・中国は、次期5カ年計画で製造強国と質の高い経済成長を目指す。
・製造業強化は順調に進むが、消費拡大といった内需政策が遅れている。
・政府は需要喚起を苦手とし、不均衡な成長モデルの修正に苦戦。

はじめに

中国では、2026年3月開催の全国人民代表大会(日本の国会に相当)で「中華人民共和国国民経済和社会発展第十五箇五年規劃綱要(以下、第15次5カ年計画)」が採択され、同計画が本格始動した。5カ年計画は、経済・社会の運営方針や期間中に達成すべき目標、主要な政策を包括的に盛り込んでおり、中国にとって最も重要な中期計画と位置付けられる。この5カ年計画の目標実現に向けて、単年度の経済・社会計画、個別分野の中期計画などが策定・実施される。もともと社会主義国における5カ年計画は、計画経済の推進に不可欠なツールとみなされていたが、歴史を振り返ると、1970年代までの中国では、政治・社会の混乱により、計画の中断や内容の大幅修正が相次ぎ、計画が期待通りに機能しているとは言い難い状態であった。5カ年計画が定期的に策定され、計画に沿って実施されるようになったのは、改革・開放路線にかじを切った1980年代以降である。

2026 ~ 2030年を対象期間とした第15次5カ年計画は、習近平政権にとって3回目の5カ年計画である。これまでの政権に比べ、習近平総書記(国家主席)は、計画の草案段階から積極的に指示を出していることが特徴である。政権トップへの権力集中が進み、一極体制が確立したこともあって、習近平総書記の個人的な意向が計画に強く反映されるようにもなった。そのため、習近平政権が目指す中国の将来像を考えるうえで、5カ年計画は貴重な判断材料である。

ところが、第15次5カ年計画に関する報道や採択直後に出された日本をはじめとする海外発のレポートは、速報性を優先するあまり、5カ年計画で年平均経済成長率が出されなかったことなど、事実の指摘と簡単な解説にとどまったものが大半であった。習近平政権が第15次5カ年計画を目指す国家像の中でどう位置付けているのか、同計画の実行を通じて何を実現しようとしているのか、といった点に対する踏み込んだ分析や考察は意外と少ない。全人代(日本の国会に相当)直後にイギリスのシンクタンクIISSが公表したレポートはまれな例で、第15次5カ年計画は、科学技術イノベーションによる経済成長を目指すものであり、地方政府の幹部が失敗を恐れて何もしない状況を改善できるかが今後の展開のカギになる、と分析した(Green and Parker[2026])。

このような問題意識に基づき、本稿では、①第15次5カ年計画を通じて中国がどのような国家を目指すのか、②それが2030年の最終年までにどの程度実現するのか、③これらを踏まえ、第16次5カ年計画(2031 ~ 2035年)がどのような内容になると想定されるのか、を中心に考察する。まず、習近平政権にとっての第15次5カ年計画の位置付けを明らかにするため、習近平総書記の思い描く中国の将来像を示すとともに、第13次および第14次5カ年計画からの一連の流れを分析する。続いて、将来の国家像実現という観点から、今回の第15次5カ年計画に盛り込まれた様々な政策を整理し検討する。そして、第15次5カ年計画の主要目標・政策のうち、どの分野が順調に進展しそうか、あるいは計画通り進まないのかを分析し、これに基づき、第16次5カ年計画がどのような内容になるのかについて予測する。

第15次5カ年計画の位置付け

この章では、習近平総書記が思い描く国家像や、習近平政権下で作成された三つの5カ年計画の内容と特徴を比較したうえで、習近平政権にとっての第15次5カ年計画の位置付けを明らかにしたい。

(1)習近平総書記が目指す新しい中国の国家像

まず、三つの5カ年計画(第13次、第14次、第15次)に通底する理念として、習近平総書記が中国をどのような国にしたいと考えているのか概説する。

江沢民(1989 ~ 2002年)、胡錦濤(2002 ~ 2012年)両政権は、共産党設立100周年(2021年)、建国100周年(2049年)までに到達すべき理想の国家像を掲げた。いずれも、2021年までに「小康社会」の全面的な実現、2049年までに富強で現代化された社会主義国家を実現するとしている。小康社会とは、人々が困窮状態から抜け出し、経済面などで多少のゆとりある生活ができる状態を意味しており、1979年に当時の最高実力者鄧小平氏が提唱した。一方、富強で現代化された社会主義国家とは、文化的に洗練され、安定した社会を兼ね備えた理想の国家像が描かれていたが、当時はまだ抽象的な表現にとどまっていた。両政権とも、目標とする期限が近い小康社会の全面的な実現を優先した結果、2049年までに到達すべき国家像の構築や取り組みの検討は後回しになった。

江沢民・胡錦濤両政権の下で小康社会の実現が確実なものとなると、両政権を引き継いだ習近平政権は、いよいよ2049年に実現すべき新しい国家像を打ち出す必要性に迫られることになった。自前の目標を設定し、目標達成に向けて着実に実績を挙げていることを国民にアピールした方が、政権の求心力を高めるには好都合という判断もあったと考えられる。こうした経緯から、2017年の第19回共産党大会において、習近平総書記は中国が中期的に目指すべき国家像を提示した。

そこでは強国を目指す姿勢(以下、強国化路線)が前面に打ち出され、二つの段階を経て、中国を世界の「領先(先頭に立つ)」の地位に押し上げることを最終目標とする戦略が設定された。先頭に立つということは当然ながら、アメリカを追い抜くことを念頭に置いたものである。まず2021 ~ 2035年の第1段階で、経済力や科学技術力を大幅に高め、「社会主義現代化の基本的な実現」という強国になるために不可欠な「現代化」を果たす。続く2036 ~ 2049年の第2段階で、「社会主義現代化強国の全面完成」を目指して様々な取り組みを進め、中国を総合国力と国際影響力(以下、対外影響力)で世界一の強国に押し上げる。総合国力は、経済力や科学技術力、国防といったハードパワーと、文化・教育などのソフトパワーから構成される国家の総合的な実力、と定義できる。対外影響力は、国際貿易や対外資本取引といった経済面だけでなく、政治や文化面など幅広い分野を含む、国際社会におけるプレゼンス、と定義できる。

強国化路線とともに、習近平総書記が目指す中国の国家像の中心を構成するのが、量から質への改革である。これは、従来の量的拡大一辺倒から脱却し、質の向上も重視するという意味合いであり、量の拡大を全面否定するものではない。量から質への改革は、経済・産業分野が中心であり、通常は強国化とセットで実行される。ただし、5カ年計画には強国化路線と質の向上の両立が難しい経済・産業政策が盛り込まれるとともに、経済・産業以外で量から質の転換を図ろうとする分野も含まれる(環境問題などで後述)。

(2)三つの5カ年計画の特徴とその比較

習近平政権下では、第13次、第14次、第15次という三つの5カ年計画が作成されたが、上述の国家像を作り上げるためのロードマップが当然示されているとみることができる。もっとも、小康社会から強国へと一足飛びに実現するのは不可能であり、様々なステップを踏みつつ、最終目標である強国実現に向かっていくものである。したがって、習近平政権下で策定された各5カ年計画には、それぞれ時代背景や達成状況を踏まえた特徴が表れているとみられる。以下ではこの視点に立って、各5カ年計画を概観する。

①第13次5カ年計画(2016 ~ 2020年)

まず、習近平政権下で初めて策定された第13次5カ年計画(2016 ~ 2020年)の時代背景を確認したい。当時、中国の対外環境は、二つの転機を迎えていた。

一つの転機は、胡錦濤政権末期から模索していた「韜光養晦(とうこうようかい)」路線からの脱却である。「韜光養晦」とは、「才能や鋭気を隠し、力をつけるまで時が来るのを待つ」という意味の故事成語であるが、中国の外交方針として使われるようになった契機は1989年の天安門事件であった。当時最高実力者であった鄧小平氏は、天安門事件後の西側諸国からの対中国制裁、さらにはソ連・東欧の崩壊を受け、まずは経済力で西側諸国に追いつくために、当面は「低姿勢」に徹し、西側諸国などと協調姿勢をとるよう江沢民総書記をはじめ、当時の指導部に指示した。そして実際、江沢民・胡錦濤両政権は、この外交方針を堅持してきた。

しかし、リーマン・ショックで西側諸国の経済が大打撃を受けた一方、中国が世界経済の下支えを果たした実績などから、低姿勢をいつまで続けるのか、中国の国際的な地位を高める行動をとるべきである、といった意見が水面下で活発化した。こうした流れを受け、胡錦濤国家主席は2009年7月の在外大使向け会議の席上、「堅持韜光養晦、積極有所作為(韜光養晦を堅持し、為すべきことを為す)」と述べ、協調姿勢は維持しつつも、中国の国力強化や地位向上に資する外交活動を積極的に行うよう、各国駐在の大使たちに指示したのである。もっとも、胡錦濤政権は方針転換の旗を掲げたものの、対外摩擦を引き起こすことを懸念して、「韜光養晦」路線からの転換はなかなか進まなかった。こうした経緯を見てきた習近平総書記は、中国の国際的な地位向上や国力強化を積極的に進め、「韜光養晦」路線からの脱却を目指すという強い意向を政権発足当初より有していたと考えられる。その最初の政策となったのが、2013年に打ち出された一帯一路構想である。

