将棋の藤井聡太八冠と伊藤匠七段が対峙する棋王戦が24日、金沢市で行われます。その対局に提供される駒が能登半島地震で倒壊した家屋から見つかりました。提供を決めた持ち主の男性の思いとは。

塩井一仁さん
「1階が潰れて降りてきた。4畳半の畳コーナーがあって、その辺りが妻が亡くなった場所」

この家に住んでいた塩井一仁さん(63)。塩井さんの妻・紀美子さんは、元日の地震で自宅の下敷きとなり、亡くなりました。

塩井一仁さん
「大きな声で妻を呼びますが、返事はなく。近寄ってまた声をかけるが、返事はない。大事な家族が地震によって亡くなってしまったので、一から積み上げていく気力が湧いてこない」

紀美子さんの火葬が終わった翌日の先月22日。塩井さんが自宅のがれきの中から見つけたのは、愛用の将棋の駒でした。

塩井一仁さん
「この状態で駒が入っていて、梱包材で覆って自宅に保管されていた。完璧に見つけることができた」

将棋愛好家で「盛り上げ駒」と呼ばれる、プロ棋士の対局で使われる最高級の駒を複数所有する塩井さん。2009年から、金沢で行われる対局には塩井さんの将棋盤と駒が使われてきました。

今回、無傷で見つかった駒も、今月24日に行われる藤井聡太八冠と伊藤匠七段の棋王戦でも使われる予定だといいます。しかし、いつも通り提供することに迷いもありました。

塩井一仁さん
「悲しいことがあったので、今年は提供は考えられないなと。やめておこうと思っていた。思っていたが、妻は私が将棋に熱中することを好意的に思ってくれていたのかなと思い直して、棋王戦への盤駒提供を今年もやらせていただこうかなと」

妻に背中を押された塩井さん。将棋盤と駒は、対局前日の今月23日に検分が行われたあと、対局に使用される予定です。

塩井一仁さん
「最前線の力強い将棋が見られると思うので、その対局をぜひ、盤と駒で彩ってほしい。みなさんが元気になる、復興の契機になれば」