病気や障害、何らかの生きづらさを抱えながらも充実して生きるための「学びの場」として、東京・国立市内で「リカバリーの学校@くにたち」という名前の様々な講座が、2023年から2024年にかけて開かれました。一般社団法人「眞山舎(さなやまや)」が、文部科学省による令和5年度「学校卒業後における障害者の学びの支援推進事業」として委託され、実施したものです。
様々な背景の人が、一緒にスポーツを楽しめる場を作る
記者が取材したのは講座の一つ「ダイバーシティサッカーをくにたちで実現!」。多様な背景を持つ人が一緒に、サッカーなどスポーツを楽しむ場を作る活動です。講師はNPO法人「ダイバーシティサッカー協会」代表理事の鈴木直文さん。国立市内、一橋大学の体育館に30人弱の参加者が集まりました。
鈴木さんは「体育の授業が苦手だった人とかスポーツ嫌いになったりするんですけど、足が速いとか、体力があるとかっていうことがなくても、スポーツは楽しめます。そういう風になるように、みんなで考えながらやりましょう」とあいさつしました。そして、「元気よくても、なくてもいいです。気持ちの良いテンションでやりましょう」と、簡単な準備運動や、ボールを使った遊びから始めました。この日の参加者の背景は様々。知的障害や精神疾患がある人、何らかの理由で、他の「リカバリーの学校@くにたち」の講座に参加したことがある人、国立市の公民館で、知的障害者との活動に関わる大学生や市の職員、一橋大学の先生である鈴木さんのゼミの学生たち…。
ダイバーシティサッカーは、参加者の状況、その場の状況で、やり方やルールを変えたり、その日だけの特別ルールを作ったりもします。「目の前の人と一緒にスポーツを楽しむにはどうすればいいか」考えながら行います。この日は、怪我がなく、安全に楽しめることを目標に、あとは自由、という感じで始まりました。5人1チームで、4つのチームを作り、準備運動のあとは、チームそれぞれのやり方で、自己紹介をしたり、言葉遊びをしたりしながら、ボールを触って、ウォーミングアップします。
そして、総当たり戦の形で、まずは1試合。そこで、チームで話し合いをします。記者がいたチームでは「ボールを蹴りたい人にボールがあまりまわっていない」「サッカーをあまりよく知らない参加者がどう動いていいかわからない」といったことがわかり、次の試合に向けて、チームでいろいろと考えました。運動が苦手な人、コミュニケーションが苦手な人が仲間外れにならないように。チームごとに工夫し、さらに2試合行いました。
参加者の感想
「いきなりすごい走ったので、パス回しがうまくできなかった。個人としては、けがしなくてよかったなと思ってます。なかなかこういう機会がないので、みんなでやれると楽しいです」
「すごく自由に、ルールとかを厳しくせずっていうことでしたけど、だからこそ考えないといけないことがすごく多くなって、大変でした。単純化ってのも大切なんですけど、ある程度の複雑さがないと、強い人がただ強いだけになってしまうのかなってすごく思いました」
「子供が小学校の時に、ママさんフットサルやってました。ほんとに久しぶりなんですけど、楽しいです。また、やりたいなと思い始めてます」

最後に、参加者全員で振り返り。運動が苦手な人、コミュニケーションが苦手な人もいましたし、何が楽しいかも人それぞれでした。運動して楽しかった、すっきりしただけでなく、ちょっともどかしかった、もやもやが残った、とかも含め、それぞれの記憶に残る日になったのかもしれません。