(ブルームバーグ):「トルコ版ゴールドマン・サックス」になること。投資銀行・証券会社テラ・グループは、そんな野望を掲げていた。
昨年、グループ傘下テラ・ヤトゥルムの株価は2000%超という驚異的な上昇を記録した。経営陣は事業が急成長していると盛んにアピールし、その言葉を信じる向きもあった。メディアには、大きな飛躍を目前にしていると繰り返し語っていた。
だが、その野望は今月、一気に崩れ去った。トルコの司法相は「ねずみ講的な仕組み」の取り締まりを表明。テラの資産運用部門では約6800億リラ(2兆2000億円)のファンドが清算に追い込まれ、同社幹部の一人が当局に逮捕された。
一連の事態はトルコの金融システムにも衝撃を与えた。株式市場ではサーキットブレーカーが発動し、流動性危機を食い止めるため規制当局も対応を迫られた。
テラ創業者のエムレ・テズメン氏は、「悪名高い邪悪な勢力による投機的な攻撃」の被害に遭ったと主張する。これに対し、同社の運用手法を問題視する向きは、もっと単純な見方をしている。流動性の低い株式を大量に買い、価格を押し上げる戦略は長続きするはずがないというものだ。

ロンドンを拠点とするノース・オブ・サウス・キャピタルのパートナー、カミル・ディミッチ氏は「テラのファンドや関連銘柄は投資家に巨額の含み益をもたらしたが、それが一夜にして消え去った」と指摘。「おそらく、今後の教訓となるだろう」と述べた。
テラは以前から、資産運用事業で巨額のリターンをどう実現しているのか疑問視されてきた。その中核を担ったのが旗艦ファンドだ。2025年初め以降のリターンは1万7000%を超え、ソーシャルメディアでは熱狂的な支持を集めていた。
同ファンドの戦略は、少数の関連企業に集中投資し、借り入れでレバレッジをかけるというものだった。テラ本体や傘下企業のほか、テラの証券部門が上場を支援した企業の株式を多く組み入れていた。開示資料によると、2023年には一時、同ファンド資産の99%をテラ・ヤトゥルム株に投じていた。
「何の問題もない」
業界内で持続可能性を疑問視する声が強まる中でも、テラの勢いは衰えなかった。その原動力の一つが、自らの投資戦略に対する揺るぎない自信だった。それを体現していたのが、強気な発言で知られる創業者テズメン氏だ。
同氏はブルームバーグとのインタビューで、「トルコ版ゴールドマン・サックス」を目指す構想を語っていた。事情に詳しい関係者によると、テズメン氏や幹部らは、シムシェキ財務相を含む政府高官との親密な関係をたびたび誇示していた。テズメン氏は、シムシェキ氏とは長年の付き合いがあり、面会も容易に設定できると話していたという。
関係省庁、テラの担当者はいずれもコメントを控えた。

「私がもうかり、投資家ももうかる。それで国が何を失うというのか」。テズメン氏は別のインタビューでこう語り、「何の問題もない」と言い切っていた。
だが、テラの急速な崩壊はトルコの金融市場にとって大きな問題となった。当局は18日、テラ・ポルトフォイなどが運用する100本余りのファンドの清算を国内大手銀行2行に委ねた。これらのファンドは総額180億ドル(約2兆8200億円)超の資産を抱え、投資家は約35万人に上る。
規制当局の落ち度
テラを巡る疑念は当初、トルコ国内にとどまっていたが、今年に入ると外国投資家からも警戒の声が上がった。投資家グループは異常な取引への対応を当局に要請。MSCIは状況が改善されなければ、トルコ株を新興国株指数から除外する可能性があると警告した。
当局が動いたのは8月だった。流動性の低い株式への集中投資に対する規制を強化したことで、ファンドは保有株の一部売却を迫られ、投資家から解約が殺到。テラのファンドは顧客からの換金要求に応じられないと表明した。多くのトルコ人投資家は資金を引き出せず、保有するファンドを最終的にいくらで換金できるのかも分からない状態にある。
トルコの金融犯罪調査委員会(MASAK)の元副委員長、ラマザン・バシャク氏は「これは規制の失敗だ。当局は無責任にも、人々がこうした人物たちの食い物にされかねない状況を放置した」と批判した。
バシャク氏は、テラを巡る問題を当局に訴えたことで、過去に2度拘束されたと話す。イスタンブールのファンドマネジャーやアナリストの間では、テラについて実名で語ることは暗黙のタブーとなっていた。
テラはもともと、ほとんど無名の証券会社だった。だが、ここ2年ほどで急速に事業を拡大。資産運用部門のテラ・ポルトフォイは、テクノロジーやサイバーセキュリティー企業を買収したほか、銀行やファクタリング会社、不動産会社も傘下に収め、複合企業へと姿を変えた。
イスタンブールの金融会社OMGキャピタル・アドバイザーズのムラト・グルカン最高経営責任者(CEO)は「規制当局には明らかな職務怠慢があった」と指摘。「ねずみ講は自転車と同じだ。走り続けなければ倒れるし、成長し続けなければ破綻する」と語った。
原題:Turkish Fund’s Goldman Dreams Collapse in ‘Ponzi-Like Scheme’(抜粋)
--取材協力:Tugce Ozsoy、Donal Griffin.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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