■最終日の決勝種目と日本選手出場予定
(日本時間24日)
22:15【男子35km競歩決勝】川野将虎、松永大介、野田明宏

(日本時間25日)
9:05【女子100mハードル準決勝】福部真子、青木益未
9:25【男子棒高跳決勝】
9:50【女子走幅跳決勝】
10:05【男子5000m決勝】
10:35【女子800m決勝】
11:00【女子100mハードル決勝】
11:20【男子十種競技1500m】
11:35【男子4×400mリレー決勝】日本
11:50【女子4×400mリレー決勝】


最終日で日本選手がメダル候補に挙げられている種目は男子35km競歩だ。エントリーした選手のシーズンベストでは2時間26分40秒の川野将虎(23・旭化成)、2時間27分09秒の松永大介(27・富士通)、2時間27分18秒の野田明宏(26・自衛隊体育学校)の3人が1~3位を占める。

35km競歩は新設種目で、昨年の東京五輪までは50km競歩が行われていた。その東京五輪で6位に入賞したのが川野である。41kmで倒れ込んでおう吐したにもかかわらず、すぐに起き上がって前を追った姿勢には「最後まで絶対にあきらめない」という強い意思が感じられた。

50km競歩は15年世界陸上で谷井孝行が競歩初メダルを取るなど、日本の競歩を牽引してきた種目。その伝統を50km競歩から35km競歩へとつなぐ役割も川野は自負している。新種目として行われる今大会でも先頭集団でレース終盤まで勝負に加わるだろう。

20km競歩銀メダルの池田向希(24・旭化成)とは同学年で、東洋大時代から酒井瑞穂コーチの指導を受け、種目は異なるが切磋琢磨している。東京五輪後に一時期極度の貧血になったが、練習への影響を最小限にとどめた。3月の世界競歩チーム選手権35km競歩は万全の状態で臨めなかったが、2時間37分27秒で4位に入った。そして4月の日本選手権35km競歩に今季世界最高で優勝し、世界と戦う準備を整えた。

代表選考を兼ねた日本選手権(左から)川野選手・松永選手
松永は16年リオ五輪20km競歩で7位に入賞したスピードがある。20km競歩の記録は川野の方が22秒上だが国際大会で実績を残している点は大きい。スピードの上げ下げを操る能力が高く、4月の日本選手権では、20km地点では2位を1分半以上引き離して独歩していた。31kmで川野に逆転されたが、ペース配分のコツをつかんでいれば最後までペースダウンを最小限にできる。

野田は50km競歩で初めて3時間40分を破った選手。3位に入った日本選手権では20km競歩のスピードの重要性を理解するのと同時に、終盤で一気に差を詰める展開も経験し、50km競歩の持久力が生きるシーンもあると話していた。課題の歩型で注意が多く出なければ、持ち味の積極性をオレゴンでも発揮できる。

だがメダル候補は他国にも数多くいる。

昨年の東京五輪20km競歩金メダルのM.スタノ(30・イタリア)は35km競歩に種目を絞ってきた。世界競歩チーム選手権35km競歩で優勝したP.カールストロム(32・スウェーデン)は、今大会の20kmで銅メダルを獲得したばかり。15年世界陸上北京大会のM.A.ロペス(34・スペイン)、17年世界陸上ロンドン大会のE.アレバロ(29・コロンビア)と、両大会の20km競歩金メダリストも参入してくる。

他にも20km競歩の実績ある選手が多く参加するので、日本がメダルを取れない可能性もある。

ペースを予想するのは難しい。35km競歩は新設種目ということで、どの選手も明確なデータを持っていない。手探り状態でスローペースになる可能性もある。互いに様子を見ながら集団で進むようだと、大胆なレース展開ができる松永が飛び出す可能性がある。

松永は近年代表になっていないため、マークが弱くなる可能性がある。誰もつかなければ一気に独歩状態に持ち込むことも可能だろう。

輪島では優勝した川野の1km平均ペースは4分11秒だったが、先行した松永は10kmまでは分5秒以下のスプリットタイムが8回もあった。31km過ぎに川野に逆転されたが、今後のレースでも積極的な展開をすることに意欲を見せていた。

お互いに様子を見ながら集団で進むのか、松永の飛び出しがあるのか。新種目である35km競歩のレース展開はそのどちらかになるだろう。

日本選手権の野田選手
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)