「フルイニングで出る選手になるためにも『守り』をおろそかにするな」

 ―――ホームランの後に三振。力が入っていたのでしょうか?

 「そうだと思います。そして、このホームラン1本のみというのが『やっぱり1本だけで、偶然だな』になってしまうんですよ。相手のミス、失投を捉えたというのはすごいことなんですけど、ベンチからすると、『あっ、こんなもんだったんだな』ってなってしまうんです。だからホームランの後の内容をもっとこれから大切にしないと、レギュラーにはなれないってことですよね」

 ―――話がありましたが、掛布さんはプロ4年目(21歳10か月)に満塁ホームランを放ちました。1977年4月2日のヤクルト戦(開幕戦)。6番サードでスタメン出場し、1回2アウト満塁の場面での一発です。ちなみにこの日の成績は4打数3安打4打点の活躍でした。また、この年の4月の成績は、打率が4割3分6厘でホームランが4本。そしてシーズンの成績は、打率3割3分1厘でホームラン23本でした。

 「この開幕戦の翌日もホームランを打っているんです。それぐらい若い選手というのは、チームに勢いをつける存在でなければいけないわけです。飛躍するために、打った後の打席を丁寧に。フォアボール1つ選ぶようなボールの見極めも考えながら、内容の濃い打席を積み重ねるということが前川には大切です。それともう1つ、『守る』という野球を前川はもっと意識しなければいけない。27個目のアウトを取ってゲームセットになるんですけど、本当のレギュラーというのは、27個目のアウトを取るときにグラウンドにいる選手。前川は途中で変えられてしまうじゃないですか、守備に不安があるから。27個目のアウトを取るときにレフトというポジションを守り切る、フルイニングで出る、そういう選手になるためにも、打つだけではなく守る野球をおろそかにするなよという強いメッセージを期待を込めて送ります」