クリーニング最大のヤマ場 巨大蛇行剣の“天地返し”

2023年春に始まった巨大蛇行剣の保存処理は、6月に表面のクリーニングが終了した。

柄の漆や、鞘の木の痕跡など1600年前の剣の姿につながる多くの情報が得られた。しかし、保存処理を担当する奈良県立橿原考古学研究所の奥山誠義総括研究員は…

奈良県立橿原考古学研究所 奥山誠義 総括研究員
「5合目までも来てない感じがしますね、まだ。(裏面への)反転作業が無事に終わって、土を取っていくところで5合目を越えたかなと」

反転するといっても蛇行剣だけを取り上げて裏返すわけではない。周囲の土にも痕跡が残る可能性があるため、剣の土台ごと反転させる必要があるのだ。裏面の方がより多くのことが分かる可能性があるという。だが、一体どうやって裏返すというのか。

2023年8月、蛇行剣は頑丈な木枠に囲われていた。表面はペーパータオルなどで養生が進む。

奥山 総括研究員
「反転作業があるのでその作業に耐えられるように、板を組み合わせて棺のようなものを作っている。(Q.これを作ったのも奥山さん?)はい、私の手作りで」

木枠に流し込まれたのはウレタン。膨張が始まると10分程度で固まる。反転の際に蛇行剣が動かないようにしているのだ。

その後、金具やネジでフタと木枠を固定。蛇行剣を反転させる準備が整った。

奥山 総括研究員
「みなさん力を合わせてお願いします」

翌日、最大のヤマ場である“天地返し”、巨大蛇行剣の反転作業が始まった。

8人がかりで蛇行剣が入った木枠を持ち、慎重に床におろす。いよいよ反転だ…

奥山 総括研究員
「そうっと、そうっといきましょう」

ゆっくりと傾けていく。

2か月間、奥山を中心に保存科学担当のチームが準備をしてきた反転作業。奥山は「夢の中にまで蛇行剣が出て来た」と話すほどだったが…

奥山 総括研究員
「あともう一息、頑張ってください。…あと1センチ…はい、着きました。…返ったね!」

蛇行剣の“天地返し”が成功した。

奥山 総括研究員
「 無事終わりました、よかった。(Q.大ヤマ越えましたね)越えました。あとは(木枠を)開けていくだけ」