■世界陸上オレゴン・最終日(日本時間24~25日・米オレゴン州ユージーン)
25日に大会最終日を迎えた世界陸上は、新種目となる男子35km競歩が行われ、日本からは初出場の川野将虎(23)、5年ぶりに日の丸を背負う松永大介(27)、2大会連続代表の野田明宏(26)の3選手が出場。今季世界ランク1位の川野が銀メダルを獲得した。ゴール直前でイタリアのM.スタノとデッドヒートを繰り広げたが、金メダルまではわずか1秒差の2位。2時間23分15秒のアジア新記録をマークしたが、悔しさに拳をたたきつけた。野田は9位で惜しくも入賞に届かず、松永は26位。
これまで実施されていた50km競歩が35kmへ距離を変更して初めてとなる世界陸上。レースはスタート前、気温が13度を下回る好条件の中行われた。序盤は日本の松永が抜け出し、2位集団と距離を広げていった。松永は14年世界ジュニアで優勝、リオ五輪(20km競歩)で7位入賞と世界の舞台で結果を残しており、沿道からの関係者の声に応える余裕もみせながら、独歩状態が続いた。
徐々に日差しが強くなってくると、松永は14.5km付近で給水所にいるコーチに帽子を要求。さらに「氷、入れてください」と声をかけるなど、一転暑さとの戦いを強いられた。松永は持ち味の積極的なレース展開で、15km地点では2位集団と52秒差。川野はその2位集団で互いを牽制しあいながら、野田はその後ろの10位グループで通過した。
20km手前、松永は沿道に立つ看板に足を取られバランスを崩す場面も。次第にペースを落とした松永は、20km地点で2位集団との差が7秒に。20.7kmで集団に吸収されると、21kmの給水所付近ではトップ集団から離れてしまった。22km地点は川野が先頭集団で通過、松永は野田に追い越され12位に後退した。気温はスタート地点から10度上昇し、23度となっていた。先頭集団は7人に絞られ、川野もしっかりとついていった。
気温は30度を超えていく中、残り3kmでメダル争いは3人に絞られた。川野は先頭をいく東京五輪20km競歩金メダルのM.スタノ(30)の後ろに付き、ラストの勝負へ。世界競歩金メダルのP.カルストローム(スウェーデン)が遅れると残り2kmでスタノとの一騎打ちになった。ゴールまで700mで帽子をとった川野は懸命に腕を振った。歯を食いしばり声をあげながら必死で喰らいつくも、最後はスタノに振り切られ、倒れ込むようにゴールした。
初代王者までわずか1秒届かず拳を地面にたたき付け悔しさをあらわにしたが、その後は笑顔でお互いを称えた。
野田は入賞まであと一歩の9位、序盤レースを引っ張った松永は26位だった。
レース後、川野は「去年の東京五輪、世界競歩選手権で叶わなかったメダルっていうのを今回獲得できました。今年1月から貧血の症状で中々、思うように練習できず、この大会を諦めかけた日も多かったんですけど、多くの人の支えがあってこの舞台に立つことが出来ました」と感謝のコメント。最後の一騎打ちについては「スタノ選手は去年、東京五輪で池田(向希)が惜しくも敗れてしまった選手で、今度は勝って勇気づけてあげたいという気持ちでいたんですけども」と悔やんだ。
さらに日本競歩界の躍進について「今の結果は、これまで伝統をつないでくださった先輩方が、昔は自分で何もかも準備して遠征を行うなどの苦労があって今の自分たちがあると思っています」とし、「今回、本当にメダルっていう大きな目標を叶えたんですけど、まだ金メダルは取れていませんし、未熟な点が多くここから鍛える部分があるので安心せずに次の世界陸上、パリ五輪に向けて、精一杯、頑張っていきたい」とさらなる目標に向け意気込んだ。
【男子35km競歩結果】
金メダル M.スタノ(イタリア)2時間23分14
銀メダル 川野将虎 2時間23分15※アジア記録
銅メダル P.カルストローム(スウェーデン)2時間23分44
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9位 野田明宏 2時間25分29
26位 松永大介2時間33分56
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