安倍元首相襲撃事件をきっかけに統一教会、そして今まさにパレスチナ、この数年は宗教や信仰の問題が大きく取り沙汰された。果たして“信じること”とは個人になにをもたらすのだろうか?幸福か?あるいは狂気か暴力か?そんなことを考えていたらどうも暗い気持ちになりふとチャンネルを変えると、そこには「バカヤロー」が口癖の男が一人、今日も道化を演じていた。(以下、タレントは敬称略)
私は、ビートたけしが好きだ。お笑いタレント・俳優としてお茶の間の人気者であり、その一方で世界的な映画監督。それに飽き足らず小説や評論といった顔も持つ。歌まで歌う。この得体のしれない存在は、昭和から令和に至るまで私たち日本人の心をつかんで離さない。そんな彼の、特に俳優としての仕事で私が個人的に好きなものが二つある。自身が原作も務めた映画『教祖誕生』、そしてかつてTBSで放送された単発ドラマ『イエスの方舟』だ。
よりにもよって今のご時世にこの二作?という感じだが、改めて『教祖誕生』『イエスの方舟』の二作を観返してみると、たけしのなんとも言えない表情が妙に心に訴えてくる。「振らなきゃはじまんないよ」とでも言われているような気分になった私は、柳ユーレイが沖縄に銃を買いに行くがごとく、衝動的に福岡へと向かった。ドラマでたけしが演じた千石剛賢は2001年に亡くなっていたが、妻や娘、行動を共にした「イエスの方舟」の女性たちは、今でも福岡で共同生活をしているというのだ。