連載直後にウクライナ侵攻 “綺麗ごと”ではないか?
今村さん:
(河野家は)石垣の“前”に陣取って戦った。色んな御家人たちは『すごい!勇気ある行動だ!』そういう記録が点々とあるんですけど、これが《勇気を見せる行動じゃなかった》としたら、何が考えられるだろう?って言った時に、パッとそれが思いついた。一番前に行かなあかん理由ってなんだろう?

その“理由”に深くかかわるのが架空の登場人物で、今のウクライナ出身の令那と、高麗(朝鮮)出身の繁です。祖国を《モンゴル帝国》に奪われた彼らとの出会いが、河野家の当主・六郎に変化をもたらします。

元寇を通して描く「世界の中の日本」そして「人と人の繋がり」しかし、奇しくも連載を始めてほどない一昨年2月、ロシアによるウクライナ侵攻が勃発し、今村さんは物語の結末に大きく悩んだと言います。

今村さん:
「(小説の中に祖国を奪われた)ウクライナのヒロインみたいなのが出てくるんだけど、現実で同じことがリアルに起こってしまったわけじゃないですか。小説って一個どっか絵空事とは言わないけど“希望”とか“願い”みたいなものもこもってるんだけど、現実にそれより凄惨なこととかが起きてるのを知ってしまった中で(自分の小説は)あまりにも綺麗ごとなんじゃないかっていう葛藤があったね。だから僕、最後、結末変えようかなということも迷ったぐらいです。