いよいよ始まる「マースヤー」

比嘉リポーター
「あたりがすっかり暗くなってきました。マースヤー、いよいよ、これから本番を迎えるということなんですが、粟国島で一番長い夜がはじまります」
マースヤーのスタートは、地区によってバラバラ。まずは、一番早い午後6時出発の地区に同行させてもらいました。
マースヤーとは、塩売りのこと。浜集落の前組(めーぐみ)では、塩売りに扮した男性が、口上を述べながら、塩を配ります。
かつて正月に家々で豚をつぶしていた時代、塩は豚肉の保存用として欠かせないものでした。塩売りは、旧正月前の風物詩だったといいます。
伝統行事として100年以上続いているマースヤー。子どもたちが中心となって、地域ごとに伝わる踊りを披露し、新しい年の無病息災と豊穣を祈ります。集落の家々を一晩かけて、一軒一軒回るため、11字(あざ)全ての踊りを見学するのは、容易ではありません。
粟国村観光協会 四方正良さん
「事前に何時にこのお宅というのがない」
耳を澄ませて、音を頼りに、集落内を歩いて探します。

ようやく出会えたのは、巣飼下原(しがんさはる)の皆さん。華やかな衣装が自慢です。一方、少人数ながらも本格的な琉球舞踊を披露していたのは、首里福原(しゅりぶくはる)。そして、子どもの多い伊久保原(いーくぶはる)では、かわいらしい踊りで、お祝いムードを盛り上げます。
夜10時を過ぎたところで、子どもたちがお待ちかねの年越しそばの時間です。

金城もあさん(中3)
「疲れました。でも楽しいです。(マースヤーは)一年の中で、一番でかいイベント。どんな学校行事よりもでかいイベントで、夜中まで踊ったりするので、楽しい」
新川博敏さん(40)
「小さい時はすごく大変で、もう帰りたいよと言いながら踊っていた。大人があと2軒だから3軒だからって言ってずっと続くんですよ。来年はやりたくないと思うんですけど、年末になってくると気持ちがちょっとワサワサしてくる」
旧暦の大晦日から元旦にかけておこなわれる伝統行事マースヤー。粟国島でいちばん長い夜におじゃますると、旧正月を楽しみに思う子ども達の、とっておきの思い出の風景に出会いました。