「犠牲になったところが、犠牲のままでいいのか」

除染で取り除かれた放射性物質を含む大量の土の処理も課題となっている。
福島県内で出た土はいま、双葉町と大熊町にまたがる中間貯蔵施設に集められている。その中間貯蔵施設を取材した。

福島地方環境事務所 服部弘 中間貯蔵総括課長
「あそこは土壌貯蔵施設と呼んでおりまして、あの中に除染で出た土が大量に保管されている」
集められた土は、現在きれいに整備され放射性物質が出ないよう新たな土が被せられている。その上に登ってみると…

――しかし、大きい。どのぐらいの大きさって言ったらいいんですかね
服部弘 中間貯蔵総括課長
「これは野球場以上大きいですかね」
――野球場より大きいですよね
「全体的には線量は下がってきている。安定的に管理ができているっていうところはですね、多くの人に知っていただきたい」

施設に運び込まれた土は、東京ドームのおよそ10個分に相当する。
この土は2045年までに、福島県外に持ち出すことが法律で決められているが、本当にできるのだろうか。

服部弘 中間貯蔵総括課長
「私も直接地権者の皆さんと接する機会がありますので、皆様の思いがあるという中で、やっぱり、県外最終処分というところにつきましては、国と地元の約束になりますので、それはしっかり守っていかなければいけない」
原発事故後も、さらなる重荷を背負う現実。双葉町の伊澤町長は…

双葉町 伊澤史朗 町長
「原子力災害っていうのは、自分の思いとは違うということですよね。戻りたいと思っても、これはちゃんと放射線の安全性を確認できる。その条件をクリアしなければ戻れない」
――この前も能登の地震では、"あわや"ということも考えられたわけですよね
「一番先にやっぱり考えるのは、やっぱり我々はそこですよね。福島第1原子力発電所のこの大災害っていうのは、これ絶対あってはならないことが今現実にあったわけです。この災害って何なんですかって、いつも私も自問自答するんですけども、これはやはり日本のエネルギー政策だと思ってます。そういったものに犠牲になったところが、犠牲のままでいいんですか?っていうのはやっぱり常に問いたいですよね」

中間貯蔵施設になった場所には、もともと900世帯が生活していた。だが国の要請で住民らは、土地を手放さざるを得なかった。鵜沼さんもその一人だ。

――この中間貯蔵施設もすごいな、作らなくてもいいものですよね、元々
鵜沼久江さん
「いっぱい建ったのが怖いなって。見るたびに増えて。でもやっぱり私は、原発避難者だから、原発があるのが一番怖い。こんなに13年たっても、まだ何もできていないっていう現実があるので」