SMILE-UP.(旧ジャニーズ事務所)は4月25日、イギリスBBCに対し、今年3月に放送した創業者・ジャニー喜多川氏の性加害問題に関する番組の中で、東山社長の発言内容が「意図的にゆがめて放送された」などとして、抗議文書を送ったと発表した。ジャニーズ性加害問題について早くからメディアでコメントしている音楽プロデューサー・松尾潔さんは、4月29日に出演したRKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』で、この抗議について「論点ずらし」だと批判した。
編集権への介入を疑わせる
先週、旧ジャニーズ事務所の補償会社SMILE-UP.が「BBCが放送した東山紀之社長のインタビューの取材映像は、恣意的に趣旨を歪めて編集された」としてBBCに抗議するとともに、訂正と謝罪を要請する文書を送付しました。
これ、僕は結構重大な問題だと思っています。ラジオでもテレビでも収録番組は、生放送と違って編集を行いますよね。この編集権は、基本的には放送局、メディアの方にあります。
媒体によっては、初めから取材を受ける人に対して「編集しますが、その後に確認してください」と言っておく場合や「取材を受けていただく以上は、こちらを信頼して記事内容はお任せください」とする場合と、ケースバイケースです。僕も取材を受ける時には、そういう条件を確認することにしています。SMILE-UP.とBBCとの間で、事前にそういう話はしていなかったのでしょうか。
SMILE-UP.が(旧ジャニーズ事務所の時代から)日本の放送局に対して何か抗議をするといったことは聞いたことがありません。ということは、裏を返せば、普段から番組で取材を受けるたびに、編集権に相当介入しているんじゃないかという疑念が浮かび上がってきます。
性加害問題に関しても「放送前に事務所側がチェックする」ということが前提になっていたんじゃないかと、そういう疑いまで招いてしまいます。鈴木エイトさんなど著名なジャーナリストの方々も、このことを指摘しています。
BBCがカットしたことで事なきを得た?
BBCに抗議するのと同じタイミングで今発売されている「週刊新潮」のゴールデンウィーク特大号に「『ジャニーズ』補償贖罪の現在地」という見出しで4ページにおよぶ記事があります。おそらく紙媒体としては独占だと思いますが、東山社長がインタビューに応じていて、そこで「BBCのインタビューに映らなかった真意がある」というくだりがあります。
そこでも「BBCのインタビューで『誹謗中傷はなくしていきたいと僕自身も思っています』と語っていますが、残念ながら、その部分は放送で削除されてしまいました」と、抗議内容と同じことを語っています。
BBCのインタビューを受けた際にSMILE-UP.の方でも録音していた音声があり、それと照らし合わせて「BBCでオンエアされた部分とは別にこんなことも話していました」と言っているんですが、僕は「テレビの番組を収録する時に、自分の会社でも録音するんだ」ということに不信感を抱きました。
しかも、この「誹謗中傷はなくしていきたいと僕自身も思っています」の前に、もう一言「なるべくなら」とつけている。つまり、確固とした意志で「断固として誹謗中傷には反対します」と言ったのではなく、弱い印象を与えています。この部分をBBCにカットされたことで、かえって事なきを得たんじゃないかとさえ考えてしまいます。