんだと思われるかもしれない」
通常、夜明けまで操業するが、この日は海が荒れて早めに引き上げる事になった。

この夜の成果は29匹。市場の競りで6800円。お金は国庫に入る。函館の街の明かりが近づく。

漁を終えた訓練生は、受刑服に着替えて北海丸に泊まる。出入り口では、“寝ずの番”が監視する。訓練生は、あくまでも受刑者なのだ。















