今年3月に岩手県が示した最大クラスの津波による浸水想定を受けて、沿岸部の自治体は緊急避難場所の見直しに取り組んでいます。新たに町内の7か所を緊急避難場所に加える計画の大槌町での取り組みと、見えてきた課題を取材しました。

(大槌町の防災担当者)
「どこの自治体の防潮堤も防潮堤の高さを超えたらばその防潮堤が壊れてしまう」

 6月、大槌町の大ケ口地区で津波の緊急避難場所について町と住民の意見交換会が行われました。現在、大ケ口地区は町の人口のおよそ1割にあたる1300人あまりが暮らしています。東日本大震災では一部の住宅が浸水被害を受けたものの、建物の流失といった大きな被害は免れました。しかし3月に県が示した最大クラスの津波による浸水想定では、地区のほぼ全域が浸水し大きな被害が出る可能性があるとされました。ところが地区の中には津波の緊急避難場所がありません。

(大ケ口団地自治会 松田弘会長)
「逃げても原野でトイレがない。雨風もしのげない。避難にも難色を示す住民の命をどう救っていくのか」

 自治会長の松田弘さんは、自主防災組織の責任者も務めています。今年1月、トンガ沖の海底火山の噴火で津波警報が出された際、緊急避難場所がないため凍える寒さの中で松田さんは明かりもない山間のこの場所に住民を避難させるしかありませんでした。

(松田会長)
「そういう所に避難させて地域の人たちの命を救わなければならない。とりあえずは一次避難だということで自分を納得させながら一次避難はさせています」