濃厚接触者について「症状も出ていない人を自宅に拘束するというのはデメリットの方が大きい」

 ―――保健所が以前のように濃厚接触者を全員把握していくという積極的な疫学調査を今やってないという話ですが、そんな中で7月22日、濃厚接触者の待機期間の短縮が決定されました。これまで濃厚接触者の待機というのは、最終接触日を0日として、そこから7日間待機、8日目解除。もちろん症状がないというのが前提です。しかし、これが今後は、5日間の待機で基本的には解除。しかも2日目・3日目に検査で陰性が続けば3日目で解除と、こういう運用に変わっていくということが国の方針として示されました。待機期間「基本5日」についてどう思われますか?
 「まず濃厚接触者については、僕はこの待機期間はもう廃止すべきだと思っています。これは僕だけの考え方ではなくて、濃厚接触者についてどうあるべきかということの議論を大阪府で専門家も含めてオープンの会議でやりました。そこで6月に方針決定したのは、この濃厚接触者については自宅で待機隔離、これはもうやめようと、そうすべきだという判断をしました。そして国に対して要請をしております。濃厚接触者は確かに、待機してもらった方が感染の広がりが減るんじゃないかという方はもちろんいらっしゃいます。もちろんその可能性はあります。濃厚接触者だって実は感染している可能性もあるじゃないか、あるいは、無症状でもうつす可能性があるじゃないか、だからこの隔離期間を持っていると。それは1つ道理ではありますが、もう1つ考えなきゃいけないのが、濃厚接触者って陽性ではないんです。そして検査をしてもこれ陽性になってない、症状も出てない人を本当に自宅で隔離する必要があるのか。それをすることによってどういうことが起きるかというと、例えば、医療機関で働けなくなってしまう、働きたくても働けない。今、そもそも医療機関がひっ迫していますから、さらに加えて医療従事者の方も感染が広がると、それは陽性になることもあると。そうすると、医療従事者の方がその医療機関で仕事をすることもできなくなる。濃厚接触者もできないとなると、どんどんワニの口が広がるようにですね、医療のひっ迫がさらに強くなってきます。これは医療の世界だけじゃなくて、様々な社会インフラ、様々な機能、保健所・保育所等も含めて、いろんな社会の現場において、これだけ感染が広がっている中で、陽性でもない、また症状も出ていない人を自宅に拘束するというのはデメリットの方が大きいというのが我々の判断です。僕も濃厚接触者になったんですけど、娘が陽性になって。僕は陽性にはならず、そのほかの家族も陽性にはなりませんでした。もちろん、陽性になる家庭もいらっしゃいます。その中で、濃厚接触者って自分で濃厚接触者ってわかっているんです、やっぱり。だからそこはマスクをしたり、あるいは基本的な感染対策をとって業務に従事するという。気をつけて仕事・社会で必要な活動をするということは重要だと思うんです。医療機関であれば、例えば朝に検査をして、濃厚接触者だったとしても症状もないし検査しても陰性なのであれば、そこで活動するとか、そういったルールにしないと社会がもたないと思いますから、僕は濃厚接触者については、隔離・自宅待機は廃止すべきだと思います。それを6月17日の段階で国に対して要望をしています」

 ―――一方、医師で公衆衛生に詳しい関西福祉大学の勝田吉彰教授は、やはり変異株が今後どうなってくるかわからないと。ウイルスは今後も変異するため病原性が高くなる可能性もあり、待機期間5日は妥当だという専門家の意見もあります。国の「濃厚接触者の待機期間短縮」という判断について、第7波の入り口といえるこのタイミングで決定されたことに関してはどんなことを思われますか?
 「できれば、この波が来る前に判断をした方がいいというふうには思いますけれども、結果論で言っても仕方がないのであれですが、やはり、医療従事者に対してのワクチン4回目接種のこともそうですけれども、できるだけ波が来る前の判断というのが重要だと思っています。ただ、それでも7日間の待機より5日間の待機に短くしている、その理由はやっぱり社会が成り立たない、医療機関も成り立たない、様々な社会インフラが成り立たない、だから短くしようということなので、基本的には僕この考え方には賛成です。ただ、諸外国で濃厚接触者で隔離してるようなところはもうほぼないですから。陽性者でもないとなると、やっぱり濃厚接触者は気をつけて社会の一員として活動するというふうにした方が僕はいいと思っています」