「日本車のシェアはこれからじりじりダウンしていく」

一人勝ちの様相を呈している『BYD』は北米進出を念頭にメキシコに工場を建設する動きを見せている。これには早速トランプ氏が吠えた。

トランプ前大統領
「私が大統領になったら彼ら(中国メーカー)に関税をかけ、そこで車を作れないようにする。大統領に就任した初日にEVへの補助金の廃止に署名することを約束する」

一方、中国に次ぐ世界2位のEV市場であるEUのフォンデアライエン委員長も警戒感を露にする。

欧州委員会 フォンデアライエン委員長
「世界市場は今や安い中国のEVであふれている。その価格は巨額の政府補助で人為的に低く抑えられていて我々の市場をゆがめている…」

フランスではいち早く中国製EVを補助金対象外にした。日本でも『BYD』への補助金は今年から減額されている。欧米への進出にハードルが高い『BYD』は南へ進出するというのが中西氏の見方だ。実は今タイで中国製EVのシェアが急上昇している。タイは日本の自動車メーカーのサプライチェーンの中心。ここが中国に支配されると日本メーカーは敗北のドミノ倒しに陥ると中西氏は言う。

自動車アナリスト 中西孝樹氏
「日本車が優位性を持っている新興国で(販売競争の)敗北が始まる。タイでは既に始まっている。他の東南アジア、オーストラリア、中近東、アフリカ…どんどん敗北の輪が広がっていくんです」

この見方には中国の自動車産業を調査研究する『みずほ銀行』の湯進氏もうなずく。

『みずほ銀行』湯(たん)進(しん)主任研究員
「東南アジアに関しておそらく日本車のシェアはこれからじりじりダウンしていく。中国車の進出先としては民族ブランドが存在しない(自動車メーカーを持たない)国に進出するのではと思っています。タイも、オーストラリアもそうです…」

東南アジアが日本の自動車メーカーにとっていかに重要かをかつて日産自動車でASEAN担当だったという志賀俊之氏は話す。

元日産自動車COO 志賀俊之氏
「当時(ASEAN諸国では)日本車が95%くらい。私インドネシアに駐在していたんですけど、まぁほぼ全部日本車。それだけのマーケット作ってアフターサービスして…完全に日本の牙城だったんですね。そういうところで負けるはずがないっていう驕りはあったかもしれません。これほど振興国がEVの方にシフトするとは思わなかった。(―――タイは日本にとって?)大事ですねぇ。年間180万台くらい現地生産してて半分くらい輸出。だから生産拠点、アジアのデトロイトみたいなところ」

躍進する中国勢の前で日本車は競争力を維持し、中国車に対抗していけるのか…。前出の劉偉氏に聞いたところ笑顔でこう答えた。

中国自動車工業協会 劉偉 理事
「…その話はやめましょう。私には日本企業のパートナーがたくさんいるから…対抗できるかは最終的に市場によって決まります」

(BS-TBS『報道1930』4月9日放送より)