「開門すれば良くなることは明白」 今も、一方的に垂れ流し
また「イサカン」の影響は潮流の変化にとどまらない。潮受け堤防によって出来た広大な調整池。この池には一級河川、本明川の水が絶えず流れ込んでいる。
そのため、閉め切ることは出来ず、実は頻繁に門をあけて、池から海へ排水のみを行っている。

この調整池の水は当初干拓地の農業に使う予定だったが、水質が悪くほとんど使われていない。ため込むことで、水質が悪化した真水が、今、年間5億4000万トン(2021年度・九州農政局)も有明海に一方的に垂れ流されている。
ーー調整池の水を出していることが有明海の漁業不振に関係していると思いますか?

長年調整池を研究している生物学者 高橋徹さん
「めちゃくちゃ関係していますね」
長年、調整池を調査する髙橋徹さんは、門を開け続けて双方向の流れを作り、調整池に海水が入れば、海への悪影響は大きく軽減されると言う。
生物学者 高橋徹さん
「開門すれば良くなることは明白になっています。裁判の中で、自然科学の話がどこかに飛んでいっているように感じます。海や海の生物は関係ないですからね。自然の法則にしか従わないというところが、裁判所も頭から抜けているのではないかと思っています」
長年、有明海のノリを研究してきた川村嘉応さんは、近年顕著になった気候変動が、有明海の悪化に拍車をかけていると感じている。

佐賀大学 招聘教授 川村嘉応さん
「去年、今年と渇水ですよね。雨の量が足りない。渇水になると筑後川の流量が減って、栄養塩不足になる。開けることについては、開けて調査をした方がいいと思います。私が思うに最近は地球温暖化とか、 そういうこともかなり影響してきているので、そういう意味で検証はするなら早い方がいいと思います」