もう一つの転機は、アメリカのオバマ政権による対中戦略の転換である。当時のオバマ政権は、ブッシュ前政権時にテロとの戦いが最優先課題となり、アジアへの関心が低下したことが、南シナ海問題などでの中国の専横な行動につながったとみていた。この見方に基づき、オバマ政権はアジア諸国との連携強化により中国をけん制する外交戦略(「リバランス戦略」)にかじを切った。とくに、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の早期合意に注力し、「世界経済のルール(the rules of the global economy)」の変更を求める中国の動きを封じ込めようとした。これは、アメリカが中国の経済的な自由化を後押しすることで、中国は政治的な自由や民主主義をおのずと求め、アメリカなどと協調的な関係を築き、国際社会で一定の責任と貢献を担うようにもなると想定した、それまでのアメリカの対中関与政策の失敗を事実上認めるものであった。

アメリカ側の対中戦略の転換に対し、習近平政権は、「リバランス戦略」を中国包囲網ととらえ、それへの対抗策を打ち出すようになった。中国側から対決をあおる必要はないものの、アメリカの圧力に対抗可能な対外環境の整備が急務とみたのである。

内政面では、政治局常務委員会のメンバーを中心とする合議制で決める集団指導体制の見直しが進んだ。習近平総書記は、集団指導体制のメリットよりもデメリットの方が大きいと判断していた。デメリットの中でも、迅速な決断ができないことを最も問題視していたとみられる。実際、集団指導体制の江沢民・胡錦濤両政権では、WTO加盟交渉や2012年の薄熙来政治局委員の解任など、最高指導部をはじめとする党内の合意形成に時間がかかり、中国の政治・経済に負の影響が及ぶ事態が相次いだ。そのため習近平氏は、汚職幹部への厳しい処分、地方時代の部下の登用などを通じて、権力の一極集中を進めてきた。もっとも、この時点では、李克強首相をはじめ、最高指導部内にも習近平派とはいえない指導者が多く残っており、習近平総書記への権力集中の過渡期といえた。

このように内外環境が大きく揺れ動いて方向感が定まらなかったこともあって、第13次5カ年計画には強国化路線の萌芽がはっきりと見て取れるものの、いまだ明確な方向性が定まらず暗中模索の段階にとどまった。

第13次5カ年計画の特徴としてまず挙げられるのは、いくつかの分野で強国を目指して取り組む姿勢が鮮明となったことである。胡錦濤政権下で策定された第12次5カ年計画では、人材強国を目指すとしか書かれていなかった。これに対して、第13次5カ年計画では、人材強国に加え、海洋強国、貿易強国など、合わせて約10の分野で強国を目指すとされた。

最も重視されたのは、製造強国である。同計画の第5編第22章の「製造強国戦略の実施」では、中国政府が2015年に公表した「中国製造2025」を示し、その実施に注力すると明言した。この章には、企業の品質管理能力やメーカーとしての高いブランド力を指す「質量強国(品質強国)」の実現に取り組むとしている。さらに、製造技術と情報技術の融合を図るとする点では、第6編で言及された「網絡強国(ネットワーク強国)」、労働力や技術者などが製造業のレベルアップには不可欠という点では、第2編第9章の「人材強国」なども製造強国戦略の一部とみなすことができる。

半面、社会主義文化強国のように、製造業関連以外の分野での強国像は、総じてその内容の具体性を欠いていた。達成時期や水準、最終期限までのロードマップでも、製造強国と、それ以外の強国では違いを指摘できる。製造強国の計画書である「中国製造2025」には、2020年、2025年、2035年といった中間目標が設定され、2035年には製造強国グループの中位、2049年には製造業の主要領域のイノベーションや競争力では世界一、総合面でも先頭集団に、中国を押し上げるという目標を出している。一方、製造強国以外は総じて、5カ年計画の完了期限までに「2049年に向けた基礎を固める」としか、第13次5カ年計画には書かれておらず、ロードマップや到達水準の意味でも曖昧なものが多い。

次に挙げられる第13次5カ年計画の特徴は、経済面などで、質の数値目標設定や取り組みを示すようになったことである。5カ年計画には主要目標数値が掲載されているが、経済発展のカテゴリーに労働生産性(2015年基準のGDP/全就業者)の数値目標が初めて盛り込まれた。経済成長率のような量的拡大だけでなく、経済の質向上を進めたい意向がうかがえる。労働生産性以外でも、生産年齢人口の平均教育年限という目標が新設された。労働者に高等教育を幅広く受けさせるという点では、これも質向上策の一環とみることができる。

最後に、第14次や第15次と比べたときの、第13次5カ年計画の特徴をもう一つ挙げるとすれば、独自色の不十分さである。前述したように、第13次5カ年計画は習近平総書記への権力集中の過渡期に策定・実施された。そのため、一強体制後の公式文献ではお決まりとなった「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想(「習近平思想」が通称として定着)」というフレーズは、同計画には全く登場しない。またこの時点では、「習近平同志を核心とする党中央」ではなく、「習近平同志を総書記とする党中央」という表記にとどまっていた。中国政治において、「総書記」は集団指導体制下の序列一位の意味合いだが、「核心」は他の指導者の上に立つ最高指導者にしか使われず、立場上の重みが全く違う。これらの点から、第13次5カ年計画の時点ではまだ、習近平カラーを十分に浸透させることができなかったと判断できる。

②第14次5カ年計画(2021 ~ 2025年)

続く第14次5カ年計画(2021 ~ 2025年)は、取り巻く環境や目標の内容が前計画の策定時からさらに大きく変化し、習近平政権下における重要な転機となったと考えることができる。

まず、第14次5カ年計画の内容が検討されていた当時の時代背景を振り返ると、対外面では第1次トランプ政権下における米中対立の激化が挙げられる。当初は対中貿易赤字の縮小が最大の焦点となり、首脳会談を含む二国間交渉の結果、中国がアメリカからの航空機や農作物の購入を増やすことなどで2019年末に合意に達し、2020年1月に米中の第1段階の経済・貿易協定の署名に至った。もっとも、この間もアメリカの貿易赤字が高止まりしたこともあり、米中間の貿易不均衡問題はくすぶり続けた。第14次5カ年計画の公表直前の2021年1月、アメリカでは民主党のバイデン政権が発足したが、同政権は第1次トランプ政権下で実施された対中追加関税や輸出管理措置などを基本的に維持した。年1回出される「外国貿易障壁報告書」でも、中国の産業補助金などによる過剰生産能力や技術移転の強要、知的財産権の不十分な保護がアメリカの対中輸出の障壁になっていると批判姿勢を変えなかった。

貿易以外でも、第1次トランプ政権下で米中の対立は激化した。2018年のペンス副大統領の対中政策演説は、中国に対するアメリカ政府の厳しい姿勢を象徴するものであった。中国製造2025は、経済的・軍事的な覇権を握ろうとする動きであると警戒感をあらわにし、その是正を中国に強く迫った。ペンス演説はさらに、中国はアジアやアフリカなどで「借金漬け外交(debt diplomacy)」を展開し、相手国へのインフラ建設向け融資によって影響力を拡大していると主張するなど、対中批判は政治・安全保障、文化など、多岐に及んだ。一連の主張は、アメリカで大統領が交代しても連綿と受け継がれており、党派を超えたコンセンサスとなった。

一方、国内では、前5カ年計画の実施期間中に、習近平一強体制が確立した。まず、2016年10月の第18期中央委員会第6回全体会議後の声明において、習近平総書記は公式に、毛沢東氏や鄧小平氏と並ぶ「核心」と呼ばれた。以降、習近平氏は党中央、さらには共産党全体の「核心」と位置付けられ、他の共産党幹部は核心の下で一体となって行動することが求められるようになった。2017年の第19回共産党大会では党規約が改正され、総書記就任以来の一連の重要発言・演説をまとめた「習近平思想」が、毛沢東思想や鄧小平理論などと並ぶ共産党の行動指針として明記された。指導部人事の面でも、主に江沢民元総書記系列の指導者を退任させる一方、習近平総書記の地方時代の同僚・部下を昇格させ、中央政治局で習近平派が多数派を占めるよう差配した。さらに、2018年の全人代では、憲法を改正し、国家主席の「三選禁止規定」を撤廃した。この改正により、習近平総書記は健康面で問題なければ党や国家のトップの地位にとどまり、長期政権が可能になった。憲法前文に、「習近平思想」が追加され、社会主義現代化強国の実現に向けた指針と定義された。

習近平総書記からすれば、諸問題の解決に向けて自らの構想通りに5カ年計画を策定する環境が第14次5カ年計画前に整ったといえる。

こうした環境変化を受けて作成された第14次5カ年計画の特徴として挙げられるのは、2035年までの強国化路線のゴールをより高い水準に引き上げたことである。2017年の第19回共産党大会の際、習近平総書記は2035年時点で中国を「経済力、科学技術力を飛躍的に向上させ、イノベーション国家の前列の一つ」にすると明言した。一方、第14次5カ年計画は、「経済力、科学技術力、総合国力の飛躍的向上」と、総合国力(経済力、科学技術力、軍事、教育などから構成)が追加された。目指す強国も前計画より増えているが、科技強国を新たに掲げたことがとくに注目される。強国という文言を付けることで、科学技術振興策の優先度を高め、より大きな成果を得たいという意気込みが読み取れる。

量から質への改革が一段と明確化したことも、第14次5カ年計画の特徴の一つである。それを端的に示した例として、成長率目標が挙げられる。従来、GDPの規模と期間中の実質年平均成長率は、中国政府が5カ年計画で最も重視していた目標であり、内外で最も注目を集める数値目標でもあった。ところが、第14次5カ年計画では、「GDPの年平均成長率は合理的な範囲内に維持されるべきであり、経済情勢の変化などに応じて毎年目標を設定」すべきとし、GDPの規模だけでなく、成長率目標も数値で示さなかった。新型コロナのまん延で成長に大きなブレが生じやすい状況にかこつけて、中国政府は、量から質への改革の好機ととらえ、数値目標を出さなかったと推測できる。

