ロシア大統領選が終わり、予想通りプーチン氏が圧勝。それも投票率(74%)、得票率(87%)ともに過去最高だった。5期目を迎えることになるプーチン大統領だが、案の定というべきか選挙の不正が取り沙汰されている。
一方、続投が決ったプーチン氏の今後からも目が離せない。選挙に勝ったことでロシア国民に承認されてしまった“プーチンの戦争”の行方は…。

「上司の管理下で職場から投票に行く」

ロシアにも不正に目を光らせる独立系の選挙監視団体がある。だが去年8月その共同代表が逮捕され、団体はスパイを意味する“外国の代理人”に指定されてしまい、ロシア国内での活動に制限がかけられている。
番組では団体のメンバーにインタビューした。彼は6年前プーチン氏は76%の得票率で選挙に勝ったが、実際の支持率は50%から55%くらいだったと語り、現在の調査データから考えると支持率が上がる根拠はないという。そして、今回も“信用できない選挙だ”として不正の証拠となる映像を見せてくれた。

独立系選挙監視団体『ゴロス』ダビド・カンキヤ氏
「(現在)監視員を任命できるのは政党と候補者だけで、私たちはやることができない。6年前、私が監視を担当した地域には800人の監視員が置かれていましたが、今回は数十人だけだ…」

そんな状況の中、ひとつの投票所で隠し撮りされた映像がある。ロシア南西部グラスノダアール市の投票所。一人の男性が周囲の気を引くように警備員に話しかける。その奥に選挙管理委員会のメンバーの女性…。その手には投票用紙を思われる紙が複数枚。みんなが警備員と男のやり取りに視線を向けている間に、女性は手にしていた複数枚の紙を投票箱に入れ、何事も無かったようにその場を離れた…。

今回の選挙、監視員が削減された上に、投票所が9万5000カ所もあった。これでは十分な監視はできないとカンキヤ氏は言う。また今回から投票期間が3日間あり、その初日が平日であることも政府側に有利だという。

独立系選挙監視団体『ゴロス』ダビド・カンキヤ氏
「職場でも大学生に対しても小中学校の親も、民間企業でも国営企業でも投票に参加するよう圧力がかかっている。なのでみんな金曜日の午前中に投票することになる。自宅近くの投票所ではなく職場の近くにある特別は投票所に登録しなければならない。上司の管理下で職場から投票に行くんだ…」

さらに今回から大統領選では初めてのオンライン投票が導入された。ところがオンライン投票は90ある選挙地域のうちなぜか29の地域でだけ実施された。ここにも政府の意図を感じるとカンキヤ氏は言う。

独立系選挙監視団体『ゴロス』ダビド・カンキヤ氏
「この29の地域は野党が最も強く、監視員の体制が一番しっかりしている地域だ。オンライン投票は完全に不透明。つまりブラックボックスだ。投票がどのように集計されるか見ることはできない。そもそも集計されるかどうかわからない…」

今回の大統領選、“初めて”は投票期間とオンライン投票だけではない。SNSでも公開が禁止されたのも初めて…。更に欧州選挙監視員の派遣が初めて拒否された。
また占領4州での投票、これが初めてなのは当然だが、占領4州とクリミアの5地域の得票率はおおむね90%を超えていた。

東京大学先端科学研究センター 小泉悠 准教授
「実際にプーチンはある程度支持されているんだろうというのは私の考えなんですが…。ただ占領4州ですよねぇ。まさに今ロシアによって占領され、実際に人も死んでいる中でこんなにプーチンを支持する人がいるのかなぁって。もっともっと低い数字…そもそもプーチンが勝ててない可能性だってある(中略)ロシアは占領じゃなくて解放しに来てるって言ってるわけですから、…現地の人は喜んでいるんですってことをしなきゃいけないわけですから…ロシアで最も高い数字が出なきゃいけなかったんでしょうね」