「マンデラ人気」にあぐらをかいていた政府の慢心

上村彩子キャスター:
取材したロンドン支局の城島記者です。城島さんも南アフリカにゆかりがあるということですが、現場を取材してどんなことが印象的でしたか?

ロンドン支局 城島未来 記者:
20年前、子どもの頃ですが南アフリカに住んでいたことがあり、久しぶりに取材で訪れました。

まず驚いたのが「紙幣」です。

私も2000年代初頭の頃に使っていた旧紙幣ですが、南アフリカにゆかりのある野生動物などが描かれています。

いま使われている紙幣は、すべてにマンデラ元大統領の顔が印字されているのです。

10年ほど前からこのマンデラ元大統領のデザインが使われているそうですが、アパルトヘイト撤廃してからも20年、30年と経っても「マンデラ人気」にあやかり続け、あぐらをかいていた政府の慢心が今の状況を招いているということは否定できないのではないか、と感じました。

喜入友浩キャスター:
アパルトヘイト時代を知らない若い世代は、いまの南アフリカの政治にどんな思いを持っているのでしょうか?

城嶋 記者:
アパルトヘイト撤廃後に生まれた世代は「ボーン・フリー世代=生まれたときから政治的に自由な世代」と言われ、いまや人口の半分にのぼります。

EFFの集会に参加していた今回初めて選挙に参加するという10代の方に話を聞いたとき、「2024年は僕たちにとっての1994年なんだ」と話していたことが印象的でした。

2024年の選挙は、黒人が初めて選挙権を得た30年前の選挙と同じくらい重要で、国の分水嶺となるような選挙なんだ、という意味なんです。

4月下旬の世論調査では与党・ANCの支持率はかろうじて4割を上回る水準で、初めて過半数割れする見込みとなっていて、他の党と連立を組む可能性が強まっています。

日本でも度重なる裏金問題などで政治不信が高まっていますが、南アフリカの市民も厳しい経済状況の中にいる自分たちの声には耳を傾けず、私腹を肥やし続けるような与党に対する“堪えがたい怒り”のような感情を抱いていて、状況は全く違えど日本の政治不信とも通ずる部分があると感じました。