インバウンド人気で、新たな需要と雇用が生まれるニセコ

新たな需要も出てきている。日本人が英語を学びにニセコに来る「ニセコ留学」。2013年にニセコ留学.comが始めた留学制度で、留学生は寮に住み込みながら、1日8時間程度、ネイティブ講師による英語の授業を受けている。ニセコに来た留学生は「ニセコは外国人の観光客が多いので、実践で使える英語も一歩外に出たら使えるし、常に言っていいほど英語を使える環境」。費用は宿泊費と授業料合わせて、1ヶ月あたり約25万円から。

留学生の数は、2021年は79人だったが、2024年は650人以上になる見込み。
別の留学生は「親にもすぐ時間もないので連絡できたりとか、海外留学に行くよりも安く来れたりだとか、そういう点が良い点」。

ニセコ留学.com 菅原ケイシー氏:
コロナが明けてから海外の方もどんどん増えて問い合わせも増えた。世界中の色々な国から、外国人がたくさん来て公用語が英語になっているのがニセコ。そういう環境は日本人からしても、国内で留学できるという理由になっている。

観光客に沸くニセコ。一方で人手不足が広がっている。倶知安町にあるトリフィートホテル&ポッドニセコでは、12月から3月までの繁忙期を乗り切るため、2023年の夏から複数の派遣会社にアルバイト募集を依頼し、20人の派遣スタッフを集めた。岐阜から来た3ヶ月間の短期アルバイトとして働く女性は「地元(岐阜)の時給とは400円くらい違う。同じ時間働いても500円とか400円の差が出るのはすごい」。このホテルが派遣会社に払っている時給は部署により異なるが、1800円から2000円。短期アルバイトには1日2食付きで、部屋は客室と同じ部屋を提供。さらに、契約満了まで働いたスタッフには達成手当を渡すなど、働きやすい環境作りを心がけた。先ほどのアルバイト女性は「(休みの日は)北海道は美味しい食べ物が多いので、美味しいものを食べに行ったり、旅行に行ったりしています。シャトルバスも出ているので、夜もどこか行くことも、仕事終わりにできる」とも話す。

トリフィートホテル&ポッド ニセコ 髙橋寛支配人:
間違いなく人手不足は起きている。今新幹線の延伸の工事だったり、コロナが明けてインバウンドの方も今の方も当然たくさんの方が来るということはホテル施設としてはたくさんの方を受け入れないといけないので、当然その分、人手の補強が必要になってくる。他の企業・ホテルによっては、折り込みのチラシを投函しているところもありますし、間違いなく他のホテル・企業との取り合いはあるし、まだ続いていくと思う。

ニセコの給仕・接客サービスの有効求人倍率は、全国の3.19倍より高い、3.70倍となっている。それに伴い、賃金も上昇していて、ニセコのアルバイトの時給は2023年12月時点で1552円と、1434円の東京都を上回っている。

スキー場から車で約15分。倶知安駅近くの商店街にあるスポーツ店「Boom Sports」ニセコのアルバイトの時給が上昇したことで、やむを得ず時給を1000円から最大1500円に引き上げた。店を経営する、有限会社ブームの滝口直久代表取締役会長は「倶知安町内には大学や専門学校もない。人手不足の関係で人が集まるか大変だったので、秋から一気に人を増やして時給を上げた」と話す。時給を上げた分は、電気代の節約や、朝の準備作業の人数を減らして、人件費の確保に努めている。

インバウンド効果による物価と賃金の好循環の兆し。

ニセコ東急リゾート 事業戦略部 マネージャー 栗田勲夫氏:
ニセコはこれからの日本の良いモデルケースだと思っている。海外の人たちにたくさん消費行動をとってもらって、日本人は少子高齢化があるので、消費行動に消極的になってる部分は当然あって、そこを補う意味で海外の人たちにはたくさん使ってもらう。それによって日本の働く人たちの賃金が上がる。日本の人たちもたくさんお金を使えるという世界ができることはすごく望ましい世界だと思っている。