福島県南相馬市で家族で漁をする遠藤さん。祖父に憧れ漁師を目指したが、その祖父は津波で亡くなってしまった。船も壊れ夢を一度は諦めたもののカッコいい祖父の姿が忘れられず再び漁師の道を目指した。

丸々と太ったトラフグや、活きのいいヒラメ。父親とともに漁をするのは遠藤文也さん(29)です。

「網を引くのがうめぇな」小学生のとき、そう言ってほめてくれた祖父・直さんは、もういません。

真野川漁港の漁師 遠藤文也さん
「おじいちゃん頼りがいがあって。高校を卒業したら、おじいちゃんの船に乗ると思っていたので、絶対それは揺らぐことがなかった。絶対そういう未来だっただろうなと思っていたので」

面倒見が良く、漁師仲間から親しみを込めて“ただしじぃ”の愛称で呼ばれていた祖父はあの日…

真野川漁港の漁師 遠藤文也さん
「(祖父に)一緒に逃げようって言ったけど、俺は船の方、見たりするから、いいから行けみたいな」

漁師の命ともいえる「船」を逃がすため港に向かいました。そして、津波に飲み込まれ、祖父(当時70)は亡くなりました。残ったのは、無残に破壊された船。

真野川漁港の漁師 遠藤文也さん
「小さいころから自分が乗る船って思っていて、真っ二つというか壊れていたので、自分の夢がなくなったなと」

さらに追い打ちをかけるように、原発事故が起きました。文也さんは漁師の夢をあきらめました。それから4年が経ったころでした。介護士の勉強をしていた文也さんに、父親が意外な提案をします。

『新しい船を作りたい。一緒に漁師をやらないか?』

文也さんの父 遠藤文弘さん(57)
「(船を)新造するのにも後継者がいないとダメだった。遠藤家で明神丸で代々続いているから、俺の代で終わるんじゃなくて息子に託せる」

文也さんは悩みました。原発事故の影響が続いているからです。

真野川漁港の漁師 遠藤文也さん
「原発とかでの風評被害。マイナスのイメージが強いので」

それでも、仲間に慕われ、自分をほめてくれた、あの「ただしじぃ」のようになりたい。そんな思いが勝りました。

真野川漁港 遠藤文也さん
「おじいちゃんが船に乗っている姿、カッコいいなって。受け継いで自分が船を動かして魚が獲りたい」

父と一緒に船に乗るようになって、まもなく10年。去年から原発処理水の海洋放出が始まり、風評被害が懸念されますが、文也さんは「ただしじぃ」のような漁師になるという夢を追い続けます。

この日の漁では、ちょっとうれしい出来事が。幸運を運ぶ「海の守り神」とされるウミガメです。

真野川漁港の漁師 遠藤文也さん
「今はまず、色んなベテランの人たちの知恵、今まで培っていた経験とかを教えてもらって、復興させていきたいとか福島のブランドを取り戻していきたい」

“福島の漁業の未来のためにも「ただしじぃ」のようになる”今年30歳になる文也さんの決意です。