カギを握る「手ごろな価格帯」の新型EV
今後のカギを握るのは、やはり、手ごろな価格帯のEVができるかどうかでしょう。
そのためにはバッテリーの劇的なコストダウンが実現するような技術革新と、その実装が必要です。今のバッテリーの価格では、高価格帯の車はともかく、3万米ドル前後の大衆車のEVでは、とても採算がとれないからです。
手ごろな価格のEVが出なければ、EVの販売台数が「壁」を越えて、劇的に増えることにはならず、結果として、量産効果も得られません。EVの台数が増えなければ、充電施設の整備も進まないように思えます。
まさにテスラは、そのことに挑戦しようとしてきました。決算後の記者会見でマスク氏は「2025年始めには新型モデルの生産を始める」と、これまで25年後半としてきた計画の前倒しを宣言しました。
しかし、「手ごろな価格帯」の数字や、新モデルの具体的な内容については、言及を避けています。
自動運転「ロボタクシー」も8月公開
さらにマスク氏は、「ロボタクシー」と呼ぶ、自動運転タクシーも8月には公開すると改めて強調しました。単にEVを製造する企業ではなく、IT技術やAIと結びついたサービスを提供する企業を目指す姿勢は一貫しています。それでも、自動運転実現の難易度が高いことは、想像に難くありません。
起業以来、これまで「無理」と言われたことを、何度も乗り越えて来たマスク氏が、この苦境から脱する活路を見出せるか、テスラにとっては、正念場の戦いになります。
播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)