去年7月の豪雨で被災した大分県日田市にある「小鹿田焼の里」では、これから本格的な災害対策や復旧の工事が始まります。しかし、地元では国の重要文化的景観に選定されていることが「復旧の足かせになっている」という声が高まっています。

「原型復旧したがる…文化的景観選定のメリットなし」

日田市池ノ鶴地区でコメを生産している木下浩和さん(55)。地区では去年7月の豪雨で土石流が発生したことから、県は木下さんの私有地に治山ダムの設置を決めました。過去7年で3度目の被災ですが、原因を尋ねても答えることなく、工事を進める行政の意向に憤りを感じているといいます。

木下浩和さん:
「何十年も見てきた地元の人が一番わかってるはずなのに、そこに耳を傾けないんですよ。傾けない理由も聞いてみたいですけど、なかなか答えてくれないですからね」

去年の豪雨で地区にある棚田の8割以上が被災。木下さんの棚田も被害を受けましたが、災害復旧の申請を見送りました。その理由は、繰り返し豪雨に見舞われるたびに、土砂の流入や河川の氾濫による被害にあっているのにもかかわらず、行政が“原型復旧”にこだわるためといいます。

木下浩和さん:
「3メートルぐらいの河川では処理できないのがわかっているのに原型復旧したがる。理由が僕には見えない」

石積みの棚田が広がる池ノ鶴地区は、小鹿田焼の窯元がある皿山地区とともに、2008年に九州で初めて国の重要文化的景観に選定されました。この景観を守るため、様々な規制が設けられているのです。

地区では4月以降、棚田や河川の復旧も始まりますが、木下さんに知らされた計画では防災強化ではなく、文化的景観の維持にも配慮した「原型復旧」にとどまり、不安だと打ち明けます。

木下浩和さん:
「単なる農地です。僕たちからしたら景観もへったくれもない。だから文化的景観の選定を受けたメリットもない。やめてもデメリットもないですから、ない方がいいんじゃないかと思っている」