■「あっちこっちでこの合意書を取り付けるのに忙しくて仕方ない」
かくして信者を獲得するとともに、多額の献金による問題が後を絶たない旧統一教会。
今回、国会議員の教団との関係が取り沙汰される中で、これは政教分離など宗教問題ではなく、旧統一教会が単なる宗教団体ではなく、反社会性を持った団体であることが問題だと伝えてきた。が、内閣改造のタイミングに合わせ、旧統一教会が会見を開いた。そこで強調されたのが、2009年のコンプライアンス宣言以降、高額献金が行われないよう徹底していることだ。
世界平和統一家庭連合(旧統一教会) 田中富広会長
「民事訴訟は着実に減ってきている。1998年(ピーク)は78件だが、2022年は5件です」
だが番組では1つの書面を入手した。「合意書」とある。2015年、教団関係者と元信者との間で交わされたものだ。そこには、元信者が教団から買ったお言葉集の代金など約630万円の返金を求めたところ、203万円が解決金として支払われるかわりに、今後一切、教団に金銭を要求しない旨が記されている。

この信者は203万円をいったんは受け取ったが、納得できず訴訟を起こした。判決は「合意書は無効」とされ、この元信者は勝訴することができた。
しかし、番組が入手しただけでも、他にもいくつもの合意書が存在した。みんなが訴訟を起こすわけでもなく、多くは“泣き寝入り”の合意に至っている。そして、これによって表向き訴訟件数が大幅に減少しているとも考えられる。
全国霊感商法対策弁護士連絡会 山口広弁護士
「(合意書によって裁判を起こさせないように)組織的にやっています。当時の(教団の)総務局長、司法試験崩れの某大学出身の男なんだが、『あっちこっちでこの合意書を取り付けるのに忙しくて仕方ない』って言ってましたね。(中略)1憶2億の献金に対して一部だけ返して、あとは債権債務はないという書面を交わすという手口ですよ。」
法律に詳しくなければ、交わしてしまった契約書の類は有効だと信じるし、早く縁を切りたい元信者にしてみればいくらか返ってきたんだからこれで終わりにしようと考える人は少なくないという。
■日本がダメなら韓国での“献金ツアー”
教団が強調するコンプライアンス順守。しかし信者からの金集めのシステムは日本ではなく目の届きにくい韓国で行われていた。それが韓国の清平にある教団へ行き金を支払う“献金ツアー”だ。インターネットの予約票には1から7、8から14など7刻みの数字が並ぶ。これは一回行けば7代毎の先祖の怨みを解くという“先祖解怨”というものだという。一回行くと280万円を献金することになる。

全国霊感商法対策弁護士連絡会 山口広弁護士
「韓国でやっていることだから日本の教団は関係ないという責任逃れをしている。しかし違法な説得活動は日本で行われているんですから、日本の旧統一教会が責任をとるべきで、裁判所もそう認めている」
番組で調べたところ少なくとも2021年の7月までこうした“献金ツアー”の募集をしていたことが分かっている。被害は昔のことではなく、今も続いているのだ。
自民党が党をあげた調査の方向を出さない中、逆に世界平和統一家庭連合・旧統一教会の田中富広会長は会見で、これまでの自民党議員との協調関係を強調した。
世界平和統一家庭連合・旧統一教会の田中富広会長
「私たちは共産主義と対峙している。その点からいうと自民党の議員の方々とより多くの接点を持つ。政治工作と言う意味ではなく、より良き国づくりに向かって手を合わせてきた」
あえて今、教団側が表立って自民党との協調関係を強調した意味は何だったのか…。これに対し、自民党は毅然とした態度をとることができるのか。今後の一つの試金石となる。
(BS-TBS 『報道1930』 8月11日放送より)