「個人より公が優先されることについて国民的コンセンサスを得ている」
お隣、韓国ではいち早く能動的サイバー防御を取り入れている。
何しろ韓国は1日平均162万件のサイバー攻撃を受けている。その8割に当たる約130万件が北朝鮮によるサイバー攻撃だ。サイバー防衛の強化は必然だった。

韓国・行政保安部 キム・ホンジュン氏
「2017年からAI人工知能やビッグデータを活用してサイバーセキュリティを強化しようと努力している。データをAIに学習させ既存の攻撃には自動対応している。(だが攻撃を事前に察知して先制攻撃することは難しい)なぜなら敵が攻撃しようとする意図が明確に判断できる根拠がないと思う。サイバー防御は“盾”。盾は防御には使えるが先制攻撃には使えない…」
能動的サイバー防御はあくまでも防御であって攻撃ではないという。
ソウルにある民間のサイバーセキュリティ企業を訪ねた。

この会社は韓国軍や政府とも取引があるという。北朝鮮のサイバー攻撃は多様化しているため、防御は難しくなってきたと最高技術責任者は言う。

『クアッドマイナー』 キム・ヨンホ最高技術責任者
「北朝鮮は生成AIのような技術を利用して多様に新変種の攻撃をおこなっていて従来のセキュリティソリューションでは探知できなかったり防げないことが確認されいる。ウチが開発したネットワークシステムを韓国全軍に設置し能動監視統制システム化を推進している…」
能動的監視統制システムは、相手のどんな攻撃が成功したのか、成功した攻撃はどんな影響をもたらしたのか…、それらのデータを大量に収集して分析する。さらにネットワーク上のすべてのデータ送受信も収集、分析。攻撃が起きる前、または起きた時点でその危険性や影響度を即判断し、能動的に対応できる活動を支援するシステムだという。データ収集による通信の自由やプライバシーの問題をどう捉えるのか聞いた。
『クアッドマイナー』 キム・ヨンホ最高技術責任者
「韓国は北朝鮮と対峙している地政学的特徴があるので個人より公が優先されることについて国民的コンセンサスを得ている部分がある。個人情報保護という側面よりは能動的サイバー防御がより重要視されなければならない…」
日本も本来なら今国会でサイバーセキュリティについて論じられるはずだった。しかし裏金問題によって後回しにされた形となった。目に見えない攻撃だけに、気づいたときには取り返しのつかない事態になっているかもしれない…。通信の自由を守りながら、よからぬ攻撃から国民を守るのにはどうしたらいいのか。派閥や自分たちの利益を守る以前に、国会での議論が望まれる。
(BS-TBS『報道1930』3月22日放送より)