ロシアによる侵攻開始からあすで2年。ウクライナでは兵士不足が深刻となるなか、徴兵から逃れようとする人が増えるなど課題が浮き彫りとなっています。

これは徴兵担当者が街中で男性に声をかけ、動員しようとしているとされる映像です。嫌がる男性を車に乗せようとしています。

こうした動画がSNSで拡散し、ウクライナ政府は動員の方法が強引だとして非難を浴びましたが、一方で兵士不足の深刻さを物語っています。

ウクライナ ゼレンスキー大統領(去年12月)
「軍が45万人から50万人の追加動員を要請した」

「兵士の確保」が必要とされるなか、問題となっているのが違法な手段で動員を逃れる「徴兵逃れ」です。

ウクライナでは総動員令により、18歳から60歳の男性は原則、出国が禁止されていますが、国外に出ようとする男性が後を絶ちません。ウクライナ語の検索サイトに「国外脱出」「男性」と入力すると…

「6つ見つかりました」

あらわれたのは“合法に出国すること”などをうたうサイトです。そのうちの1つに電話をかけ、「夫が徴兵を逃れるため、国外に出る方法はないか」と架空の相談をしました。すると…

「出国斡旋」業者
「(お子さんは)10か月ですか。親権喪失の決定を得られれば、あなたの夫は国境を越えられます」

提案されたのは「母親の親権を失わせる」というもの。総動員令では子どもを1人で育てる男性は対象外で、動員を免除されるのです。

「出国斡旋」業者
「全て合法であることを保証します」

費用は3000ドル、およそ45万円と告げられました。こうした“徴兵逃れ”、前線の兵士はどう受け止めているのでしょうか。侵攻開始から2日後に兵士に志願したというイワンさん(33)に聞きました。

ウクライナ兵 イワンさん
「最前線にいると多くの仲間の死を目の当たりにし、心を閉じてしまう。恐怖で人がどうなるかを知っているので、(徴兵逃れが)良いとも悪いとも言えません。誰もが生きたいのです」

イワンさんは戦闘中に頭を打った後遺症で記憶力が低下してしまいました。DJをするほど大好きだった音楽を聞いても楽しめません。それでも、こう決意を新たにしています。

ウクライナ兵 イワンさん
「100%戦争が終わるまで兵士であり続けます。何があっても意志は変わりません」

終わりの見えない戦いにウクライナの人たちは疲弊しながらも挑み続けています。

戦闘の長期化を、市民はどのように受け止めているのでしょうか。ウクライナから中継です。

ウクライナ南部の要衝オデーサです。侵攻開始後、ロシア軍よる攻撃に度々さらされていて、きのう夜も海沿いの建物がドローン攻撃を受けて死者が出る一方、市民は生活を続けています。

今回、戦闘の長期化で多くの兵士が必要とされることについて、様々な立場の人に話を聞きました。

「兵士として戦いたい」それでも「命は失いたくない、失わせたくない」という人。両足を失っても、「命が助かったのならそれで十分だ」と話す元兵士やその家族。VTRに登場した兵士のイワンさんは、かつては子どもは欲しくなかったけれども、戦闘に参加するようになってからは「子どもが欲しい」「生きた証を残したい」と思うようになったと語っていました。

最新の世論調査では、ロシアに対して7割以上の人が「領土を譲歩すべきではない」と答え、依然として多くの人が“徹底抗戦”を支持しているわけですが、一方で、自分や家族の「命」や「死」と向き合い、その狭間に苦しんでいます。

侵攻開始から2年。日常に近い生活を送っているように見える人でも、心の奥に不安やストレスが澱のように溜まっていく。その状況から抜け出せるよう、終戦を願ってやまない。市民はそう訴えています。