空き家数 全国最多5万戸 世田谷区ならではの事情
空き家で困っているのは、地方都市だけではない。「すぐに(空き家を)売ったりしなくても大丈夫なぐらいの経済的な余裕があるのではないか」と話すのは、世田谷区 建築安全課の大槻一隆課長。東京・世田谷区の駒沢公園にある閑静な住宅街。そこに、雰囲気が一変するエリアがある。

7~8件ほど空き家が立ち並ぶ一角。空き家にはゴミが捨てられ、草木は伸び放題だ。近所の住民によると、15年ほど前から空き家になっているという。近隣住民は「地震で崩れたりとか、火災とか、動物がどんどん繁殖しちゃうと困る」。世田谷区の別の地域では、家屋が見えなくなるほど樹木であふれる空き家があった。近隣住民は「アライグマが出て、屋根の上に4、5匹いた。区に問い合わせしたが、持ち主が対応しないとということで、結局、1年以上放置していて時々、夜に鳴き声がする」。
世田谷区の建築安全課には、空き家を巡る問い合わせや要望が年間約200件寄せられるという。建築安全課の千葉妙子係長は「近隣の樹木が入ってきた、とか道路側に出てるという話が一番多い」という。

住民の情報提供をもとに、建築安全課の職員が空き家の状態や周囲への影響などを調査する。

世田谷区の空き家の数は、市区町村で最多の5万250戸に上っている。空き家が増える理由に、資産価値の高い土地が多い世田谷区ならではの問題があるという。

世田谷区 建築安全課 千葉妙子係長:
財産になるから資産だから、今じゃなくても売れるから、いつでも売れるというのは皆さん思っている。使いたい人がいっぱいいると空き家の所有者もみんな分かっているので今じゃなくてもいい。そこが先延ばしにしてしまうと思う。
こうした中、世田谷区は2021年から民間と協定を組み、空き家に関して相談できるワンストップ型の相談窓口を設置した。相談窓口を運営する「空き家活用」の坂井裕之さんは「最初に相談する方が困っていると言ってうちのアドバイザーに相談して1時間相談して帰っていく時の顔が全然違う。相談したらもう物事は進みます」。これまでに200件の相談があり、空き家の解消に繋がっているという。利用者は「非常に的確にアドバイスをもらって、今後さらに相談して使い方を決めていきたい」。
野村総合研究所によると、20年後、空き家率は現在の約2倍に上昇すると予測。世田谷区建築安全課の千葉係長は、「空き家になってしまったものは1軒1軒入り込んで対応していくが、今後は空き家になる前の予防にも力を入れていく」という。
全国の空き家数900万戸 2043年には倍増の予測も…

空き家の数が増えている。2023年の全国の空き家の数は約900万戸で、5年前から51万戸増加。また、野村総合研究所によると、2028年には1000万戸を超え、20年後の2043年には1861万戸、空き家率が25.3%と4軒に1軒は空き家になるという予測している。
――予測だが、4軒に1軒が空き家という大変な時代に入ってきている。

東短リサーチ代表取締役 チーフエコノミスト 加藤出氏:
この人口減少の厳しさが如実に出ている。早めに対策を打たないとゴーストタウン的な雰囲気になってきたら、ますますそこに住みたくなくなるから、早めの対策がいる。
空き家が放置される原因としては…

今回取材した田辺市によると、解体費用など経済的理由所有者や、相続人が高齢であったり、遠方に在住している相続人の間での確執などで話がまとまらない、そもそも空き家をどうしたらいいかわからない、こういった理由があるそうだ。
――相続が複数にわたると話を求めるのもなかなか大変。だからこそ空き家になる前に対策を立てる政策が必要だということになるのか。
東短リサーチ代表取締役 チーフエコノミスト 加藤出氏:
山形で、私が育った家も何年か前に住まなくなったので、売るときにたまたま隣の方が家族が東京から帰ってくるからということで買ってくれたが、それがなければ、なかなか売れないという話になったのではないか。
――生前に話をするというのも、なかなか難しい。そういう意味では、これからの大きな問題ということになりそうだ。
(BS-TBS『Bizスクエア』6月15日放送より)