行動制限への考えは?「現状では緊急事態宣言などを要請するつもりはない」

―――今回の“第7波”に対して、国は行動制限を行わない意向を示してきました。7月21日、関西の知事らでつくる関西広域連合でも、行動制限を求めない方針で話がまとまっています。一方で、7月21日の厚生労働省のアドバイザリーボード後、脇田隆字座長は「現在の感染状況、今後の被害(主には死者数)の規模を考えると強い行動制限を検討する時期にあるのではというご意見があった」というように述べています。感染者が激増していますが、国に対して緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の要請を行う考えはありますか?
「現状、今後どうなるか未来のことは予測できないので確定的には確かに言えないですけれども、現状においてまん延防止措置や緊急事態宣言を要請するというつもりはないです。じゃあ、これは逆に大丈夫なのかというと、行動制限しないっていうのは大丈夫だというメッセージではなくて、やっぱり感染は明らかに増えているわけですから、基本的な感染対策をしっかりとっていただきたいと思います。ただ、前みたいに、例えば『飲食店をすぐやめてください』『時短をやってください』『社会全体の行動を抑えてください』というのが、はたしてオミクロン株において適切なのかというと、僕は少しそこは違うというふうに思っています。じゃあどうするのという方向性についてなんですけど、僕自身は今のオミクロン株の特性を考えると、重症化リスクが低いと言ったとしても、確かに年代でいくと40代50代とかそれよりもっと若い世代での重症化率や致死率は極めて低いです。もう0%に近いです。ただ、70代80代とか高齢者の方、あるいはもともと要介護度が高い方とか他の病気を患う方が感染すると非常に厳しい状況になってしまう。場合によっては亡くなってしまうと。その人たちにとってはやっぱりリスクが高い。だから方向性とすると、ハイリスクの方や高齢者の方をお守りする、そこに集中した対策をとるべきだと思ってますし、時とすれば、こういったリスクの高い方には行動制限を取っていただくと。自分を守るためにも取っていただくということも重要になってくるんじゃないかと思っています。入院の比率の内訳を見ますと、70%以上が70代以上の高齢者の方です。陽性者全体で70代以上の占める割合は7%ぐらいなんですけども、入院されてる方の占める年代別で分析すると、70代以上の高齢者の方が70%以上ですから、そうなると70代以上の方がより一層気をつけてもらいたいし、そういう方と一緒に生活してる人はより気をつけてもらいたいし、場合によってはそういった層のみなさんに『申し訳ないけどもリスクの高いところは避けてください』という行動制限をお願いすることはあると思っています。ただ、社会全体で、飲食店やめてくださいとか、それは進め方として、このコロナもなくなりませんので、少し違うんじゃないかと。そういう意味では緊急事態宣言とかを要請するということは今の段階ではないです。ただ、緊急事態宣言の中身も変わってきますので、国が言う緊急事態宣言は“こういうことだ”というのであれば、僕も賛同したらやるかもしれません。今みたいに飲食店だけ時短やってくださいというのは、それで収まるとも思えないです」
―――これまではリスクが高い人のために全員が行動制限を受けるというやり方だったと思います。今後は飲食店に対する時短とか休業要請というのは、もちろん言い切れないとは思いますが、よほどのことがない限りないという理解でいいんですか?
「はい。よほどのことがない限りそれは要請はしません」

(ジャーナリスト 立岩陽一郎さん)「『よほど』というのは何なのかというところは非常に答えづらいと思いますが、例えば数値的に何かあるのでしょうか?」
「将来の予測がなかなか難しいのでよほどのことがないとと申し上げましたけども、基本的に僕は、例えば飲食店の時短だけを要請してそれでオミクロンが収まるとは思わないですし、それをすることは基本的にはもうないです。ただそういった場面に70代以上の方が行くのはやめてくださいとかっていうのはあり得ます。要請という意味で。今後さらに赤信号になってくるか、あるいは収まってくるかわからないですけれども、状況において当然判断をしていくことになります。今後の大きな方向性として、もちろん高齢者やハイリスクの人を守るために社会全体を全部ストップさせるんだっていうのはこれまでやってきました。これまでデルタ株のときは若い年代の人も含めて自宅でお亡くなりになるとか、肺炎が厳しくなる、コロナ肺炎でお亡くなりになることがありましたが、これは本当にかなり減ってきています。ワクチンが広がってきて、ワクチンはもう余っているような状態にもなっていると。治療法も一定できてきたという中で考えるときに、やはり若い世代・現役世代は生活もあるわけですから、仕事は感染対策を取りながらしっかり活動してもらうと。ただ、70代80代、このあたりの方や持病のある方はリスクが高いですから、こういった方はちょっと申し訳ないけど、感染拡大期間中には、そういったところに近づくのはある意味要請としてやめていただいてお守りするということが非常に重要になってくるんじゃないかなと思っています」
(立岩陽一郎さん)「もう1つ質問ですが、知事の権限がやっぱり全然変わってないじゃないですか。例えば、隔離期間については知事が必要ないとまで言っている。だけど知事の判断で、例えば『大阪府内ではやめようよ』ということができないわけじゃないですか。私はこれは変えた方がいいと思っているのですが、吉村知事はどうお考えですか?」
「知事の権限は、本当におっしゃる通り、ほとんど国が一律決めるというような法律になっています。措置内容についても特別措置法でそれに基づいて知事が判断を決めると。特別措置法上の基本的対処方針は国で決めることになってる。だからほとんど国が決めたことを知事が後追いするようなものが基本的なルールになっている。やっぱり都道府県で全然状況が違いますので、大阪のように大都市で高齢者も多く、高齢者施設の数っていうのは3700で東京の3100より多いわけですから非常にリスクの高い施設も多い。都市部である大阪とそうじゃないエリア、あるいは沖縄もいま非常に厳しいと言われていますが、非常に観光客が多いエリアなど様々違うので、それぞれの知事が判断しやすいような、決定権を持った仕組みにしていくべきだと思います。濃厚接触者だって今は国が決めないと変えられませんから、それを変えてもらいたいなと思いますね」
―――知事の権限が限定されている中でも、吉村知事は例えばこれまでの波の中で言うと、国に対して緊急事態宣言の要請を求めたり、時には解除要請も求めたりしました。そういう意味で言うと、ちょっと最近はトーンダウンというか、国との距離みたいなものを感じますが、このあたりはいかがですか?
「いや、特に距離はあるわけではありませんので、これは府民を守るというのが知事の最も大切な仕事ですので、必要な判断であればいくらでもやっていくというのが知事の仕事だと思っています。このオミクロンが出てきてからずいぶん変わってきているというところもあるので。もう1つ、行動制限しなくていいよというような言い方を国もするわけですけど、医療の現場はどうなってんのっていうと、やっぱりそこはひっ迫してるわけです。ここがひっ迫してくると、医療をなかなか受けにくい人も出てくると。そこのデメリットのところもちゃんと言わなきゃいかんと僕は思ってます。例えば今、小児は結構厳しい状況になっているんです、発熱外来も含めて。なのでそういうデメリットの部分をちゃんと言った上で『こっちの方向性でいこうよ』というのをしっかり言っていく必要があると思っています」
―――そこは総理が変わったことは関係なくこれからも同じ姿勢で国にはアクセスしていくということですか?
「もちろんです」














