「人民解放軍は夫婦で店を経営する感じになっている」

“中国・習近平国家主席の妻、彭麗媛氏(61歳)”と言っても日本ではあまり取り上げられることもなかっただろう。しかし、中国ではかなりの有名人だ。日本の週刊誌でも“美空ひばりのような国民的歌手”と紹介したものもある。歌手として来日し『四季の歌』を日本語で歌う姿も映像に残されている。この夫人を習近平氏は軍の幹部に抜擢していたことが分かった。元々軍所属の歌手なので軍に属していることは不思議ではないが、ただの幹部ではなくかなり力を持った存在だという。
番組が話を聞いたのは中国軍に20年在籍し、海軍司令部中佐まで務めた人物。現在はアメリカに亡命している。

中国海軍 元中佐 姚誠氏
「軍内部の人間に確認したところによると、2017年7月より彭麗媛氏は中国共産党軍事委員会政治工作部幹部審査評議員会の上級評議員に就任していた。(中略~現在)彼女には絶対的な権限がある。習近平氏が彼女をそのポストに据えるのは彼女を通じて軍全体の幹部の任免を厳しくチェックするためである。軍隊の将官以上の幹部に対して審査を行い昇進させたい場合は軍事委員会の承認を得なければならない。その過程に入る前に彭麗媛氏は自分の意見を述べる。彼女の意見は習近平の意見であり、基本的にはそこで決まる。その他の委員の審査は形だけのものだ」

習近平氏は汚職疑惑などの軍高官を多数粛清したが、ここにも夫人の関与があったのでは…とされる。

中国海軍 元中佐 姚誠氏
「誰も彼女に逆らえない。彼女に逆らうことは習近平氏に逆らうこと。それは不可能だ。(中略)中国軍で分かっていること…、その第一は習近平氏を恨んでいる。第二は軍隊は彼を見下している。彼は軍隊のことを知らないから軍隊改革は大きな失敗に終わった。第三は縁故関係だけで人を採用する。(軍は)夫婦で店を経営する感じになっている…(中略)習近平氏のすべての意見は彭麗媛氏から来ているんだ」

姚誠氏が語った彭麗媛氏の現在の肩書は香港メディアも報じている。

元駐中国大使 宮本雄二氏
「(絶対的権力を持つと)最後は自分に近い人しか信用できなくなるというのは人間の常なんですね。彭麗媛さんと、あ、“さん”なんて言っちゃいけないのかな…。夫人と習近平主席はなかなか仲睦まじい夫婦なんですよ。二人の信頼関係は非常に強い…。毛沢東夫人は文化大革命で活躍したでしょ。周恩来さんの夫人も大変活躍した。夫人が活躍することは中国政界では過去にもあった。ただ、習近平さんは全てを彭麗媛さんに依存することはない…」

どうやら中国の軍隊と国家主席との信頼関係はかなり危ういようだが、これをアメリカはどう見ているのだろうか?

明海大学 小谷哲男教授
「昨年から今年にかけてアメリカの情報機関がメディアにリークしている情報を総合すると、2027年までに台湾に侵攻できるようにと習近平氏が指示を出したのだが、そう簡単なものではなく…、努力はしたものの追いついていかない。それが習近平主席の逆鱗に触れて、反汚職キャンペーンとなって多くの人がパージされ…、それが軍の不満を生んだのは間違いないというようにアメリカの情報機関は見ています。なので、とても今人民解放軍は大きな戦争をできる状態ではないと米政府高官から聞いた…」

何はともあれ“戦争できる状態ではない”ということは、いいことではある…。

(BS-TBS『報道1930』5月27日放送より)