代わりに、新たに主要目標として掲げられたのは、労働生産性の向上である。具体的な数値は示されなかったものの、「GDP成長率を上回ること」を労働生産性の目標に掲げた。労働力人口の減少傾向、そして総人口増加率の鈍化を踏まえ、労働投入よりも生産性向上を重視したと考えられる。

習近平一強体制の確立を受けて、習近平思想をよりどころにすることも明確に打ち出された。具体的には、「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想に導かれ」、経済建設などを進め、社会主義現代化国家を実現すると明記した。習近平思想に関する研究と教育を深め、この思想を共産党の理論武装の強化だけでなく、党の考えを国民に宣伝・教育する際に積極的に活用するという方針も打ち出している。また、「習近平強軍思想」に基づき、軍隊の改革を進めるとともに、軍に対する党の指導、国益確保への軍の貢献強化などを図ることも掲げた。

③第15次5カ年計画(2026 ~ 2030年)

2026年3月の全人代で承認された第15次5カ年計画は、前計画作成時に比べて環境が一段と厳しさを増し、不透明性も高まる状況の下で策定された。

対外的には、第2次トランプ政権による対中強硬姿勢の継続である。大統領2期目就任直後の2025年2月、トランプ政権は中国からの違法薬物「フェンタニル」の流入を理由に、中国からの全ての輸入品に対して10%の追加関税を発動した。さらに、中国が追加関税に対抗措置を講じると、アメリカ側も即座に応じた結果、対中追加関税率は一時145%まで引き上げられた。その後、二国間交渉を経て、対中追加関税を10%に引き下げるなどの緩和策が同年11月に実施されたものの、これらはあくまで一時的な棚上げ(2026年11月まで)にとどまっている。先行き、追加関税の再引き上げなど米中貿易摩擦の再燃は、トランプ政権の残り任期中、あるいは次の大統領の下でいつ生じてもおかしくない状況である。また、硬軟を織り交ぜながらも、アメリカ政府は半導体の対中輸出規制など、中国のハイテク分野での台頭を抑える姿勢を基本的に変えていない。

国内では、構造的な経済問題が浮上し、習近平政権は5カ年計画での対応を求められるようになっていた。産業面をみると、地場EVの競争力の向上、産業用ロボットやAI分野での急速な追い上げのように、中国のハイテク製造業の発展は近年著しい。中国政府の産業振興策が後押ししたことは紛れもない事実であろう。その一方、個人消費の回復が進まず、内需低迷とデフレ圧力は一段と深刻なものとなった。実際、2025年末の中央経済工作会議では、「国内の供給過剰と需要不足の矛盾が顕著」との認識が示された。「有効需要の不足が問題」といったこれまでの表現に比べ、足元の需要不足に対する習近平政権の強い危機感がストレートに表現されている。

政治面では、2027年秋に開催予定の第21回中国共産党大会で四選を確実にすべく、経済面などでの実績づくりを意識したとみられる(佐野・枩村[2026])。習近平総書記は、2035年までに総合国力の飛躍的向上などの目標達成を自らの手で実現したいという強い意欲を持っており、万人が四選に納得するような政治環境を作り出したいとみられる。そのため、2026年から始まる5カ年計画は、諸政策・改革で一定の成果を計画の1年目から積み上げるとともに、強国化目標の早期達成につながるものにしたいという思惑を持っていたと推測できる。

こうした時代背景の下、第15次5カ年計画は、前計画と取り組みの方向性はおおむね一致しているものの、要求水準は第14次計画より高いという特徴を有している。

具体例として、強国化ゴールの設定がまず挙げられる。第15次5カ年計画では、2035年までに飛躍的な向上を遂げる分野として、前期計画の経済力、科学技術力、総合国力に加え、対外影響力と国防力が新しく盛り込まれた。外交や安全保障分野を前倒しで強化したいという中国政府の意向が読み取れる。強国を目指す分野では、金融、エネルギー、観光が追加され、第15次5カ年計画における強国化路線は、前期計画に比べて包括的かつ多岐にわたるようになった。

次に、質を重視するという方針に基づき、経済面を中心に、第14次5カ年計画より難易度が高いと考えられる目標がいくつか設定された。例えば、数値目標こそ示さなかったものの、中国政府は、「科学技術の進歩と制度的革新を通じて全要素生産性の着実な向上を図り、経済成長に対する全要素生産性の貢献を高める」と、第15次5カ年計画の主要目標(第1編第3章)で初めて明言した。労働生産性は第14次に続き、今回の5カ年計画でも「GDP成長率を上回る」という目標を打ち出している。要求水準は同じだが、雇用の維持・確保も進めていること、2025年の実質GDP成長率(+5.0%)および労働生産性の伸び率(+6.1%)の実績を勘案すると、労働生産性の改善策で短期的に高い伸びを出すことは十分可能だが、その効果のはく落により、今後5年間にわたって経済成長率を上回るペースで労働生産性を高め続けることは決して容易ではない。


一方、前回に引き続き、第15次5カ年計画も、期間中の実質年平均成長率は数値で示さず、中国政府は、「経済情勢の変化などに応じて毎年目標を設定し、5年間を通して合理的な成長ペースを維持する」方針の表明にとどめた。都市部調査失業率を5.5%以下に抑制するという目標は、2025年の実績値である5.2%を上回る水準であり、前回の5カ年計画と同水準でもある。しかし、雇用情勢が厳しさを増していることや、政府は労働報酬の引き上げも進める方針であることを踏まえると、よりハードルの高い目標を設定したとみなすべきであろう。これらの目標設定から、第15次5カ年計画は量より質重視のスタンスを一段と明確化したものと判断できる。

政治面では、党中央(トップ)の指導強化を重視しているが、第14次5カ年計画と同じ内容で、かつ文言もほぼ変わらないため、第15次独自の特徴は指摘しにくい。もっとも、2026年1月の張又侠・中央軍事委員会副主席と同委委員の劉振立・統合参謀部参謀長の失脚を巡っては、「中央軍事委員会主席責任制」を踏みにじる行為、すなわち軍のトップである中央軍事委員会主席を兼務する「習氏の意向に背いた」ことが問題視された。また、2025年末の中央経済工作会議を機に、地方政府幹部の事なかれ主義などを糾弾するキャンペーンが断続的にみられる。こうした動きを加味すると、党中央のコントロールが軍や地方に十分浸透しないことへの危機意識は、第15次5カ年計画の方が高まっているとみるのが妥当であろう。

(3)習近平政権にとっての第15次5カ年計画

前節において習近平政権下で策定された三つの5カ年計画を比較したところ、次の二つの注目すべき分析結果を得られた。一つは、第13次5カ年計画は、長期目標と当該5カ年計画の関係性の濃淡という点で、後の二つの5カ年計画と性格が異なることである。いま一つは、2035年や2049年のゴールに注目すると、第15次5カ年計画は、第14次5カ年計画で描かれたロードマップに沿って進む構図が浮かび上がることである。そこで以下では、第14次、第15次、両5カ年計画はそれぞれどのような経路をたどって2035年、2049年のゴールを目指す青写真を描いているのか。習近平総書記の演説など、関連の公式文書とも照らしながら、習近平政権にとっての第15次5カ年の位置付けを明らかにしたい。

第14次5カ年計画とその後の経緯を振り返ると、習近平総書記は、同計画の草案を作成する前の段階から、2035年のゴールとともに、そこに至る三つの5カ年計画の在り方をすでに構想していた可能性が高い。その理由として最初に挙げられるのは、第14次5カ年計画の特殊性である。第14次5カ年計画は、「2035年遠景目標」という文言が正式名称に付いているが、5カ年計画で、「2035年遠景目標」のように計画期間より長期の目標を冠したものは、同計画を除けば2010年遠景目標を掲げた第9次5カ年計画(1996 ~ 2000年)しかない。第14次5カ年計画草案に関する習近平総書記の説明も勘案すると、2035年の「社会主義現代化の基本的実現」という目標に向け、5カ年計画の目標を設定するという発想は、この時点ですでにあったと判断できよう。実際、この習近平総書記の意向を踏まえ、政府による第14次5カ年計画の正式版(2021年公表)では、「社会主義現代化国家を全面的に建設するという戦略的配置に従い、2035年の長期目標および “十四五(第14次5カ年計画)” 期間の経済社会発展の主要目標を掲げた」と主要目標に明記したうえで、2035年の長期目標、5年間の経済社会目標の順に掲載した。

翌2022年開催の第20回共産党大会において、習近平総書記は、2035年までの長期目標を盛り込んだ第14次5カ年計画の策定を、過去5年間の党の主要業績の一つに挙げた。そのうえで、①経済力、科学技術力、総合国力の大幅な上昇、②教育強国、科学技術強国の構築、③共同富裕の全面的進展など、2035年のゴールで達成すべき目標を示した。これらの目標は第14次5カ年計画が掲げた目標と同じ内容である。

