初防衛を目指す藤井聡太八冠と伊藤匠七段が対峙する将棋の棋王戦5番勝負の第2局。2月24日、金沢市で行われるその対局に提供される駒が、石川県珠洲市の被災した家屋から見つけ出されました。思い悩んだ男性の背中を押したのは妻との思い出でした。

塩井一仁さん
「1階が潰れて降りてきたというところです。4畳半の畳コーナーがありまして、その辺りが妻が亡くなった場所になります」

この家に住んでいた塩井一仁さん。塩井さんの妻・紀美子さんは、元日の地震で自宅の下敷きとなり亡くなりました。

塩井一仁さん
「大きな声で妻を呼びますが返事はなく、近寄って声をかけますが返事はない。大事な家族が地震によって亡くなるということになってしまったので、1から積み上げていくことも気力が湧いてきませんね」

紀美子さんの火葬が終わった翌日の先月22日。塩井さんが自宅の瓦礫の中から見つけたのは愛用の将棋の駒でした。

塩井一仁さん
「この状態に駒が入っていて、梱包材でこれを覆ってこの箱に入れた。自宅に保管されていたので。完璧に見つけることができた」

将棋愛好家で盛り上げ駒と呼ばれるプロ棋士の対局で使われる最高級の駒を複数所有する塩井さん。2009年から金沢で行われる対局には、塩井さんの将棋盤と駒が使われて来ました。

今回無傷で見つかった駒も、今月24日に行われる藤井聡太八冠と伊藤匠七段の棋王戦でも使われる予定だといいます。しかし、いつも通り提供することに迷いもありました。

塩井一仁さん
「悲しいことがあったので今年は提供は考えられないなと。やめておこうと思っていました。思ってましたが、妻は私の将棋に熱中することを好意的に思ってくれていたのかなと思い直して、棋王戦への盤駒提供を今年もやらせていただこうかなと」

妻に背中を押された塩井さん。将棋盤と駒は、対局前日の2月23日に検分が行われた後、対局に使用される予定です。

塩井一仁さん
「最前線の力強い対局が見られると思うので、その対局をぜひ盤と駒で彩ってほしい。みなさんがげ元気になる、復興の契機になればと」