ビートルズの名曲をカバー 新進気鋭の黒人女性カントリーシンガー4人をコーラスに
高橋芳朗:
そんな2024年最大の話題作と言えるビヨンセの新作『Cowboy Carter』に収録されている2曲のカバーソングにフォーカスしてみたいと思います。まず一曲目は、ビートルズの「Blackbird」。1968年発表の通称「ホワイトアルバム」の収録曲。ポール・マッカートニー主導で作られた曲ですね。
ビヨンセが「Blackbird」をカバーした背景としては、この曲が1960年代のアメリカ公民権運動に着想を得て作られたことに基づいている、と考えていいでしょう。作者のポール・マッカートニーは「Blackbird」について「人種差別を受けていた黒人女性に捧げた歌」とコメントしていて。
要はタイトルの「Blackbird」は黒人女性のメタファーなんですね。サビのフレーズ「Blakbird fly, Into the light of the dark black night」(黒い鳥よ、飛ぶんだ。闇夜に灯る光を目指して)は、差別と闘う黒人女性を鼓舞する目的で書かれています。
このようなテーマを持つ曲に対して今回ビヨンセがどのようにアプローチしたかというと、彼女は新進気鋭の黒人女性カントリーシンガー4人をコーラスに迎えてカバーに挑んでいます。タナー・アデル、ブリトニー・スペンサー、ティエラ・ケネディ、レイナ・ロバーツの4人。
そしてなんと、ビヨンセはオリジナルのビートルズのトラックをそのまま使っているんですよ。新たにストリングスやベースが加えられていますが、オリジナルのトラックを使用していることは聴き比べればすぐにわかると思います。
作者のポール・マッカートニーはビヨンセのカバーに対してすぐに自身のInstagramを通じてリアクションしていました。曰く「ビヨンセのバージョンにはとても満足している。彼女は私がこの曲を書くきっかけになった公民権運動のメッセージをさらに強固なものにしてくれた。私の歌とビヨンセのカバーが人種間の緊張を和らげることに貢献できたらうれしく思う」と。
「Blackbird」はビートルズの数ある名曲の中でも特にカバーされることが多い曲ですが、このビヨンセ版はベストのひとつと言っていいのではないでしょうか。本当に感動的なカバーです。