2025年の第15次5カ年計画の草案説明の際、習近平総書記は第14次5カ年計画を社会主義現代化の基本的な実現を2035年までに目指すプロセスの「一つ目の5カ年計画」と評した。さらに、「承前啓後」という表現を使い、前(第14次5カ年計画)からの成果を受け継ぎ、後(第16次5カ年計画)での目標達成につなげることが第15次5カ年計画の重要な役割とも述べている。これらを踏まえ、第15次5カ年計画の正式版では、「第16次5カ年計画」という用語は使わなかったものの、「本計画での目標達成という基礎の上に、さらに5年間奮闘し、中国の経済力、科学技術力、総合国力などを大幅に向上させ、2035年までに社会主義現代化を実現する」と明言した。

2035年、2049年時点の国家目標を2017年の第19回共産党大会ですでに言及していたことも勘案すると、習近平総書記は2035年までの15年間を三つの5カ年計画に分け、3段階で目標を達成するという構想を相当前から温めていたと推測される。したがって、習近平総書記は第15次5カ年計画のつなぎとしての役割を草案説明の直前に思い付いたとは考えられない。遅くとも2020年に第14次5カ年計画の草案を自ら説明するころまでには、2035年の目標を3段階で達成する構想は固まり、機が熟したので第15次5カ年計画の草案説明で発言したと解釈する方が適切であろう。

第14次5カ年計画は多大な成果を挙げたという事後評価がされているが、習近平総書記はそれだけで満足したわけではない。むしろ、第15次5カ年計画からは、内外を取り巻く環境が一段と厳しくなる中でも、第14次を上回る高い成果を出そうとする意気込みが感じられる。このように考えれば、習近平政権にとっての第15次5カ年計画は、前計画で着手した各種取り組みを全面的に展開し、2035年の目標達成を確実なものにするためのスピードアップ期と位置付けられる。

第15次5カ年計画における政策群

それでは、質重視で強国化路線を進めることを目指した今回の5カ年計画では、どのような取り組みがなされるのか。以下では、前章の分析を踏まえつつ整理したい。

(1)経済面での取り組み

第15次5カ年計画では、様々な分野で強国化を目指す方針だが、とくに経済面で重視しているのが、①製造強国、②内需拡大・マクロ経済ガバナンスの強化、③教育強国、④国民生活の向上、の4分野である。以下で、それぞれについて詳しくみていく。

①製造強国

第1に、製造強国である。習近平総書記は製造業を「国家繁栄の根本であり、強国の基礎(立国之本、強国之基)」と位置付け、その強化に取り組むよう政府や企業に対し再三指示し続けている。結果、習近平政権にとって製造強国の項目は、強国化路線の中でも最も重視する分野となった。

第15次5カ年計画の構成や内容からも、製造強国の実現をいかに重視しているかが分かる。例えば、今回の5カ年計画には約100件の重点プロジェクトを掲載しているが、AIやハイエンド新素材など「新質生産力の発展」関連が28件と最も多い。新質生産力とは、科学技術の革新を通じて、先端分野を中心に製造業のレベルアップを図る取り組みを指す。第15次5カ年計画では、第2編が製造業を中心とする「現代的な産業体系を構築し、実体経済の基盤を強化」、第3編が新質生産力と科学技術の発展加速に言及した「高水準な科学技術の自立自強を加速し、新質発展力の発展をけん引」と、全18編のうち、総論(計画全般の方向性や主要目標など)の第1編に次ぐ各論冒頭の二つの編を製造強国関連の方針と政策に割り当てた(第15次5カ年計画の構成は、巻末資料として掲載したので参照されたい)。

各編を掘り下げると、第2編には、サービス業の振興やインフラの整備が、現代的な産業体系の構築に向けた政策として盛り込まれた。とはいえ、サービス業では研究開発などの業種の底上げによる「先進的製造業との融合(バリューチェーンでのハイエンドへの延伸などを指す)」に重点を置いている。また、水や物流、エネルギーといったインフラ部門も製造業の発展に不可欠の要素である。これらの点から、産業体系の現代化を進めるべき主な対象は、製造業と解釈できる。

さらに、第2編は「製造業の合理的割合の維持」も明記している。第15次5カ年計画の草案段階の公式ガイドブックは、GDPに占める製造業の割合の急速な低下は産業空洞化を引き起こし、その結果、経済力の増強およびリスクへの耐久能力の向上に「不利な影響を及ぼす」と指摘した(本書編写組[2025]、)。したがって、製造強国は量的拡大路線からの全面転換を目指すものでは決してない。質の向上を優先しつつ、西側諸国のような製造業の弱体化を回避すべく量的拡大にも引き続き注力する取り組みといえよう。

第2編の製造業振興策として、中国政府は
1)新興・未来産業の育成と強大化(第5章)、
2)伝統産業の最適化・底上げ(第4章)、
の二つを挙げている。

「新興・未来産業の育成と強大化」は、製造強国における質重視や科学技術による技術革新の主な柱であり、中国政府が産業構造全体の現代化の「基幹」と位置付けた先進的製造業の中心でもある。このうち、新興産業は次世代情報技術や航空・宇宙など、中国政府が2010年代以降育成に注力してきた「戦略的新興産業」を主に指す。第15次5カ年計画では、ポテンシャルな成長力や波及分野の幅広さを評価し、新興産業を不動産に代わる成長エンジンとしたい政府の期待の高さがうかがえる。また、前回の5カ年計画の戦略的新興産業には、新エネルギー自動車(EVなど)を重点業種の一つに挙げたが、今回の5カ年計画では「インテリジェント・コネクテッド(AIや高度な通信技術の導入により、安全で快適な自動運転機能を備えた)新エネルギー自動車」と、一段と質の高いEVなどの製造を掲げた。ロボットを先進的製造業の一部ではなく単独の重点業種に格上げしたことも、高度化志向の表れといえる。

未来産業は、文字通り将来を見据え、新興産業に続く新しい成長エンジンとして政府が積極的に育成に関与しようとする産業である。重点業種として、量子技術や6G通信技術などが明記された。最近、内外で性能の高さが話題を集めている人型ロボット(エンボディドAI)も、未来産業の一つに位置付けられた。未来産業は新興産業よりも高度な技術を必要としているため、製造業の高度化志向は一段と鮮明になったといえよう。

一方、「国際分業下での中国の地位と競争力を向上させるために」振興すべき伝統産業には、鉄鋼や石油化学、造船といった従来型の製造業に加え、レアアースなども含まれている。従来型の製造業は、品質の向上(品質強国)、技術革新、AIと連携したスマート化、グリーン化の推進に取り組むとし、政府が支援策を講じると表明した(第1節)。こうした政策の一方、「立ち遅れた低効率の生産能力(設備)の秩序ある退出」を併せて打ち出した。文脈から考えると、鉄鋼、石油化学、造船に加え、機械設備や軽工業など、第1節で言及された業種が全て対象範囲となる可能性が高い。機械設備の古さに加え、生産性の低さ(低効率)を退出の基準と位置付けた点が注目される。過剰生産能力の削減は、第13次5カ年計画で石炭と鉄鋼のみ言及されていたため、第15次5カ年計画でようやく本腰を入れて取り組むようになったと評価できる(第14次5カ年計画では言及なし)。

製造強国を巡って焦点となるのが、米中対立が深まる状況下で、サプライチェーン上のぜい弱性をどう克服し、強じん化を進めるかである。第15次5カ年計画では大きく分けて、二つの克服策を打ち出した。一つ目は、重要資源・エネルギーで特定国への過度な依存からの脱却である。第2編では自国での生産増、備蓄の積み増しに加え、海外からの供給ルートの多角化が具体策に挙げられた。ハイテク産業などでの激しい国際競争を有利に展開するためにも、中国にとって緊急かつ重要な取り組みと位置付けられる。

そして、克服策の二つ目が、科学技術面での自立自強の加速である。第2編は、技術(装置)面でのブレークスルーの必要性に言及したものの、何のために、どのコア技術でのブレークスルーを進めるのかといった点には一切触れなかった。これに対し、第3編は、科学技術の革新を通じた産業の国際競争力の強化や、アメリカなどにチョークポイントを押さえられないための内製化推進の観点から、集積回路や工作機械といった重点分野のコア技術のブレークスルーを目指す方針を明確に打ち出した。この目的を達成すべく、
1)最先端技術(AI、量子技術、バイオなど)の研究継続、
2)基礎研究の強化を具体策として打ち出した。
とりわけ、根本的な技術革新や製造業の高度化につながる可能性のある基礎研究の強化は、成果に不確実性を伴うものの、根本的な技術革新につながる可能性のある取り組みとして注目される。最先端技術をはじめ応用研究一辺倒から転換を図ったとも解釈できよう。

また、企業主導の科学技術革新を掲げつつも、実際には、企業が技術革新した製品に対する政府調達の拡大、政府出資のベンチャーファンド、M&Aファンドを通じた支援など、政府の幅広い誘導策が多く盛り込まれた。最先端技術に関する国家リストの作成、基礎研究に対する財政資金の投入拡大なども勘案すると、何が何でもコア技術でのブレークスルーを実現し、サプライチェーン上のチョークポイントをなくしたいという中国政府の強い意向が第3編から読み取れる。なお、習近平政権の掲げる自立自強は、産業や科学技術分野における国際競争で優位性が高い状態を指すと考えられる。そのため、自立自強を自給自足と同じ意味と解釈するのは、科学技術などでの国際競争に消極的との誤解を招きかねず、妥当ではない。

