アフリカには、こうした生命の進化の証しとして世界遺産になったものがいくつもあります。そのひとつが、ケニアの自然遺産「トゥルカナ湖国立公園群」。トゥルカナ湖は南北260キロ、大地溝帯という火山活動が活発な地域にあります。

ケニアの世界遺産「トゥルカナ湖」

番組でも撮影したのですが、巨大な湖には噴火で出来た火山島があり、周囲の大地も火山灰に覆われています。

その火山灰の中から1984年、古人類学者のリチャード・リーキーと同僚が、約160万年前の人類の祖先の化石を発見しました。

極めてまれな、ほぼ全身の骨格が残った状態で見つかったのは身長160センチ、推定年齢9歳の少年でした。

保存状態が良かったのは、埋まっていた火山灰が保存材の役割を果たしたからと考えられています。

「トゥルカナ・ボーイ」と名付けられた人類化石

「トゥルカナ・ボーイ」と名付けられた化石の少年は、脳の大きさは現代人の三分の二ほどでしたが、身体のつくりはほぼ同じ。

腰を伸ばして直立して歩くことが出来て、今の人類の祖先だと考えられています。サルからヒトへ・・・人類の進化を物語る大発見でした。

一方、「生きた化石」が暮らしているのが南アフリカの自然遺産「イシマンガリソ自然公園」です。

南アフリカの世界遺産「イシマンガリソ自然公園」

ここは海岸に沿って200キロも大砂丘がつづき、内陸には広大な湖や湿地が広がります。

湿地にはカバがたくさん棲んでいて、夜になると草を食べるため街にまで現れます。

番組でも撮影したのですが、普通の街路を巨大なカバが歩いている姿はシュールな感じでした。

ちなみにカバは意外と早く走ることができて、時速40キロにも及ぶとか。そのスピードの乗った巨体で人を襲うこともあり、カバによって毎年アフリカでは相当な死者が出ているといいます。

イシマンガリソでも夜、カバが出没するあたりは出歩かないように注意喚起がされていました。

シーラカンスの剥製標本

このイシマンガリソ沿岸の海で、「生きた化石」シーラカンスが見つかったのは1938年。博物館の女性学芸員だったラティマーが、地元の漁師が捕った魚の中から、体長1.5メートルほどの見たことのない魚を発見しました。

発見者の名前をとってラティメリア・カルムナエと名付けられたこの魚が、シーラカンスだったのです。

古代魚と呼ばれるシーラカンスが地球に現れたのは約4億年前で、ほぼ姿を変えずに生きてきたとされます。

水深100メートルの深海に棲んでいるため撮影が難しいのですが、その姿を捉えた貴重な映像や剥製を見ると、ヒレが前足のように太く長く、こうしたヒレが足へと進化してやがて陸地を歩く両生類が生まれたと考えられています。

砂漠、火山の大地、そして深海・・・さまざまな生命進化を記録しているアフリカの世界遺産。まさに生命のゆりかごです。

執筆者:TBSテレビ「世界遺産」プロデューサー 堤 慶太