岸田総理は、国民に「2つの約束」
岸田総理は28日、予算成立を受けた記者会見で、物価高を乗り越えるための「2つの約束」を表明しました。1つ目は、2024年内に物価高を上回る所得を実現すること。2つ目は、2025年以降に物価上昇を上回る賃上げを定着させることです。
こんなことを公約して大丈夫か、と心配にもなりましたが、岸田総理の問題意識、目標設定は実に正しいものです。
デフレ脱却、経済の好循環という命題にとって、最も重要なポイントは、物価上昇分を差し引いた実質の所得をプラスに転換し、消費(需要)の拡大に結び付けることです。
厚生労働省の毎月勤労統計によれば、実質賃金は2024年1月時点で22か月連続のマイナスで、消費の現場には弱さがはっきり現れてきています。
実質所得をプラスにするには、名目賃金を上昇させなければなりません。
春闘で5%以上という画期的な賃上げが実現しました。その一方で、物価上昇率を緩やかなものにすることも是非とも必要です。24年2月の消費者物価は生鮮食品青除く指数で前年比2.8%上昇とまだ高い上昇が続いており、物価高が落ち着かなければ、実質所得のプラスへの転換はそれだけ遠のくことになるのです。
政策には優先順位をつけた調整を
もちろん、ガソリンや電気・ガスへの補助金には巨額の財政負担がともなっています。また、こうした政府による価格調整が市場機能を歪めていることもたしかです。
しかし、政策には優先順位というものがあるでしょう。
岸田政権にとって、今の最優先課題は、30年ぶりに図らずも訪れたこのチャンスを、確実にデフレ脱却と経済の好循環につなげることであり、それは総理自身が会見で表明した通りです。こんなチャンスはそうそう訪れるものではありません。
電気・ガス代への補助打ち切りは、物価上昇率が目標とする2%に近辺に落ち着くことや、実質賃金がしっかりプラスに転じたことを確認してからでも、決して遅くはないでしょう。
今回の唐突な電気・ガス代への補助打ち切り決定は、岸田官邸の政策調整機能が全く働いていないことを物語っています。総理大臣として来年のことまで約束するなんて、少し早すぎやしませんか。
播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)