樺沢は中盤までの速いペースへの対応がパリ五輪へのカギに

樺沢は5000m日本人トップの2位と好走したが、課題は残った。

「速いペースで進みましたが、思ったよりラストに力を残しておけなかったのが反省です。ケガをしたりや体調を崩したりすることがなく、順調と言えば順調なのですが、爆発するような走りができません。今回もアグネス(・ムカリ・21、京セラ)さんが15分前後のペースで走っていたのに、私はキツい感覚ですごく後ろを走っていました」

だが4月の2レースだけでなく、昨年秋以降の安定性は評価できる。9月の全日本実業団陸上で1500m4位(日本人2位・4分11秒53の自己新)と5000m7位(日本人1位・15分33秒69)、その翌週のYogibo Athletics Challenge Cup5000m優勝(15分36秒47)、12月の日本選手権10000m5位(31分45秒19の自己新)、今年2月の全日本実業団ハーフマラソン優勝(1時間10分13秒の自己新)、そして4月の金栗記念4位(日本人1位・15分22秒04)と織田記念2位と1レースも失敗していない。

昨年の日本選手権5000m(10位・15分35秒18)がきっかけだったという。

「緊張して最初からダラダラした走りしかできなかったのが、本当に悔しくて。そこから一念発起じゃないですけど、頑張ろうと思って。そのときから世界ランキングも随時チェックして、自分のタイムと順位を全試合で計算するようにしました。昨年秋も、ここでしっかり走れなかったら、(五輪選考のかかる)日本選手権でもまた緊張して走れなくて、オリンピックには一生出ることなく終わってしまうという気持ちで走っていました」

Road to Paris 2024の順位は織田記念終了時点で平均1142点の40位相当。五輪出場人数枠の42人に入るための計算もしっかり行っている。

「GGPでしっかり自己ベスト(15分18秒76)を出して8位入賞することと、日本選手権で3位以内に入ることが絶対条件です。GGPは得点がめちゃ高くて8位でも大きいですから。たぶんすごく速いペースで入ると思うので、15分10秒くらいまで行けたら良い感じになると思います」

そのレースを実行するために、前半から速いペースで入っても対応できる練習を行うという。

ラストスパートを課題とする木村と、中盤までのハイペースへの対応を課題とする樺沢。注目点は異なってもGGPは、パリ五輪への可能性を広げたい選手にとって極めて重要な大会となる。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)

※写真は左が木村選手、右が樺沢選手(2023年9月)