技術の向上と「警戒レベル」が“カオス”を生んだ

いったいなぜ、こんな“カオス”な状況が生まれてしまったのか。

気象庁等が発表する防災関連の情報、なかでも気象に関する情報は、近年の気象災害の激甚化・頻発化等を背景に、「技術の向上」や「改善」という名の下に新設または更新され続けてきた。図-2はその結果でもある。その流れを頭から否定する気はないが、整理されないまま情報が乱立し複雑化する形となり、いつしか現在の「シンプルでなく、わかりにくい」ものに変わってしまった。

さらに2019年5月、内閣府主導で「警戒レベル」の運用が始まったことで、情報同士の関係は一層複雑になった。

“最難関のパズル”に挑んだ「防災気象情報に関する検討会」の委員たち(2024年5月14日)

「警戒レベル」は、災害発生の危険度の高まりを「レベル+数字(1~5)」で表示するもので、「警戒レベル」導入に伴い、〈気象に関する防災情報〉の幾つかが、該当するレベルの状況になっていることを示す情報(レベル相当情報)としてレベルに紐付けられた。

ところが、これがわかりにくさに拍車をかけた。

例えば気象台が発表する「洪水警報」(レベル3相当)には、危険度が上位(レベル4・5相当)の情報がなく、「大雨警報(浸水害)」(レベル3相当)の上位には「大雨特別警報(浸水害)」(レベル5相当)はあるものの、レベル4相当の情報が存在しない。

〈気象に関する防災情報〉はもともと警戒レベルを想定してつくられていないことなどから、警戒レベルの枠にすべてを当てはめることはできないのだ。

ここであらためて図-3を見てほしい。「警戒レベル」も組み合わせた情報体系は、体裁を考えずに建て増しを重ねた末の、いびつで不細工な建築物のようになってしまった。

災害発生の危険度の高まりをわかりやすく伝える目的で導入された「警戒レベル」が、結果的に〈気象に関する防災情報〉のわかりにくさ、伝わりにくさを助長しているというのは皮肉というほかない。