一方で、習近平政権は、企業間の過度の価格引き下げ競争、いわゆる「内巻式競争」が、新質生産力(科学技術の自立自強、製造業を中心とした産業高度化)の発展を妨げていると認識しており、企業間の公正な競争を推進するための反内巻政策(第2編第4章)を進める方針である。そのため、製造強国などの供給力強化策は、やみくもな量的拡大を促すのではなく、1)規制緩和、2)金融による実体経済支援の強化、3)財政支援、を中心に、メリハリの利いた対策を講じるとしている。規制緩和の一例として、会社経営に関する手続きの簡素化が挙げられる(第6編第18章)。金融による実体支援強化では、科学技術やグリーンなど、国家にとって重要な分野への金融サービスを具体例に挙げている(第6編第20章)。財政分野は、企業所得税(法人税)の課税所得からの研究開発費用の控除やベンチャー支援ファンドへの出資(第3編第10章)の他に、新業態に合った税制の導入検討や税負担水準の維持も企業の競争力強化につながる可能性がある(第6編第20章)。これらの内容から、供給力強化策を通じて技術革新と密接に関係する全要素生産性(TFP)を高めたい政府の意図が浮き彫りになる。

②内需拡大・マクロ経済ガバナンスの強化

第2に重視するのは、経済力の飛躍的向上である。習近平政権は、2035年の強国化目標(=社会主義現代化の基本的実現)の達成に向けて、経済力の一段の向上を図ろうとしている。そのため、第15次5カ年計画では、強大な全国統一市場の構築(第5編)、経済改革の推進(第6編)をはじめ、対外貿易・投資は「対外関係」(第7編)で、消費の持続的拡大に関連した問題は「社会保障」(第12編)で、経済リスクをコントロールする問題は、「国内の治安維持、安全保障環境の整備」(第14編)でそれぞれ示すなど、経済力の強化を実現するための政策が各論(第2編~第17編)に分散して盛り込まれている(巻末資料)。

これらの経済政策群のうち、前述した製造強国の実現に向けた取り組みを除いたものを概観すると、以下の二つの特徴を指摘できる。

一つ目の特徴は、消費マインドの喚起と質向上を重視したことである。第5編の冒頭から、国内市場の需要不足と供給過剰が深刻化しており、安定成長の持続、さらには経済力の向上を目指すには、バランスの取れた需給拡大を図らなくてはならないという問題意識が読み取れる。

これに対する需要面の取り組みとして、1)内需、2)対外貿易・投資、の二つが挙げられている。とりわけ内需に関しては、第15次5カ年計画の主要目標として経済成長率に言及した際、「経済成長を押し上げるメインエンジン(主動力)」と明記したことから、政府は需要拡大のカギとして重視していると判断できる。

個別の内需拡大策をみると、消費(第5編第15章)では、消費意欲の改善に重点的に取り組む方針が打ち出された。マインドを改善するため、政府は消費者のニーズに合ったサービス・商品の提供奨励とともに、社会保障の拡充を通じた将来不安の除去、消費環境の改善につながる措置の実行(消費者保護の強化、休暇の奨励など)に注力するとしている。このように、政府は消費者マインドをいかに喚起するのかに重点を置きながら、個人消費を拡大させる方針である。消費の拡大に関しては2025年、中国共産党中央弁公庁と国務院弁公庁が連名で「消費促進特別行動計画」を出した。この行動計画は、8分野30項目からなる包括的な消費拡大パッケージであるが、最も重視しているのはマインドの改善であった。こうした経緯を勘案すると、消費者マインドの改善は、短期の問題ではなく、中期的な課題として取り組むものになったとみなしてよいであろう。

投資(第5編第16章)でも、質向上という方針に資する政策が並べられた。内需拡大の観点から、一定の量的な拡大は認めた一方、政府投資で「過度な前倒し建設、効果が少ない投資」を行わないよう中央省庁および地方政府に求めた。政府投資では他にも高い品質管理を保って国家の重要戦略・重点分野プロジェクト(いわゆる両重)を推進すること、新質生産力や国民生活(教育、医療、高齢者や子どもに対するサービスなど)向け投資の全体に占める割合を高めることも明記した。民間企業に対しては、科学技術革新や産業高度化向けの投資拡大を奨励すると表明している。さらに、消費との好循環を促すため、雇用創出や賃上げ効果の大きい業種での投資増を重点的に支援するほか、物流のぜい弱性改善などに取り組む方針を示した。質の向上を重視しつつ、的を絞って投資の規模も拡大させようとしているとみられる。

対外貿易・投資拡大策(第7編第21章、第22章)でも「質と水準」の向上を明確に打ち出した。貿易(第22章)では、「輸出入の均衡ある発展」を掲げ、直近2回の5カ年計画と比べて輸入の拡大に積極的な姿勢を示した。具体的には、輸送や旅行といったサービス輸出の拡大とともに、輸入関税率の引き下げや「輸入奨励リスト」の改訂を通じて、国内で差し迫って必要な先進技術設備、良質な農産品、生産関連サービス(金融・ビジネスサービスなど)の輸入拡大を明言している。デジタル貿易(越境ECも含む)やグリーン貿易の発展、加工貿易のレベルアップ、貿易摩擦への対応強化のような「質の向上」に取り組む方針も掲げた。

対内投資(第21章)では、通信、バイオテクノロジー、医療の対外開放の推進、外資参入ネガティブリストにおける項目の一層の削減など、ビジネス環境の改善持続、外資企業の研究開発センターの誘致といった項目が多い。一方、対外投資は、海外進出した中国企業の保護、AI等の新興企業の海外展開奨励などを打ち出したものの、掲載数が少ないうえ、海外投資に対する安全保障面での審査強化のように、抑制方向に作用する政策も盛り込まれた。また、対外投資については、中国と海外との間のサプライチェーンの再編に使うよう企業を誘導する方針が明記されている。

そして、2035年の達成目標としてGDPではなく、1人当たり実質GDPを掲げ、その数値を2020年比倍増させることを主要目標として明記した点も、内需拡大をはじめとする経済政策群での質重視の表れといえる。

経済政策群の二つ目の特徴は、マクロ経済ガバナンスの強化である(第6編第20章)。具体的な取り組みとして、以下の三つを指摘できる。

まず一つ目として、経済構造改革の推進である。政府は、5カ年計画のような国家レベルの発展計画に基づき、財政と金融の政策協調を深め、個別分野の政策間(内需拡大、外需、雇用、価格など)の整合性が取れ、より多くの政策効果が出るよう改革を進める方針である。この方針に沿って、財政分野では、質の高い経済発展に資する財政制度の構築を打ち出している。具体的には、予算編成方法(ゼロベース予算方式への転換推進)や歳出構造の改革、中央と地方の財源配分の見直しなど、財政健全化に向けた取り組みが多く盛り込まれている。金融分野では、中央銀行による金利調整や通貨供給機能の改善、大型国有金融機関のサービス水準の向上、国際金融センターとしての上海の地位向上など、幅広い改革に取り組むと表明した。

二つ目として、地方のマクロ経済運営に対するコントロールの強化である。第15次5カ年計画では、「地域の実情に合わせた新質生産力の発展」をはじめ、「地域の実情に合わせた(因地)」政策の執行を地方に繰り返し求めている。これは、合理的な事業計画や採算見込みもなく半導体振興策を打ち出すなどの政策をとらないよう、地方に指示したものである。地方の産業振興も基本的には党中央の指示に基づいて行われ、地方政府の裁量は党中央の大原則に反しない範囲内でのみ認められる(党中央の指示は、本稿次節で考察)。むしろ中央政府は、地方の過度な産業政策が内巻式競争の温床になっているとして、「地方政府の経済促進行為の規範化(ルール化)」を進めようとしている(第5編第17章)。地方政府からすると、今後は企業誘致に向けた独自の税制優遇措置などの政策が打ち出しにくくなるとみられる。

三つ目として、リスクコントロールもマクロ経済ガバナンス強化の一つと位置付けられる。国内の治安維持や安全保障環境の整備政策を盛り込んだ第14編のうち、第52章は経済安全保障関連の政策が示されている。同章では、食糧・エネルギーの確保に向けた取り組みに触れた後、不動産、地方政府債務、中小金融機関、そしてネット上の安全保障(サイバーセキュリティ、サイバー犯罪の防止)を中国経済が直面するリスクと位置付け、これらリスクの適切な解消に努める方針を示した。

③教育強国

第3に重視するのは、教育強国である。
第3編の冒頭において、教育強国、人材強国、科学技術強国の一体的推進を宣言していることからも分かる通り、教育強国に向けた諸政策の最も重要な目的は、科学技術強国、製造強国を実現するための人材育成である(巻末資料参照)。

科学技術分野では、「技術革新、産業発展、国家戦略上のニーズ」に応えられるよう、自国で人材を育成する方針が示された(第3編第11章)。これに基づき、戦略的科学者、科学技術リーディング人材、基礎研究人材、若手の科学技術者の育成に重点を置くとしている。中国国内では一般的に、科学技術リーディング人材とは、「科学技術分野において、国家レベルの重大プロジェクトや産業のブレークスルーをけん引・リードするトップクラスの優秀な人材」を指す。科学技術リーディング人材の中でも、「国家の科学技術戦略全般を構想」し、「重大プロジェクトの統率」などで高い能力を有する人材が戦略的科学者と呼ばれる。そして、基礎研究人材とは文字通り、基礎研究に従事する人材を指す。科学技術の革新を促すため、「失敗に寛大な環境」を整備するとともに、高報酬や好待遇で科学技術者のやる気を起こさせる制度の構築に努めると表明した(第3編第8章、第11章)。こうした人材の育成を加速させるため、四年制大学・大学院における理工学・農学・医学専攻の学生数増加と、修士・博士号取得者に占める工学専攻のシェア拡大、AI、集積回路などの学科・専攻を「異例の対応(超常軌的)」で早期設置すると表明している(第3編第11章、第11編第38章)。

