「うそをつかない人に」

2024年3月14日、静岡地方裁判所が男に言い渡した判決は、検察側の求刑通りの懲役18年。裁判所は、女性を殺害、遺棄した上、スマートフォンを盗んで300万円を送金したのは男であると認定し、女性が殺害、遺棄されたのは午前4時半より前と認定した。

弁護側の女性が午前4時半以降も生きていて、午前7時の送金も女性本人が行ったとする主張については「女性が送金を行ったとすれば、午前6時代から複数回かかってきていた息子からの着信に気づき、息子に電話やメールをするはずであるが連絡をしていない」と指摘。

「スマートフォンのデータ削除など、数々の偽装工作に及んでいることは強い非難に値する」とした他、女性が自ら送金したことを前提とする男の供述やキャンプ場と女性宅の往復のルートなどを「覚えていない」などとする男の証言は「不自然、不合理であって信用できない」と退けた。

また、事件当時、男が引き出すことのできた預金残高は、合計1,889円で、消費者金融から約175万円の借り入れがあったことなどから、経済的に困窮していないとは言えず、動機はゆうに認められるとした。

裁判所は「中学生の子供から母親を奪ったという殺人の結果は重大」などとして、同種事案の中では重い部類に属すると判断。「反省することなく、遺族に謝罪することもないから、将来、何らかの犯行に及ぶ可能性も否定できない」などと指摘した。最後に裁判長は、裁判員と相談して考えた言葉で男を諭した。

「うそをつかない人に、胸を張って生きられる生活を送ってください」

判決を受け、男は判決を不服として、3月22日、東京高等裁判所に控訴した。