(ブルームバーグ):トランプ米大統領は29日、AIシステムの安全性評価に外部監査機関を活用することを支持した。AIのリスクに対する懸念が急速に高まる中、シリコンバレーの有力者との合意を通じ、新たな政府規制を導入せずに対応することを目指す。
この合意は29日、ホワイトハウスで開かれた昼食会で、テクノロジー業界の有力幹部約20人との間でまとめられた。合意に基づき、AI企業は定期的に会合を開き、業界のベストプラクティス(最良の運用基準)を策定することも約束した。この文書に法的拘束力はないが、トランプ氏は記者団に「道義的な拘束力がある」と述べた。
「ある意味、憲法のようなものだ」とトランプ氏はイベント後、ホワイトハウスの車寄せで記者団に発言。「世界で最も影響力のある人々が署名し、私も大統領として署名した。これはまさに一種の保護になる」と語った。
AIがもたらす可能性にある壊滅的なリスクへの懸念が世界的に高まる中、トランプ氏と出席者が約2時間にわたって会談後、この合意はまとまった。署名者には、AI業界を代表する開発企業のトップであるアンソロピックのダリオ・アモデイ最高経営責任者(CEO)、エヌビディアのジェンスン・フアンCEO、スペースXAIのイーロン・マスク氏を含む。
トランプ氏が自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に投稿した文書の写しによると、他にもOpenAIのグレッグ・ブロックマン社長、メタ・プラットフォームズのマーク・ザッカーバーグCEO、グーグルの親会社アルファベットのスンダー・ピチャイCEOが署名した。アンソロピックやオープンAIを含む複数の企業はこれまでに、独立した評価機関による検証を受けることを約束している。
トランプ氏はこれまで破滅的な事態への懸念を「でっち上げ」と退けていたが、今回、安全性を巡る議論に応じる姿勢を示した。これは、11月の中間選挙を前にAIが政治的な争点としての色合いを強めていることを反映している。
トランプ氏は制約のないAI開発を最も強く支持する人物の1人となっており、AI技術に懐疑的な有権者との間に隔たりが生じている。キニピアック大学の最新世論調査によると、有権者の10人に7人余りが、AIに一段と厳格な安全策を設けることを支持する候補者を好むと回答した。
AIのリスクに対する社会の懸念は、制御を逸脱したOpenAIなどのAIエージェントの「暴走」によるハッキングが相次いだことで強まっている。この中にはオーストラリア政府のウェブサイトを標的とした事例もある。さらに、AI企業の元従業員らは最近、この技術が人類の存続を脅かすと警告している。
今回の合意でも、AI企業が自らを監督する責任を負うという、トランプ政権の従来の主張は維持された。一方、文書は一定の安全策を受け入れる新たな姿勢も示した。AI企業は4段階の管理措置を導入「すべき」とし、将来的には勧告内容を法律や規制として「明文化することが理にかなう可能性がある」と記した。
第三者評価機関の活用を受け入れたことは、AIの安全性に対する政権の姿勢の転換を示している。AI業界は最先端モデルの検証に独立した評価機関を活用するよう強く求めてきた。一方、トランプ政権当局者は、こうした審査に最も適しているとされる団体について、その思想的傾向を理由に懐疑的な見方を示してきた。
トランプ氏の元AI政策責任者で、29日のホワイトハウスでの昼食会にも出席したデービッド・サックス氏は、外部機関による評価を「疑似科学」と切り捨ててきた。それでも、こうした審査を担う可能性がある企業の一部は、米商務省傘下のAI標準・イノベーションセンター(CAISI)とすでに会合を開いている。ブルームバーグ・ニュースが以前報じた。
新たな合意では、独立した評価機関の活用に加え、サイバーセキュリティー、バイオセキュリティー、化学的脅威、AIモデルによる意図しない行動に関連するリスクに対応するため、企業が社内管理体制を整備して安全対策を講じるよう提言している。
また、企業はこうした管理体制を監視する社内チームを設置するとともに、安全性を担当するチームや独立監査を監督するため、取締役会に独立した委員会を設けるべきだとしている。
トランプ氏は経営者らとともにホワイトハウスの車寄せに姿を見せた際、AIの安全性を巡って以前から自身とは大きく異なる立場を取ってきたアモデイ氏に対する態度の変化を示した。同氏が9月、最先端AIの開発ペースを落とす方針を示した際には、トランプ氏がSNSで批判していたが、29日の雰囲気は異なっていた。
トランプ氏はアモデイ氏について「素晴らしい」と述べ、記者団の前に呼び寄せると、同氏に身を寄せながら「気をつけるように」と念を押した。アモデイ氏は27日夜にトランプ氏と非公開の夕食会で会談しており、AI分野で米国の優位を維持するというトランプ氏の呼びかけに賛同する一方、安全性を巡る根本的な問題はなお解決していないとの認識を示唆した。
アモデイ氏は「この技術には現実に非常に大きなリスクがある」と述べた上で、「正しく取り組めば、われわれは勝利し、かつ安全に勝利できる。そのためには全員が協力する必要がある」と話した。その後、トランプ氏が「フェイクニュース」への不満を口にする中、アモデイ氏はカメラの画角から外れた。
原題:Trump Backs Independent AI Audits in Shift of Safety Posture(抜粋)
--取材協力:Josh Wingrove、Hadriana Lowenkron、Meghashyam Mali.
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