製造業では、「卓越したエンジニア」、「大国の工匠(卓越した技術・技能を持つ職人)」、「高技能人材(現場でイノベーションや難題解決を指揮するリーダー)」と、主に技術や技能面に優れた人材の育成・養成に取り組む方針が示された(第2編第4章)。どのような人材の育成が製造業振興のために必要か例示したのは、習近平政権下の5カ年計画では今回の第15次5カ年計画が初めてである。国家が期待するエンジニアや職人などを輩出する目的の職業教育については、「産教融合(産業界と教育界の融合)」を継続し、この方針に基づく教育を行うと表明した(第11編第38章)。具体的な取り組みとしては、
1)産業構造および産業界のニーズと合致したカリキュラムへの転換、
2)各業界のリーディングカンパニーによる職業学校運営の奨励(学校運営への一部関与も含む)、
を盛り込んでいる。学校での職業教育を受けて社会に出た学生と、企業の求めている専門知識やスキルを備えた人材とのミスマッチを解消したい政府の強い意向が読み取れる。現役の技術者に対しては、「専業技術人才知識更新プロジェクト」を実施し、技術知識のアップデートを図るよう求めている(第2編第4章)。

無論、政府による教育政策の目的は、エンジニアや高技能人材の育成に限らない。様々な分野に進むための基礎を教えることも重要な目的の一つである。他国と同様、中国も全ての国民をそうした教育の対象とするものの、「社会主義建設の後継者」を強調し、共産党や国家を将来支える若者向けをとくに重視している。

第15次5カ年計画の若者向け教育をみると、「新時代の立徳樹人プロジェクト」の推進を掲げた。立徳樹人は道徳重視という意味で過去の5カ年計画でも使われてきたが、「新時代」というフレーズが入ったのは第15次5カ年計画が初めてである(第11編第38章)。新時代のポイントは、「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」を学校での道徳教育のよりどころと位置付けたことである。文化関連の政策群を掲載した第10編には、「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」をよりどころにすることに加え、共産党の若者向け宣伝・教育活動の強化を掲げている。一連の取り組みは、習近平思想に従い、経済活動や科学技術開発など、あらゆる分野で中国の強国化実現(対外影響力の拡大も含む)のために一生懸命取り組む若者を育成しようとするものといえる。

④国民生活の向上

そして第4に重視するのは、国民生活の向上である。
第15次5カ年計画では、20 項目の主要目標リストを五つのカテゴリーに分けて掲載している。そのうち、1人当たりの実質可処分所得、雇用、教育、医療といった民生福祉、すなわち国民生活関連のカテゴリーに分類された主要目標は7項目で、最も多い。重点プロジェクトの数でも、国民生活の改善は25件あり、新質生産力関連に次ぐ多さである。この二つだけをみれば、習近平政権は、持続的な経済発展による国民生活の向上を重視していると一見解釈できよう。

もっとも、以下の2点も勘案すると、習近平政権にとって国民生活の向上は重要ではあるものの、製造強国をはじめとする強国化路線に比べて優先順位は低いと考えられる。

1点目は、一部を除き、国民生活の向上に向けた積極的な取り組み姿勢が読み取れないことである。主要目標リストに盛り込まれた指標のうち、1人当たり可処分所得や失業率は、消費の持続的拡大を左右し、経済力の飛躍的向上に直結する重要な要素と位置付けられる。教育年数の延長も製造強国の実現に不可欠な人材育成という観点で重要な政策といえる。一方、それ以外で国民生活の向上に分類された指標は、経済力の強化や製造業の高度化と関連性が指摘されていない。全般を通してみれば、国民生活の向上を目指す理由についての説明不足感が否めない。

2点目は、設定目標の水準である。前述したように、都市調査失業率は、雇用情勢の厳しさや労働報酬の引き上げと並行で進めているため、よりハードルの高い目標が設定されたと判断できる。しかし、国民生活の向上関連として主要目標リストに含まれた残りの6項目はいずれも、2025年の実績と同程度以上にハードルの高い目標が設定されたものの、第14次5カ年計画までの政策を続ければ達成可能な水準とも考えられる。主要目標および各政策の説明も、あえて曖昧なままにしている。

これらをまとめると、5カ年計画は経済・社会の発展に向けた包括的な計画であるため、今回の第15次5カ年計画でも、国民生活の向上を重視する姿勢は継続する。ただし、強国化路線の推進が最優先であり、国民生活の向上は、製造強国や経済力の向上につながるところは重点的に取り組み、医療などは状況次第では後回しにするといったメリハリをつける方針を暗に示したと解釈できよう。

(2)政治・外交面での取り組み

強国化路線を実現するために、政治・外交面での取り組みも重要視されている。以下では、第15次5カ年計画の政治・外交関連の編と章の内容を整理し、どのような政策を進めようとしているのか確認する。

①党中央による指導の徹底化

第15次5カ年計画で政治面の取り組みを主に扱ったのは、最終の第18編である。
同編の冒頭では、共産党があらゆる分野への指導を堅持・強化することが中国経済・社会の発展と、中国式の現代化、すなわち強国化には不可欠という原則を確認している。指導の「強化」ではなく「堅持・強化」と表現を変えたところに、党や政府の高官の汚職と同様に、指示通りに政策を執行しない行為を(理由にかかわらず)放置すれば、共産党による統治体制の弱体化につながりかねないという習近平政権の危機感が反映されている。

国防政策をまとめた第15編には、習近平総書記(中央軍事委員会主席)からの指示への絶対服従を軍に求める「中央軍事委員会主席責任制の貫徹」という方針が、5カ年計画の正式版で初めて盛り込まれた。この原則を踏まえ、第15次5カ年計画の第61章では、「党中央による集中的・統一的な指導の堅持・強化」を進めながら、計画を執行するとしている。続く第62章では、党中央の指導の下での実施事項を、1)計画期間中の政策執行、2)進捗状況のモニタリングの二つに分けて説明している。

計画期間中の政策執行について、重要プロジェクトなどに対する財政・金融支援の強化、5カ年計画全体の目標達成やプロジェクトの完了を念頭に置いた年間計画の策定と実施を明言した。また、地方や個別分野の5カ年計画は、第15次5カ年計画に沿って策定・実施するよう求めている。これらは第14次5カ年計画と総じて変わらない。ただし、2026年3月に採択された国家発展計画法に基づき、最新の5カ年計画の内容を地方や特定分野の5カ年計画のマスタープランとすることを明確に位置付けたこと、所管地域内の県や市の5カ年計画がマスタープランから逸脱しないよう省政府が指導すると明記したことは、前回の5カ年計画と異なる。

進捗状況のモニタリングに関しては、党中央の関与の強化やモニタリング結果の活用という点で、第14次5カ年計画よりも踏み込んだ内容が盛り込まれている。実施から3年時点での中間評価で5カ年計画自体を修正する必要がある場合、従来は国務院(中央政府)が修正案を作成して全人代常務委員会に提出、全人代常務委員会がこれを承認するというプロセスであった。それに対し、第15次5カ年計画では、国務院が修正案を作成した後、「党中央への報告と同意を経て」、全人代常務委員会に提出することになり、党中央(委員会)が関与するプロセスが追加された。モニタリング結果の活用では、「計画の進捗状況の適宜公開」、「モニタリングや中間評価などに基づき、計画の進め方の改善策を提出」、の二つの取り組みを新たに掲げた。5カ年計画の策定や実行にとどまらず、チェックや改善にも党が積極的に関与して、計画をより確実に遂行しようとする意向が明らかである。

第18編の第61章には党の指導強化以外に、5カ年計画に盛り込まれた政策を実施した幹部を適切に評価し、さらに上のポストへと昇進させるのか、そして、強国化路線に資する幹部を今後どのように育成するのかが示されている。評価基準および育成方針のキーワードとして、「政治第一(政治標準)」と「正しい政治業績観(政績観)の確立と実践」の二つが掲げられた。「政治第一」とは、党の方針通りに行動する忠誠心の高さを幹部の選抜や登用で最も重要な基準と位置付けることである。また、「正しい政治業績観」とは、どのような執務態度や業績を党中央が評価するのかを示す指針と定義できる。

②「中国の特色ある大国外交」への転換

第15次5カ年計画で外交関連の取り組みを主に扱ったのは、第7編である。その第1の特徴は、「独立自主の平和外交」という従来の外交方針を掲げる代わりに、「中国の特色ある大国外交」を打ち出したことである。特定の国による覇権への反対、全方位外交、自国の経済発展に資する関係構築の優先が中心であった「独立自主の平和外交」に比べ、「中国の特色ある大国外交」は、対外影響力の積極的な拡大、国際社会での大国としての役割が重視されていることが大きな違いである。

今回の5カ年計画で外交方針を転換した背景として、三つの要因が挙げられる。

第1は、グローバルサウスの台頭である。国家発展改革委員会[2026]は、世界経済におけるグローバルサウスの重要性が増すことによって、中国にとって有利な国際環境が形成されつつあるとの見方を示している。

第2は、アメリカへの対抗と関係安定の両立である。第15次5カ年計画の草案および正式版、正式版の公式ガイドブックである国家発展改革委員会[2026]は、アメリカを直接名指しで批判することを避けている。科学技術分野での自立自強やサプライチェーンの耐久性強化、そして国防力の増強を進める一方で、アメリカとの全面対決は回避したい意向と推測される。

