北アフリカの国、エジプト唯一の自然遺産が「ワディ・アル・ヒタン」、日本語で「クジラの谷」です。

首都カイロの南西約150キロの砂漠で、クジラの祖先バシロサウルスの化石がいくつも見つかったのです。

番組「世界遺産」で撮影したのですが、荒涼とした砂漠に長さ20メートル前後の巨大な骨格化石が横たわっていて、とても不思議な光景です。

体長20メートル前後のバシロサウルスの骨格化石

バシロサウルスは約4000万年前の海に暮らしていた生物。実はその頃のクジラの谷は、浅い海だったのです。

そのためクジラ以外にもマングローブやウミガメなどの化石も見つかっています。

バシロサウルスは、現代のクジラと同じように浅い海で繁殖し、子育てをしていたと考えられています。

生まれたばかりのクジラの子どもは泳ぎが下手で、母クジラが海で下から支えて泳ぎや息継ぎのやり方を教えるのです。

クジラの谷の南西に「白砂漠」と呼ばれる地域があるのですが、キノコみたいな形をした白い巨岩が点々としている不思議な景観です。

かつて海だったことを物語る白砂漠

白い巨岩はサンゴや海の生物の死骸が海底に堆積して出来た石灰岩で、それが隆起して地表に現れたのちに風雨に浸食されてキノコ状になりました。

この白砂漠もまた、一帯がかつて海の底だった証拠です。