豊田兼(21、慶大4年)が日本人初のハードル2種目五輪出場の偉業に挑む。豊田は陸上競技日本選手権(6月27~30日、新潟)の初日と2日目に、400mハードルの予選と決勝に出場。3日目には110mハードル予選と準決勝、最終4日目に決勝と、新潟のデンカビッグスワンスタジアムのトラックを駆け続ける。
400mハードルはすでに、パリ五輪参加標準記録の48秒70を突破済み。今大会に優勝すれば五輪代表に即時内定するし、3位以内に入れば7月上旬に代表に選考される。
問題は110mハードルで、豊田は標準記録の13秒27に0.02秒届いていない。今大会の予選、準決勝、決勝のどのラウンドでもいいので標準記録を突破できれば、優勝した時点で代表に内定する。2位でも7月上旬に代表に選考されるが、標準記録をクリアすることが前提条件だ。
開幕前日の6月26日に会見した内容から、豊田の自信を持っている部分と、不確定要素の部分を紹介する。
GGPの成功で400mハードルへ自信
会見の冒頭で豊田は2種目への自信を明言した。
「練習は問題なく積んでこられています。あとは想定するレースプラン通り走りきれば、勝負にも勝てます。2種目に挑戦したい」
代表入りが有力なのが400mハードルである。5月のゴールデングランプリ(以下GGP)では48秒36の日本歴代5位で優勝した。黒川和樹(23、住友電工)が昨年の世界陸上で48秒58、筒江海斗(25、スポーツテクノ和広)も今年5月の木南記念で48秒58をマークしている。タイム差としては大きくないが、豊田の48秒36は07年以降では日本人最速タイムである。黒川が故障明けでシーズンベストが50秒を切っていないこともあり、豊田が優勝候補筆頭であることは衆目の一致するところだ。
「GGPは前半を少し抑えたレースをしましたが、(GGPよりも前半で)少し周りに付いて行って、最後引き離すレースを想定しています。1着をしっかり取って、タイムはGGPを越したい」
400mハードルに関してはGGPの快走をもとに、かなり具体的なレース展開がイメージできている。まずは先に行われる400mハードルで五輪代表を決めて、精神的なストレスを軽くした上で後半に行われる110mハードルに挑む予定だ。
やってみないとわからない部分
110mハードルの自己記録は13秒29。標準記録に0.02秒と迫っているが、400mハードルに比べて大きな試合に出ていないため、世界ランキングで出場資格を得ることは難しい状況だ。
「五輪標準記録を切らないと代表に届かないと思うので、(予選は別として)準決勝、決勝とタイムを狙います。13秒27を切る勢いで出場します」
だが110mハードルに向けては“やってみないとわからない”部分もある。
1つは体力的な部分で、故障のリスクを考えると練習では、試合と同等の負荷はかけられない。400mハードル終了後、あるいは110mハードルの予選や準決勝後の身体的なダメージは、実際にやってみないとわからない部分だ。ハードル種目を1試合で5本を走るケースは、大学の対校戦ではたまに見られる。豊田も大学2年時までは2種目に出場した。だが日本選手権でかかる負荷はインカレよりかなり大きい。
「どうなるかわからない部分がありますが、体力的にもギリギリ勝負できるかな、と思っています」
もう1つは両種目を動きの面、トレーニング面で両立させる部分だ。大学3年時以降は試合に出る時期も、練習で行う時期も、110mハードルと400mハードルを明確に分けていた。その方が練習中の課題を意識しやすかったし、レースでは特に、400mハードルの直後に110mハードルに出ると「ケガのリスク」があった。「今回は試合を連日で走ることになるので、少し脚がもつか心配はある」と、正直に話した。豊田はやみくもに自信があると話すのでなく、しっかりした根拠をもとに自信を述べている。

