第3は、第2次トランプ政権の外交政策がもたらした好機である。一方的な制裁関税の発動、USAIDの廃止などに伴う対外援助の縮小、同盟国に対する防衛負担増要求など、2025年以降のトランプ政権の外交政策は、途上国、新興国、そして多くの先進国をアメリカから離反させる方向に作用している。中国政府としてはこれをチャンスととらえ、こうした諸国を自陣営に取り込もうという判断が働いたと推測される。

外交政策でも、貿易・投資額よりも協力の内容を重視するなど、質を重視する傾向が強められている。例えば、第23章の一帯一路では、覚書署名国(中国は共同建設国と呼称)との間での科学技術革新などでの連携加速が重要政策の一つとして掲げられた。

外交関連の第2の特徴は、多国間協調主義を前面に打ち出すとともに、国際ルール・秩序の維持・強化などを通じて、途上国、新興国、アメリカと距離を置き始めた先進国との連携を強化しようとしている点である。第24章の人類運命共同体の構築ではまず、グローバル経済・金融のガバナンス改革への関与を表明するとともに、CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)への早期加盟の実現、より多くの地域間・二国間貿易投資協定の締結推進を打ち出した。続いて、新型国際関係の構築を掲げ、大国との関係安定の維持、発展途上国との連携強化(グローバルサウスの結束支援など)に取り組む方針を示した。そして、気候変動やサイバーセキュリティ、感染症といった地球規模の課題に、責任ある大国として役割を果たしたいとの意向を表明した。そのうえで、安全保障面での国際的なルール作り、国際的な対外援助体制の構築への積極的な関与を具体的に盛り込んでいる。

(3)環境問題への取り組み

習近平政権はおおむね、質の向上を強国化路線とセットで進めているが、短期的には強国化路線にブレーキをかけることになっても、質の向上を優先して進めている分野もある。第15次5カ年計画の政策群では、第13編47 ~ 50章のグリーン(環境関連)がその代表例として挙げられる。

グリーン関連の数値目標の一つとして、これまでの5カ年計画では単位GDP当たりのエネルギー消費量の削減を掲載していた。これに対し、第15次5カ年計画にはこの目標を外す一方、消費量全体に占める非化石エネルギーの割合を2030年までに25%に引き上げる(2025年は21.7%)ことを新たな数値目標とした。さらに、「炭素双控」と呼ばれる政策を打ち出し、二酸化炭素の単位GDP当たりの排出量削減(第12次5カ年計画から継続中の数値目標)に加え、二酸化炭素の排出総量自体を削減するよう、地方政府や主要業界・企業に追加要求した。脱炭素、とりわけ習近平政権が公約とする2030年のカーボンピークアウトに向けて、経済成長をある程度犠牲にすることになっても、より厳しい目標や政策を打ち出したとみられる。

「グリーンな生産様式・生活様式」の提示も、環境関連分野での質重視の政策スタンスを示している。国民に対しては、水や電気の節約、過剰包装から簡易包装への変更、使い捨て製品の使用抑制などの具体例を挙げ、環境に配慮した暮らしを求めた。企業に対しては、設計から廃棄・再利用までの全過程で、エネルギー・資源の消費や生態環境への影響の少ない製品を生産するよう奨励した。奨励に併せ、政府はグリーン製品の調達対象や規模を拡大するとも表明している。第14次5カ年計画では、環境に配慮した経済・産業構造への転換を重視する一方、環境関連で生活様式への言及は皆無に等しかった。それに比べれば、第15次5カ年計画の環境関連政策は、強国化より生活の質の向上を志向している。

2035年の強国化目標達成に向けた展開

第15次5カ年計画の進捗次第で、将来の中国の国家像が決まるのは確実とみられる。現行のスケジュール通りに進めば、中国政府は第15次5カ年計画の中間時点(3年目の2028年末ごろ)でレビューを実施し、その結果や4年目以降の進捗状況、中国を取り巻く環境の変化などを織り込み、次の第16次5カ年計画を策定することになる。そして、2031年春の全人代で採択される第16次5カ年計画は、2035年の目標達成に向けた総仕上げとなる公算が大きい。以下では、今回の第15次5カ年計画を実行した結果として、2030年の中国がどのような姿になるのかを予想するとともに、これを継承した第16次5カ年計画(2031 ~ 2035年)がどのような内容になるのかを展望したい。

(1)2030年の中国

まず、第15次5カ年計画の実行に伴う成果と課題、2030年の中国がどのような姿になるのかを予想してみたい。
本稿では、第15次5カ年計画の注目点である、1)製造強国、2)内需拡大・マクロ経済ガバナンスの強化、3)教育、4)共産党の指導、5)対外影響力(大国外交)、6)グリーン関連(環境問題)、の6項目に焦点を当てて検討した。その進捗について結論を先取りすれば、総じて計画通りに進展すると予想できる。この結果、2030年の中国は経済、科学技術を中心に総合国力が上昇し、習近平総書記が考える2035年の社会主義現代化の基本的実現にめどが立つと見込まれる。同時に、2049年に総合国力と対外影響力で世界一の強国になるという目標達成にも一歩近付いたという評価が下されることとなろう。以下では、それを項目ごとに解説する。なお本稿では、各項目の今後の展開について、「おおむね計画通り進展」、「ある程度進展」、「一部で遅れ」と、三段階で予想した。なお、前節では7項目に焦点を当てたが、国民生活は内需拡大を左右する要因の一つとして予測した。

一つ目の製造強国は、おおむね計画通りに進展すると考えられる。政府が第15次5カ年計画で「新質生産力の発展」関連と位置付けた28件の重点プロジェクト(高性能工作機械のような製造業の基盤強化目的の六つのプロジェクトも含む)はほぼ計画通りに達成できるとみられるほか、半導体などの重点分野でのコア技術や科学技術でブレークスルーと呼べるような成果も出す可能性が高い。新興産業(インテリジェント・コネクテッドな新エネルギー車、ロボット、ハイエンド設備など)は中国の基幹産業に、未来産業(量子技術、バイオ製造、人型ロボットなど)は将来の経済成長エンジンへと着実に成長すると見込まれる。製造強国、科学技術強国を実現するためのエンジニアや高技能人材といった人材の育成も着実に進展するであろう。これらの点から、2030年の中国は、製造強国化がかなり進んでいる可能性が高い。

製造強国化がおおむね計画通りに進む背景には、政府と企業の思惑の一致がある。中央政府は、どの業種を基幹産業に育成したいのか、将来の成長エンジンにしたいのかといった点について、明確な方針を持っている。この方針の実現に向けて、企業や研究機関に対し、補助金や低利融資、税制上の優遇措置、ファンドへの出資など、様々な支援策を積極的に展開している。地方政府も、独自の政策(税制優遇、安価での土地提供、ファンドへの出資など)を講じて、半導体をはじめとする中央政府が育成を重視する業種の企業誘致を熱心に進めている。一方、企業は激しい競争で生き残るため、政府からの支援策を積極的に受け入れ、今後の発展のきっかけにしたいと考えている。結果、政府の支援を受けた企業や研究機関から、コア技術や設備の内製化、イノベーション、競争力の高い製品の投入といった成果が続々と生み出されることとなろう。過去の例をみても、EV市場で世界トップになったBYD、車載電池世界一となったCATLは、自らの経営努力とともに、政府からの多大な支援策が躍進の原動力になったと指摘されている。

その一方で、製造強国において、必ずしも習近平政権の意向通りに進まないとみられる取り組みもある。一つは、反内巻政策である。企業は、中央政府や共産党の指示(方針)通りに動くようになるものの、激しい競争に生き残るには、大幅値下げなどの手段も使わざるを得ない。そのため、中央政府が理想像として描くような高性能製品の開発やコア技術の内製化に専念はできず、2030年までに内巻式競争(過当競争)の全面解消には至らないと予想される。いま一つは、人材育成である。科学技術者の大量育成は順調に進む一方、製造現場のリーダーや高技能人材の育成には、若者およびその家族のホワイトカラー志向がネックになると考えられる。

二つ目の内需拡大・マクロ経済ガバナンスの強化については、一部で遅れがみられる結果になるだろう。まず、実質GDPについては、余程のことがない限り、支障なく目標が達成されると予想される。習近平政権が現在、経済面で最重要と位置付ける目標は、2035年の1人当たり実質GDPの2020年比倍増である。この目標達成には、2026 ~ 2035年に年平均+4.17%の経済成長が必要とされる(本書編写組[2025])。第15次5カ年計画では、経済成長目標が情勢に応じた水準で毎年設定(例えば、2026年は+4.5 ~ 5.0%に設定)されることになっており、景気失速時には景気対策を講じることを前提に置けば、5年間平均で+4%台の成長は十分に達成可能である。

しかし、消費マインドの改善は狙い通りの成果が上がらないだろう。第1の理由は、供給が需要を生み出す「セイの法則」的な発想を政府が引き続き重視しているからである。第15次5カ年計画で消費喚起策の中心として打ち出されたのは、良質の商品やサービスの供給を通じた需要の掘り起こしであり、消費者の購買力を高める取り組みではなかった。こうした発想ではむしろ、需要と合わない商品・サービスの過剰供給が拡大する恐れもある。第2の理由は、消費喚起策の規模の小ささなどがネックとなり、期待される効果が限定的なことである。政府は、社会保障の拡充や所得増加策で消費マインドを改善し、消費の持続的拡大を目指してはいるものの、一方で財政規律を重視し、大規模な支出拡大を控える政策スタンスもあって、対策は小粒にとどまっている。例えば、低所得者向けの年金や医療保険の給付水準の引き上げは月に数十元に過ぎないため、消費喚起策としては力不足である。医療関係者を増やす、平均寿命を延ばすといった主要目標を達成できたとしても、それによる消費マインドの改善は見込み薄と予想され十分な医療・介護を適正な費用で受けられない先行き不安を高める恐れすらある。このように2030年の中国は、経済力は高まっていても、需要と供給の不均衡は是正されず、むしろ拡大している可能性がある。

