世界の潮流のはずだったEV(電気自動車)の売れ行きが芳しくない。トップシェアを誇っていたアメリカ『テスラ』も前年比で大きく売り上げを下げ、時価総額はピーク時の半分以下に下落した。同様にドイツ『フォルクスワーゲン』、アメリカ『フォード』も販売台数は計画の半分に止まっているという。EV市場は今“踊り場”にいるというのが大方の見方だ。そんな中1社だけ鼻息が荒い。中国最大のEVメーカー『BYD』だ。
圧倒的なコストパフォーマンスでシェアを拡大。ついにはテスラを抜いてEVの世界シェア第1位に立った。BYDはいかにして低価格を実現したのか?大躍進のワケと未来を議論した。

「中国は3000万台という大きな市場の中で様々な革新が生まれた」

1位の座を奪われた『テスラ』のイーロン・マスクCEOは中国のEVメーカーを「世界の同業のほとんどを打ち負かすだろう 彼らは非常に優秀だ」とほめたたえた。
去年1年間の新車販売台数のうちEVが占める割合は、『テスラ』を有するアメリカが7.8%なのに対し中国は22.2%(因みに日本は1.7%)。この巨大マーケットをバックに急成長したのが『BYD』だ。日本でも2年前から販売を開始している。販売店をのぞいてみた…

「中国製だからどうなかなぁと思ったんですけど結構デザインも洗練されてて良かったんじゃないですかねぇ…」(来店していた男性客)

「電気自動車が欲しくて色々調べて…、日本では(種類が)限られているんですがその中でこの車が一番良いかなぁ…」(購入したイギリス人男性)

日本での販売台数はまだまだだが、中国製品に対する偏見は薄れていると販売店の店長は言う。

『BYD AUTO練馬』上川賢 店長
「お客様の多くはフラットに良いものをよい値段で購入できるのであれば乗りたいって…」

デザインも性能もまずまずのようだが魅力は何といっても“低価格”だ。
主力のミドルサイズのSUVで日本での販売価格は450万円台。まもなく販売される小型の『Yuan UP』は200万円ちょっとで販売されるという。さらに中国国内では航続距離が300キロで約150万円という車種もある。
中国製品が“安かろう、悪かろう”だった時代の話ではない。低価格を実現したのにはそれ相応の“ワケ”があるようだ。専門家に聞いた。

中国自動車工業協会 劉偉 理事
「中国は3000万台の自国市場があって、これは世界の3分の1を占めている。日本の自国市場は400万台ほどしかないが、中国は3000万台という大きな市場の中で様々な革新が生まれた。販売台数が大きくなれば利益や効率は自ずと上がるし、そこで一定数を占めることができればコストは下がってくる…」

3000万台の中国自動車市場。EVなどの市場だけでも900万台もある。これは日本のガソリン車も含めた全市場の倍以上の規模だ。その中でトップシェアの『BYD』はコストを落とす手立てがいくらでもあるのだ。