円形のチーズを放射線状に6つに割った形の、雪印メグミルクの『6Pチーズ』。国内チーズ市場でシェアの高い、代表的なナショナルブランドで、私も子どもの頃から食べ慣れた商品です。

雪印メグミルクは、9月1日から他の乳製品と共に価格改定に踏み切るとして、『6P』については、価格は据え置くものの、内容量を今の108gから102gに減らすと発表しました。減量率は5.6%なので、その分、値上げすることになります。『6Pチーズ』は1箱6個なので、1個当たり1g小さくなるわけです。たかが1gとはいえ容量を変更すれば、単純な価格の値上げとは違って、生産ラインの変更などが必要になり、手間とコストがかかりますが、それでも店頭で価格を上げて消費者が商品を敬遠することを避けるために、こうした方法を選ぶのでしょう。

実は『6P』は4月に、希望小売価格を365円から385円に5.5%上げる、値上げを実施しています。原材料価格に加え、包装費や物流費、エネルギーコストが高騰しているためですが、さすがに半年で2回もの値上げとなると、消費者が離れてしまう恐れがあると判断し、2回目は容量減少の道を選んだものと見られます。

同様にソーセージの代表銘柄である日本ハムの『シャウエッセン』も、2月に値上げしましたが、2回目となる10月からは価格を据え置いたまま、内容量を6本127gから117gへと減らすことを決めています。

日銀の黒田総裁は6月、商品の価格改定が広く行われていることをもって、「家計の値上げ許容度が高まっている」と発言して大炎上しましたが(その後、謝罪撤回)、こうした例を見れば、値上げ許容は1回限りで、とても2回目の値上げは許容されないと、企業側が見ていることがわかります。『6P』や『シャウエッセン』といった強いブランドが値上げできないのであれば、他のブランドは値上げできるはずがありません。今回の物価上昇局面で値上がりの激しかったものにマヨネーズがありますが、その代表ブランドであるキユーピーマヨネーズは値上げ後、売上数量が大きく落ち込んだといいます。値上げによって、消費者がより安いプライベートブランドや代替商品に流れるという生活防衛的態度が一段と強まっているのです。

価格を上げずに容量を減らす手法は、デフレ時代の日本では広く行われ、「ステルス値上げ」とか「シュリンクフレーション」と呼ばれてきました。「値上げ許容度」が高まり「インフレと賃上げの好循環」が実現するには少なくとも、この「シュリンクフレーション」が止まらなければなりません。

さて、『6Pチーズ』は、高度経済成長前の1954年に誕生しています。その時の内容量は170gでした。私が『6P』を好んだのは、ゴロッというボリューム感があったからです。それが1997年に150gに変更され、2012年に120g、2014年に108g、そして2022年9月には102gへと、どんどん小さくなってしまいました。インフレと成長が両立する世の中であれば、容量増大を理由した値上げだって許容されるはずです。大好きな『6P』が大きくなるのはいつの日のことでしょうか。

播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)