三つ目の若者向け教育は、一部で遅れがみられるだろう。党・政府がどんなに教育を浸透させても、「寝そべり族」、「ネズミ人間」と呼ばれる一部の若者層には、習近平政権が進める教育の効果は期待できそうにないからである。習近平政権は、若者がネガティブになるような情報がSNSに流れることを規制するとともに、勤労のすばらしさを繰り返し強調しているが、先行きの希望を持てなくなったこれらの若者は、過度な競争に参加して豊かな暮らしを目指すよりも、分に合った生活を志向しているため、政府による若者向けの教育(宣伝活動も含む)を受け付けようとしない。政府と「寝そべり族」などとの価値観のギャップは埋め難く、政府が将来に希望を持たせる有効策を持ち合わせていないことが最大の問題である。2030年においても中国は、若者の価値観を転換させることに苦慮し続けていると予想される。

四つ目の共産党中央による中央省庁や地方の高官への指導の徹底については、おおむね計画通りに進展すると予想される。2027年の第21回共産党大会での党指導部人事、2028年の全人代での国家指導部人事を控え、政府高官には党あるいは習近平総書記への忠誠心や難題に取り組む姿勢が求められ、政策執行の徹底も繰り返し指示されるとみられるからである。これに伴い、習近平総書記は、指示に従わない高官を解任するなどして、指導を徹底させる姿勢を一層強めると予想される。結果、中央の指示にあからさまに反する行為は一段と減少し、党主導の政策は末端まで浸透するようになると見込まれる。2030年の中国は、習近平一強体制が継続し、トップダウンの政策決定が続いている可能性が高い。もっとも、創意工夫して経済課題に取り組んでも、結果についてできるだけ叱責されないようにとの判断が働き、地方や中央省庁が事なかれ主義に陥って、そこから抜け出せなくなる可能性もある。

五つ目の対外影響力も、おおむね計画通りに進展すると予想される。これは、第2次トランプ政権の独善的な外交政策により助けられる側面が大きい。今後も、世界のリーダーとしてのアメリカの地位が相対的に低下し、国連重視、グローバルサウス重視を標ぼうする中国への対外的な評価が相対的に上昇するとみられる。トランプ大統領の任期は2029年1月まで残っているものの、これまでの大統領の言動に対する不信感がネックとなり、任期中に就任前の水準まで国際社会におけるアメリカの地位を回復させるのは極めて困難とみられる。

一方、中国は世界第2位の経済力を背景に、「一帯一路イニシアチブ」などを通じてアメリカと距離を置き始めた国々との連携を深めて成果を出すであろう。客観的評価は別にして、中国の主張と行動には一貫性があり、相手と協力を深める姿勢を示していることは、アメリカの自滅も相まって、中国が追求する連携強化の動きが奏功する方向に作用する。ただし、欧州やインド、東南アジア諸国などの対中警戒感が一気に解消されるとは考えにくい。対外摩擦のリスクを抱えつつも、2030年の中国の対外影響力は現状対比上昇し、「中国の特色ある大国外交」を活発に展開している可能性が高い。

六つ目のグリーン関連(環境問題)も、一部で遅れがみられるだろう。ただし、カーボンピークアウトに向けた取り組みなどでは、一定の成果が得られると予想される。第15次5カ年計画では、最終年の2030年にCO2の単位GDP当たりの排出量を2025年比17%削減する目標が盛り込まれている。このハードルの高い目標を達成するため、政府は工場閉鎖等の強硬措置も辞さない方針であり、これまでの成功例なども勘案すれば、2030年のカーボンピークアウトは達成できる可能性が高い。

一方、第15次5カ年計画で新たに導入された、環境配慮型の生活様式、生産様式への転換はさほど進まないだろう。消費者マインドの低迷が続く状況下、消費者が自発的に高額なエコ製品(住宅、家電など)の購入を増やすとは思えない。エネルギー・資源の消費節約や生態環境への影響の少ない製品を生産するよう奨励しているものの、インセンティブが政府によるグリーン製品調達の拡大だけでは、企業が自発的に生産様式を転換するとは考えにくい。2030年の中国は、空気や水、土壌汚染の改善は進んでいるものの、環境配慮型の生活・生産様式への転換は道半ばという状況にある可能性が高い。

(2)想定される第16次5カ年計画の内容

以上のように、第15次5カ年計画の成果については、おおむね計画通り進展するものから、遅れるものまで、かなりばらつきがみられそうである。その後継として策定・実施される第16次5カ年計画は、2035年の強国化ゴールの達成を目指す計画となるため、そこまでに計画通り進展した目標のさらなる強化、計画通りに進まなかった目標の再評価が行われることになろう。こうした点を踏まえると、第16次5カ年計画で注目されるのは、1)産業政策、2)消費マインドの改善、3)人材育成、の3分野になると考えられる。

産業政策に関しては、そこまでに順調な進捗が見込まれることから、総仕上げを意識した内容が多く盛り込まれると想定される。とりわけ注目されるのは、反内巻式競争政策である。第15次5カ年計画で遅れが出ると予想した反内巻式競争政策に関しては、政府が予想される進捗の遅れを教訓に、企業と過当競争防止に関する協議が行われると考えられる。過当競争で収益が悪化した企業は協議に応じ、政府の要請に従うようになる。第16次5カ年計画の反内巻式競争政策は、こうした政府と企業との協議結果が反映されたものが盛り込まれると考えられる。加えて、過剰供給を解消するための企業の選別も進むであろう。手厚い支援策を講じても、成果が出なかった企業への支援打ち切りや淘汰の促進、厳しい経営合理化要求などが考えられる。また、第15次5カ年計画で新エネルギー自動車が、インテリジェント・コネクテッドな新エネルギー車に変更されたように、いくつかの重点育成業種で、条件を厳しく設定する可能性もある。

消費マインドの改善に関しては、第15次5カ年計画の各種取り組みをさらに積極化させ、第16次5カ年計画で大規模な消費喚起策を打ち出すことも十分あり得よう。習近平総書記をはじめとする共産党指導部の現在までの基本的なスタンスは、何よりも財政規律を重視し、大規模な消費喚起策の実施に慎重であった。しかし、不芳な経済情勢を受け、財政規律を多少緩めてでも、経済力の強化を優先すべきと判断を変えた場合、2035年の強国化ゴール、すなわち経済力の飛躍的な向上に直結する消費拡大策をより重視するようになるだろう。具体策として、国民向けの給付か減税、社会保障の拡充が想定される。社会保障の拡充については、長期介護保険制度を2028年までに全国導入する取り組みが進行中である。これがどの程度の消費押し上げにつながるのか、結果を踏まえ、第16次5カ年計画での社会保障制度の大幅拡充につながる可能性もあろう。

人材育成関連では、ロボットやAIの積極的な活用で人手不足をカバーする方針が、より鮮明に盛り込まれると予想される。具体策として、働く意思のある人やスキルアップを図りたい人への職業教育・訓練の機会提供が公約に掲げられると見込まれる。ただし、「寝そべり族」、「ネズミ人間」と呼ばれる一部の若者層に対しては、その是正に向けた有効策が見当たらないうえ、救済しようとする発想も政府にないことから、とくに救済策は打ち出されないとみられる(ギグワーカーなど、新しい雇用形態の労働者の待遇改善のような間接的な取り組み策を除く)。党や政府の幹部人材育成策に関しては、高官に求める資質や能力を一段と引き上げる方針が示される可能性が高い。強国化路線の達成には、党や政府による経済・社会のコントロール強化が不可欠であり、そのためには、共産党への忠誠心の高さだけでなく、経済・社会を適切に運営できる優秀な幹部の育成が最も重要だからである。

おわりに

本稿では、習近平政権下で策定された第13次、第14次と比較し、第15次5カ年計画のもとでは、強国化路線、質重視が鮮明になっていることを明らかにした。そのうえで、第15次5カ年計画の進捗状況、想定される成果や課題とともに、2030年の中国の国家像および2031年からの第16次5カ年計画の内容を展望した。一連の分析から浮き彫りになったのは、中国共産党・政府の政策策定および実行能力は分野によるばらつきが大きいことである。

実行能力の高さとして挙げられるのは、上からの資源配分を通じて、計画可能な政策が確実に遂行されるシステムが確立していることである。製造強国化は、その最たるものといえる。また、習近平一強体制も、政策の遂行・継続や迅速な転換には明らかにプラスである。それに対し実行能力が発揮されにくいのは、人々のマインドや行動を動かす政策である。消費者のマインド喚起はその代表例で、これまでのところ確実に結果に結び付く有効打が見当たらず、施策は良質の商品・サービスの供給策にすり替えられている。「寝そべり族」対策、製造現場の高技能人材の育成、地方幹部の育成も、実現へのハードルは高い。

不得手とされる問題の解消・解決が遅れるほど、中国共産党・政府はバランスを欠いた経済成長モデルの修正に苦しみ続けることになるであろう。その場合、強国化路線の成功は製造業の強化など一部の分野にとどまり、総合国力および対外影響力の面で中国を世界一の強国に押し上げるという習近平総書記の夢は、次の5カ年計画でも完成しないであろう。

(※情報提供、記事執筆:日本総合研究所 調査部 主任研究員 佐野 淳也)