IMF=国際通貨基金は7月26日、今年の「世界経済見通し」で世界の成長率を3.2%とし、3回連続下方修正した。アメリカのGDP(国内総生産)も2期連続のマイナス成長となり、アメリカ経済の減速が世界経済にも影響を及ぼすことは避けられない。世界的な不況が現実味を帯びつつあり、日本経済への影響が心配される。今後の見通しを専門家に聞いた。
■「もうすぐ世界不況の淵に立たされるかも」

IMFは26日に発表した今年の世界経済見通しで、世界の実質GDP成長率を3.2%と前回の4月から0.4ポイント引き下げた。IMFは下方修正を繰り返しており、今回で三回連続となった。IMFは要因として「先進国で加速するインフレ」や「中央銀行による急速な利上げ」などを挙げている。新興国も入れた世界全体で3.2%となると、日本を含む先進国の実感はほぼゼロ成長で、これは相当厳しい見通しだ。

東短リサーチ代表取締役社長 チーフエコノミスト 加藤出氏:
アメリカが相対的にこれでも一番強い方なわけですからね。ヨーロッパのウクライナの影響が相当きていますし、中国はいろいろ内部のトラブルがありますから。そういう意味では先行きは厳しいし、コロナ禍から立ち上がってきた景気の上向き局面は終わってしまったというのは明らかだということです。
IMFのチーフエコノミストは厳しい言葉で世界同時不況への警鐘を鳴らした。

IMFチーフエコノミスト ピエール・オリヴィエ・グランシャ氏:
4月以降、見通しは大幅に暗いものになっています。世界はもうすぐ世界不況の淵に立たされるかもしれない。
■米GDP2カ月連続マイナスだが「景気後退ではない」

アメリカの4月から6月のGDPは、年率換算でマイナス0.9%と2期連続のマイナス成長となった。2期連続のマイナスは景気後退のシグナルといえるが、FRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長は「アメリカ経済が景気後退だとは思わない。労働市場が非常に強いからだ」と述べ、バイデン大統領とイエレン財務長官も景気後退を否定した。

バイデン大統領:
失業率3.6%という記録的な労働市場だ。私には景気後退だとは思えない。
イエレン財務長官:
(景気後退の定義は)広範囲に及ぶ経済の弱体化だ。いまはそのような状況ではない。

東短リサーチ 加藤出社長:
アメリカはもう減速局面に入っていると思います。ただ注意するポイントがあって、アメリカのGDPの第一次速報値というのは、あとで大幅に改定されるケースが頻繁にあり、大変当てにならない数字です。実際のいろいろな数字を見ると、ここまでは弱くないだろうというのが多くのエコノミストが感じている状況でしょう。