パレスチナ問題で思い込みがあった
門脇さんは地元仙台の高校を卒業後、東京外国語大学に入学。アラビア語を専攻しましたが、「アラビア語は全然上達しなかった」と振り返ります。“パレスチナ問題”のゼミに所属しますが、あまり熱心に参加することはありませんでした。そこで長年、現地に赴くことにためらっていたと言います。
門脇篤さん:
「学生のとき、エジプトには行ったんですが、パレスチナは行っちゃいけないような気がしていたんですね。社会課題に向き合うような、ちゃんと志のある人じゃないと行っちゃいけないような。東日本大震災の時、被災地へ行くのは復興ボランティアであって、好奇心だけで行っちゃいけないみたいなのに似ているかもしれません。ずっと自分には関わる資格はないような気がしていました。
しかし、門脇さんの内面で変化が起きました。

門脇篤さん:
「でも、もういい年齢ですし、『もういいかな』って。アートとか表現活動とかいうと、特別な才能を持っている人だけができるものみたいな印象があるけれど、そうではなく、誰もがそれをする権利があるし、そもそも一握りの『特別なもの』よりも、無数にある『普通のもの』とされている営みやあり方の方がおもしろいと思ってやってきました。それなのに、“パレスチナ問題はちゃんとした人じゃないと関わっちゃいけない”という思い込みは、自分がこれまでやってきた姿勢と矛盾している。それで(大学卒業から)30年近く経って、行ってみようと決めたんです。思いつきですね」