――まず、井出さんから、「中東のオイルマネー」

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
1、2月に日本株を買いに来たのが、主に中東のオイルマネーだと言われている。2か月間の累計で2兆円ぐらい買い越した。
――外国人投資家が日本株を買ってあげたという正体は、この中東のオイルマネー?
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
と言われている。あとは中国の個人投資家なんかも、自分の国は駄目だからというので日本に逃げ込んできたと。中東のオイルマネーがここまで日本株を買いに来るっていうのは想定外というか盲点。
――なんでそんなに中東の人は、想定外になるほど買ったのか?
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
1つには中東はこれまで中国株を買ってた。でも中国の景気が悪い、早期に回復する見込みもないので、日本に資金を移した。そのときにアメリカ株を買わないのが不思議。高かったから相対的に買いやすかった日本株を買いに来た。それから日本は経営改革も進んでいて賃上げも進んでいるので、そういうところに目をつけたのではないかと思う。
――続いて黒瀬さん。「ガバナンス向上」。

りそなアセットマネジメント 黒瀬浩一氏:
日本企業のガバナンス改革は20年前からやっている。金融庁が本格的に手をつけたのも10年前。ところが2023年金融庁が打ち出した新しい方針は相当に大きな実効性を伴った。これで企業が実際に成長戦略、それから中期経営計画から配当の増加、事業再編と動き出して、これがもう本当に大きなサプライズだった。
――ガバナンスの向上は、ことさら目新しくないような気もするが。
りそなアセットマネジメント 黒瀬浩一氏:
実際にいろんな会社が不採算事業を切るとか、成長戦略、実際にこういうことをやりますという具体性、具体的な数字が出てきた。それで投資家も確信を深めた。
――続いて小髙さん。小髙さんは2023年に3万9000円と一番高い予想を出したが、遥かにそれを上回った。

野村証券 小髙貴久氏:
この最初の3か月間で2割も日経平均株価が上がっていて、通常主要企業の年間の経常利益が大体7、8%の上昇が一般的だがそれを上回って株価が反応したというのは、企業業績であったり、いろいろな成長への期待というのが含まれて、これだけ株価が上がった。
――山口さんも似たような言葉で「評価」。これ誰の何に対する評価か?

SMBC信託銀行 山口真弘氏:
投資家の日本株に対する評価。これが大きく上にぶれた。これがまさに予想外。経営改革はもちろん、日銀の動きに対しての為替の反応。これも意外だった。基本的には金融引き締めの方に向くので、円高だろうと思っていた。今のところ円安に動いてそれは日本株にとってはかなり大きなプラス材料で、そこの部分の評価も予想外で、これが株価を押し上げた要因だろうと考えている。

ポイントをまとめてみた。まず円安がとにかく加速した。2024年は円高だろうとみんな思っていた。特に年初から進むだろうと言われたのが、全然進まないどころか円安になったと安心感あった。またデフレ脱却期待が、予想外の賃上げでとにかく高まって、そのフェーズが変わった感がすごく出たこと。異次元緩和をやっても影響がなかったこと。そして半導体の大きなブームがあった。この辺りも今、日本経済に対するパーセプション(認識)が変わったことに繋がっている。
――黒瀬さん。半導体とかAIで成長していくストーリーがアメリカでしきりに語られるようになった。

りそなアセットマネジメント 黒瀬浩一氏:
ある程度は実現をするとは思う。ただ今株式市場が織り込んでるほどのものかどうかということについてはいつか試されるときが来るとは思う。ただそれはすぐ今ではなくて、もうちょっと先だろう思う。(これが有力な成長シナリオとして語られるようになったことは大きな動きだったか)そのものは非常にポジティブに評価していい。
――小髙さん。やはり大きいのはこのデフレ脱却期待。本物だというふうに投資家に見られ始めてるのか。

野村証券 小髙貴久氏:
はい。今回大手企業だと思うが、賃上げが5%を超えて示されたということでさらには2025年以降も、物価の上昇率を上回る賃上げを達成するという御旗が掲げられている点から国内の消費にも賃上げが繋がっていくという期待が出てきている。
――山口さん。いずれも変わるのではないかという期待の部分が大きいということか。
SMBC信託銀行 山口真弘氏:
賃上げに関しては2023年もあり2024年もありということで連続的になってきた。回数重ねれば実現への期待はどんどん高まっていく。

半導体関連4社の株価指数。半導体株がいかに上がったかというグラフ。2023年の初めを100としたときに、ゴールドマンサックスが出した「7人の侍(セブン・サムライ)」のうちの4社、半導体関連の株はもうこれだけ上がっている。これは、テクニカルには非常に日経平均には大きな影響を与えたのではないか。
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
東京エレクトロンやアドバンテストが日経平均への影響度がトップクラスになった。だから半導体株の上昇が日経平均もしくは日本株全体を引き上げてるって言ってもおかしくない。投資家心理がそれだけ和らぐから。
――小髙さん。今のところ日本株に悪い材料が何も出なかった3か月と言ってもよいか。
野村証券 小髙貴久氏:
我々が懸念していた円高リスクや、アメリカ経済がまだ少しもたつくなど出なかった。あと中国も失速するのではという見方も全然出てきていないという点では非常に良い3か月間を過ごしてきた。
――嬉しい誤算だったのかもしれない。それでは2024年度12月まで株価はどのように展開していくのか皆さんに予想してもらう。