(ブルームバーグ):AIを活用して開発された肺疾患の治験薬が、生物学的な老化の兆候を改善する可能性を示した。開発元は、より幅広い用途に使える可能性があるとしている。
香港のAI創薬スタートアップ、インシリコ・メディシン(英矽智能)によると、同社のレントセルチブは、中期段階の臨床試験で、生物学的年齢を低下させる効果を示した。測定の基準には、体内の化学的変化を調べる六つの「エージングクロック(老化時計)」が用いられた。プラセボ(偽薬)群は、同じ指標で生物学的年齢にほとんど変化がなかったという。研究結果は7日、ネイチャー・バイオテクノロジー誌に掲載された。
インシリコの株価は8日の香港市場で一時10%上昇し、8月25日以来の大幅高となった。
アレックス・ジャボロンコフ最高経営責任者(CEO)はインタビューで、「生物学的年齢が低いほど、長生きする可能性は高い」と語った。ただ、結果はまだ初期段階で、大規模な集団に対する長期的な影響は分かっていないと注意を促した。今回の分析対象は慢性肺疾患の患者42人だった。
エージングクロックは、実年齢とは別に、細胞や組織がどの程度良好に機能しているかを反映する生物学的年齢を推定する手法。今回使われた六つのエージングクロックは、インシリコやハーバード大学、北京大学などの研究チームが開発したもので、それぞれ異なる指標や手法を用いている。
長寿に関心を持つ人々の間では、老化を遅らせることを目的とした既存薬の転用が以前から支持されてきた。一方、新たな抗老化薬の開発は失敗に終わる例が少なくない。しかし、肥満や糖尿病以外にも幅広い効果があるとみられるGLP-1受容体作用薬の登場を受け、大手製薬会社の関心も高まりつつある。

インシリコなどの企業は、加齢に伴う疾患を治療しながら、寿命延長にもつながる二重用途の治療法に重点を置いている。今回の研究は、難病である特発性肺線維症(IPF)に対するレントセルチブの治療効果も調べた第2相臨床試験の一環。レントセルチブは現在、IPFの患者を対象に中国で後期臨床試験が行われている。
同社は、開発パイプラインにある薬剤の少なくとも半数について、同様の分析を実施する計画だ。
AIには、創薬研究の期間を短縮し、成功率を高め、人間では思いつかないようなアイデアを提案できるとの期待がある。同社はまず、大量のデータを精査して治療標的の候補に順位を付けるAIツールを使い、老化に関与する標的を特定。その後、分子を選別して最適化の方法を見つける別のAIを使い、同薬を設計・改良した。
今回の分析では、臨床試験中の複数の時点で患者から採血し、外部の研究者と連携してタンパク質の変化を調べた。初回投与から4週間後、レントセルチブを服用した患者の生物学的平均年齢は最大6歳低下した。ただ、その効果は試験後半に縮小した。
ジャボロンコフCEOは、今回の研究が将来の抗老化薬開発のひな型になると話した。現時点では、老化そのものを対象に規制当局の承認を得ることはできない。ただ、レントセルチブが別の用途で承認されれば、医師が老化や加齢に伴う疾患向けに同薬を処方したり、臨床試験で検証したりできる可能性があるとの見方を示した。
原題:AI-Discovered Lung Drug Reverses Aging Markers in Study (1)(抜粋)
--取材協力:Joanne Wong.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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